2008.05.06 (Tue)
日中首脳会談:日中外交失敗の声に学べ

写真:日中首脳会談:共同文書で「戦略的互恵関係」の包括的推進(毎日新聞より)
今回の日中首脳会談で話し合われた日中共同声明の要旨は次の通り。
●日中関係が両国のいずれにとっても最も重要な2国間関係の一つであり、お互いに脅威にならないことを確認する。
●日中が相互理解を深め、国際社会でアジアと世界の安定に共同で責任を果たす「大局」的思考を重視する。
●「首脳会談を頻繁に行う」として毎年一方の首脳が相手国を訪問する。
●チベットなどの人権問題については「国際社会が共に認める基本的かつ普遍的価値の一層の理解のために協力する」と抽象的に触れるにとどまる。
●日本が中国に支持を求めている国連安保理常任理事国入りについて「中国側が日本の国連における地位と役割を重視する」と初めて明記された。これまでの文書は「国際社会で大きな役割を果たすことを望む」との表現だった。
●歴史問題では「おわび」や「反省」の表現はなく「歴史を直視し、未来へ向かう」とし、「中国側は日本の戦後の平和国家としての歩みを積極的に評価した」と記された。
●経済分野では、これまで数量限定で行われてきた日本産米の中国向け輸出について、全面解禁することで正式に合意。昨年12月に北京で開かれた閣僚級の日中ハイレベル経済対話の継続も確認した。
●胡主席来日までの決着を目指したガス田開発について、首相は「議論に大きな進展があり、解決のめどが立ったことを確認した」と発言。胡主席も「つっこんだ協議を行い重要な進展があり、本格解決の全景が見えてきた」と述べたが、共に具体的な手順は明言せず、共同開発の対象海域で折り合えないまま結論は先送りされた。
毎日JP「<日中首脳会談>首相がチベットの対話評価 共同文書に署名」より抜粋
こうして見ると、やはり、胡主席と福田首相の会談はお互いの利益を考慮した見せかけだけのものだったというしかないだろう。長野の聖火リレーでの混乱後、胡主席は北京オリンピックをなんとか成功させたいがために、歴史問題を棚上げしてまでも日本におべっかを使いに来日。支持率の落ち込みがひどい福田首相にしてみたら、なんとか日中外交がうまく行っているところを見せて、支持率が少しでもアップすれば儲け物なんて思ったのではないだろうか。ところが、実際は、日中問題はほとんど何も解決のめどがつかないまま終わってしまったのだ。
今回の会談での成果は、雌雄のパンダ一組を借りられることになったことだけとの話もあるが、果たしてレンタル料をパンダ1頭につき年1億円を税金から払ってまでパンダを中国から借りることが成果と言えるのだろうか。
後期高齢医療制度のせいで高齢者の家族を持つ家庭で、高齢の親を殺害して自分も自殺するという悲劇が相次ぐ中、ごく限られた東京の子供が喜ぶという理由だけで厳しい経済状態の続く日本国民の税金から年間2億も使うことが、本当に今の日本に必要なのだろうか。又、中国はそのレンタル料をパンダの研究のために使うと言っているが、本当だろうか。もし、軍需産業のために使われたとしたら....。私はもちろんパンダが大好きなので、その姿が東京の上野動物園で見られると思うと嬉しい。けれども、パンダが見られるのは、ごく限られた東京に住んでいる人か東京に来られる人々に限られるし、パンダの気持ちを考えると、中国のパンダが生息する地域とは異なった環境の東京に連れてこられて迷惑なのではないだろうか。もともと私は動物園の狭い檻の中で動物を見せ物にすることには反対なので、こんなことを考えてしまう。
又、ネットや保守系メディアでは相変わらず中国に対する誹謗中傷が続いている。そんな日本で、胡主席が福田首相と会談し、皇居での晩餐会に招待されて、そのときだけメディアでは丁重に扱われても、そらぞらしいだけなのだ。そんなわけで、日中問題の確執に触れなかった今回の日中会談はみせかけはうまくいったように見えるが、実際は失敗に終わったのではないかと思う。北京オリンピックの弱みに付け込んで、チベット問題でも油田開発の件でも、もっとうまくたちまわることもできたはずなのに、日本の外務省というのは、つくづく外交下手なんだなというのを実感した日中会談だった。
福田内閣が中国に対してこれだけ弱腰外交を行った原因はやはり、自民党のでたらめ政治のために人気がなくなり自信喪失の状態にあったからであろう。又、日本経済の悪化も大きな原因の一つと言えよう。
関連記事(日付順):
『きまぐれな日々』 辺見庸のチベット問題論(月刊「現代」 6月号より)
『亡国魑魅魍魎録』 日中首脳会談~パンダに隠されたバラマキ外交
『反戦な家づくり』 中国脅威論者の憂鬱
『晴天とら日和』 パンダ2頭の貸与を約束しただけに終わった日中首脳会談:日中共同記者会見(全文掲載+ノーカットで!)情報満載!
