2008.05.31 (Sat)
マクレラン元報道官のブッシュ政権暴露本は米大統領選に影響するか

Photo from WashingtonPost
このところ北米のテレビで連日話題に上っているのが、ホワイト・ハウスで2年9ヶ月の間、ブッシュ政権で報道官として働いてきたスコット・マクレラン元報道官がブッシュ政権についての手厳しい暴露本を書いたことだ。マクレラン氏はブッシュ大統領がテキサス州知事だったころから報道官を務めてきており、ブッシュ大統領とはかなり長い付き合いとなる。
本来は6月2日に発売される予定だったその著書“What Happened: Inside the Bush White House and Washington's Culture of Deception”が、ひと足早く店頭に並ぶと、いきなり
![]() | What Happened: Inside the Bush White House and Washington's Culture of Deception (2008/06/02) Scott Mcclellan 商品詳細を見る |
米大統領の元報道官が暴露本、ブッシュ政権を厳しく批判(AFP 5月29日)
2003-06年にジョージ・ブッシュ(George W. Bush)大統領の報道官を務めたスコット・マクレラン(Scott McClellan)氏が、6月に発売される新著の中で、イラク戦争について「不必要なもので、欺まんに満ちたプロパガンダによって国民に売り込まれた」などと厳しく批判していることが明らかになった。米メディアが28日報じた。
マクレラン元報道官は、341ページにわたる回想録「What Happened: Inside the Bush White House and Washington's Culture of Deception(何が起こったのか――ブッシュ政権の内幕とワシントンの欺まんの文化)」の中でブッシュ政権を痛烈に批判している。
政治関連の記事を扱うウェブサイト「ポリティコ(Politico.com)」によれば、マクレラン氏はイラク戦争について「不必要な戦争」「戦略上の大失敗」と述べ、大統領の側近らが不都合な真実に目をつぶって戦争に突き進んだと非難。今でもブッシュ大統領を尊敬しているとしつつ、「大統領と側近たちは、イラク戦争をめぐって国民の支持を取りつけ、維持するために欠かせない率直さと誠実さを、政治的プロパガンダと混同した」として、国家安全保障分野の側近たちの過失を指摘しているという。
マクレラン氏は報道官時代、記者会見などでブッシュ政権の政策を擁護する立場を取っていた。
マクレラン氏はまた、2005年のハリケーン「カトリーナ(Katrina)」で甚大な被害が出たことについても、側近たちが「最初の1週間の見ぬふりで過ごした」と糾弾。「米史上最悪の自然災害が、ブッシュ大統領の最悪の大失策になってしまった。大統領がそれ以前に行った決定、特にイラク問題で率直になろうとせず、戦後に備えることもないまま誤った計画に基づいて戦争に走ったことが、カトリーナの大惨事の受け取られ方をさらに悪くした」と述べている。
また、コンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)国務長官について「どれほど事態が悪化しても決して自分の手を汚さなかった」「問題を察知した上で順応し、気の滅入るような問題は避け、自分をスターのように見せる方法を熟知している」などと、ディック・チェイニー(Dick Cheney)副大統領については、まったく痕跡を残さず裏で糸を引く「手品師」などと批判的に評しているという。(c)AFP
今この時期に出版されたこのブッシュ政権暴露本が米大統領選にどのような影響を与えるのかが注目されている。意見はさまざまだが、毎日新聞の米国:ブッシュ大統領元報道官が暴露本 「イラク開戦は大失敗」という記事に、米大統領選で、「イラク政策で現政権との類似性が指摘される共和党のマケイン上院議員陣営に、マイナスの影響を及ぼしそうだ」と書かれている通り、この本がブッシュからイラク戦争を継承することを宣言したマケイン氏を不利な状況に導くのではないかという見方が多い。
一方、米大統領選について毎週詳細にわたってレポートしてくれている冷泉彰彦氏の『from 911/USAレポート』第358回 「ヒーロー像は戻ってくるのか?」によれば、この暴露本は必ずしもマケイン氏にとってマイナスの影響があるとは限らないと書かれている。以下、同氏の『from 911/USAレポート』より転載。
(前略)正確に言えば「今このタイミング」がベストかは分からないのですが、いずれにしても早晩マケインとしては「脱ブッシュ」をしてゆかねばならないわけで、こうした「ブッシュ批判本」が話題になるというのは、それを可能にする追い風でこそあれ、マケインへの逆風とはならない、いやしてはならないのだと思います。そうした独自色を出してゆくタイミングとしては、恐らく副大統領指名という問題が一つの契機になるように思われます。今現在は、例えば元民主党の副大統領候補で、現在は中間派の上院議員であるユダヤ系のジョセフ・リーバーマンなどの名前も取り沙汰されるなど、相当のサプライズを含む検討がされているようですが、とにかくそうした人選を含めて、マケインが本気を出してゆけば選挙戦のムードは一変するでしょう。(後略)

一方、米民主党の大統領候補指名争いは、いよいよ最終段階で、オバマ上院議員とヒラリー・クリントン上院議員の陣営が、すでに非公式協議に入っており、来週初めには決着がつきそうだ。
最近のヒラリーの問題発言も指名争いの決着をつける手助けをしたようだ。
前述の冷泉彰彦氏の『from 911/USAレポート』第358回 「ヒーロー像は戻ってくるのか?」から一部引用させていただく。
先週から今週にかけては、ヒラリーの「暗殺」発言が全米を駆け回りました。問題になっているのは、次のような箇所です。文脈としては、もういい加減に運動から撤退しないのか、という問いへの「ノー」を言うという流れでの発言です。
“My husband did not wrap up the nomination in 1992 until he won the California primary somewhere in the middle of June, right? We all remember Bobby Kennedy was assassinated in June in California. I don’t understand it,”
(訳)私の夫は1992年にカリフォルニア予備選が六月中旬に行われるまで選挙運動を止めなかったでしょ。それに私たちみんなはボビー・ケネディがカリフォルニアで暗殺されたのも六月だったことを覚えているわ。だから、(ここで止めるなんていうことは)私には理解できないんです。
この「失言」に関しては、特にMSNBCのキース・オルバーマンというキャスターが番組の中で、6分以上にわたって「上院議員(ヒラリーのこと)、あなたは一体どうしたんですか? 黒人本格候補と、ガラスの天井を打ち破った女性候補による歴史的な予備選は、あなたの『暗殺』という一言で完全に汚されてしまったんですよ」と激しい調子で糾弾し、それが「ユーチューブ」などで広まる中でたいへんなインパクトを持ってしまいました。このために、もう民主党では「オバマ=クリントン」の正副の組み合わせは不可能になったのでは、とも言われています。
このままでいくと、オバマ氏が優勢だが、ヒラリーの方もまだ完全にさじを投げたわけではない。最後の最後まであきらめずに闘う姿に打たれ、ヒラリーを応援する人もいるそうだが、ヒラリーもヒラリーで、共和党のマケイン氏に勝てるのは、オバマ氏よりも私なのよと強気で訴えている。
ヒラリーの最後まで強気に闘う姿には失言などもあったが、女の清さのようなものも感じられた。米国初の女性大統領にはなれそうもないけど、ここまで闘える女は全米広しと言えどもヒラリーしかいなかっただろう。さて、オバマはヒラリーを副大統領として迎えない理由はないなどと少し前に発言していたが、果たして、ヒラリーの失言によって考えが本当に変わってしまったのだろうか。又、ヒラリーも副大統領の地位を与えられたら、引き受けるかどうか気になるところだ。
その他の参考記事:
『Variety Japan』イラク戦争のために世論操作!?元側近によるブッシュ暴露本にワシントン紛糾 (2008/05/30)
"WashingtonPost" Culture of Deception By Jonathan Yardley (Thursday, May 29, 2008)
from 911/USAレポート / 冷泉 彰彦バックナンバー
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最近,専門外でバイトを始めたので,パソコンや本に向かってる暇がない(泣) いま書いてるマンガ評論もいつアップできるやら…….
ネット予約だと発売予定にならないと手に入らないのではないでしょうか。店頭に並んだといっても多分、米国だけで、カナダでもまだ並んでないのではと思います。読んだらkaetzchenさんのブログにぜひ感想を書いて下さいね。楽しみにしております。
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