『フンニャロメ日記』 パンダを借りるより、いっそ中国から借金でもしたらどうだ
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具体的にされたものは1億円のレンタルパンダのみでしたね。
あとはすべて「あんじょうやっときまっか」でした。
中国がオリンピックを成功させたい一心で譲歩も期待される状況であるのに具体的な解答を得ようとしないのは未必の故意と言われてもしかたないでしょう。
福田にはもはや何も期待してはいませんが外務省は福田を使って日本のためにもっと突っ込むべきだったと思います。
遠慮してチャンスを活かす事ができないなら本当の外交はできません。
私は、パンダに来てもらえるよう取り計らってもらいたいです…レンタル料高いですけど。
パンダを見る子供たちは、東京の子たちだけでなく、遠く田舎の子たちも来るからです。
大人たちの都合(チベット問題など)で子供たちの夢を壊してほしくないですね。
チベット問題とパンダのレンタルは違うのですから。
最近、チベット問題を絡めて、対中国への姿勢に、左右というこれまでの枠組みでは考えにくい状況が生まれています。
中国を誹謗中傷する連中は、チベット問題で、ここぞとばかりに中国攻撃をしていますが、彼らはイラク戦争にも反対しただろうか?
逆に、イラク戦争を批判したサヨクが、チベット問題では中国の体制側におもねり、人道上の理由で、武力弾圧を批判した私のブログに攻撃を加えてきました。
その中で、内心は別として、経済関係が密接であるために、中国にものが言えずに長野の聖火リレーでも、動員された中国人留学生の横暴に何もできなかった日本政府。
先日、「9条世界会議」という一大イベントに参加し、アジア各国のパネリストが意見を述べるシンポジウムに出席しましたが、やはりアジアの人は、日本の歴史認識に疑問を持っている。
本当にアジア外交、東アジア共同体構想を考えるのなら、そのような声と正面から向き合っていくのが正しい姿勢だろう。
中国の故事でも、諫言をよしとするはずで、耳に心地よい表面面の言葉だけを交換している今の状態では、まだまだ、本当の意味の友好関係が築けているとは言えないと思う。
中国にも問題はある。
しかし、日本の歴史改竄主義もまた、引きこもりの、自国内向けのプロパガンダにすぎず、そんなことを言っているうちは、アジアの諸国とまともにつきあっていけはしないだろう、というより相手にされないだろう。
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1.毎日新聞の要約記事そのもの問題点
・日中共同声明本体以外の共同記者会見の内容と規範となる本体(日中共同声明を一緒にしていること)
・台湾問題について過去の追認が行われていること
・まったく論じられていないチベット問題を抽象的にでも論じていると解釈する間違い
・「互恵」外交が外交の常道であり、日中外交でこの言葉が使用されたの今回の特異性でもなく、以前からの基本路線であること
2:失敗という評価の問題点
・外交評価としての現実の外交事例をどこまで周知して評価できているのか?
・過去外交事例など含めて、今回の首脳会談単体だけで評価することの妥当性
・現政権及び中国当局に対する悪意あるイデオロギーがベースの論評であること
・抜粋記事そのものの問題点(ソースに対するリテラシー問題)
以上、2点を基点に反論というよりも再考の余地があると思われる。
オイラと違って忙しい人だろうから、要約してコメントしてみたが、興味ある人はトラックバックでも参照してほしい。