2008.04.07 (Mon)
映画『靖国 Yasukuni』:これまでのいきさつとその背景(備忘録)
映画『靖国』をめぐるこれまでのいきさつは、
「靖国」上映中止 何が起きた「靖国」派の圧力 手貸した文化庁
(2008年4月5日「しんぶん赤旗」)
にとても詳しく書かれているので、その記事から引用させていただきたい(文型など多少短く変更)。
異例の国会議員試写会
ことの発端は、昨年末、『週刊新潮』が、この映画に政府出資の芸術文化振興基金から助成金が出ていることを疑問視する記事を掲載。それを受け二月、自民党の稲田朋美衆院議員らが、文化庁を通じ、製作者に映画を見たいと要請し、三月十二日に異例の国会議員試写会が開かれた。
対応した配給協力・宣伝会社のアルゴ・ピクチャーズらは、協議のすえ、特定の議員に限定せず、全国会議員を対象にした試写会をアルゴ主催で開くことを決定し、文化庁の要請で国会議員のみを対象とした極めて異例の試写会が開かれた。
当日は約八十人の議員らが出席。稲田議員は試写後、「靖国神社が国民を侵略戦争に駆り立てる装置だったという政治的メッセージを感じた」と感想を述べ、翌日には、自身が会長を務める「伝統と創造の会」と、「平和靖国議連」のメンバーで文化庁を呼び、公的助成は不当だと声をあげた。両団体とも、日本の侵略戦争を正当化する議員の集まり。
上映予定だった新宿バルト9が、今後起こりうるトラブルや他のテナントへの迷惑を懸念し、上映中止を決定したのは、この試写会の後。ほかの東京・大阪の四館も、これに続き上映中止を決めた。
助成口実に国会質問
試写後、自民党の水落敏栄参院議員、有村治子参院議員が、この映画が助成対象にふさわしくないとして、映画への公的助成の返還を求める国会質問をした。
水落議員の理由:
●監督が中国人で、スタッフにも中国人が多い。
●タイトルに「YASUKUNI」と英語表記がある。
「靖国」は日中合作の映画だが、「基金」は一定の条件のもとで、合作映画も助成対象になると規定している。
ほかに、製作者が「映画の製作活動を行うことを主たる目的とする団体」であり「日本映画を製作した実績」があることなどが、助成を受ける条件だが、同映画は当然、いずれの条件も満たしているからこそ、審査を通過した。文化庁も審査は「所定の手続き」で審査されたと説明している。
*有村議員の理由:
●靖国神社とは「本来、御霊(みたま)と静かに向き合う場所」で「イデオロギー論争の場であり続けるのは、極めて御霊や御遺族に対して不遜(ふそん)」。
映画を助成した「文化行政の過失は決して小さくない」と述べ、助成審査の中身をただし、審査の具体的内容を書面で提出するよう文化庁に求めた。
会場手配・資料も提供
見過ごせないのは、映画の内容に介入しようとする議員らに、文化庁が手を貸し、公開前に、事前試写や資料提供の協力を図ったことだ。
文化庁は、稲田議員らの「見たい」との要求にこたえ、製作・配給側に繰り返し話を持ちかけました。製作・配給側は当初、特定議員にだけ見せることはできないと主張。それでも文化庁は食い下がり、製作・配給側も次善の策として、全議員むけの試写会を開くことに合意した。
もとは、文化庁が稲田議員らのためにおさえていた会場を使い、費用も文化庁負担で進められていた話だったが、試写の対象が、一部議員から全議員に変わったことで、文化庁は製作・配給側に費用負担を求めてきた。
文化庁はまた、「靖国」の製作者が助成を受けるため、基金に提出した交付要望書などを、議員の求めに応じて提供。国会質問も、それらの書類をもとに、審査過程を問題にしている。
*その他、有村議員の意見は、前編・映画「靖国」上映中止と参院内閣委での有村議員の質問(read moreにも有村議員インタビュー部分を転載)を参考にしていただきたいのだが、とにかく自分の偏った思想や考えを尾山文化部長に有無を言わせずに押し付ける言葉の暴力はまるでヤクザの脅しのようで、知性のかけらも感じられない。彼らがいかに中国を差別しているか、偏見を抱いているか、又いかに誤った歴史認識の上に暴論を重ねているかがよくわかるインタビューである。
Sohyaさまに教えていただいたDoblogの『悪口雑言罵詈讒謗ブログ』の稲田朋美という議員という記事では、稲田の過去について詳しく書かれている。この記事で稲田朋美が「安倍親衛隊」の一人であったことを知る。
(前略)
そして、この記事を書く下調べをしているときに“出会った”のが稲田朋美衆院議員である。稲田は2005年の9.11「郵政」総選挙の際、安倍晋三の要請を受け、郵政民営化法案に反対した自民党議員への「刺客」として福井県第1区から出馬して当選した議員である。
そして2006年2月には自民党の初当選組の半数を集めて「伝統と創造の会」というグループを立ち上げ、その会長に就任している。このグループは同年8月の自民党総裁選では安倍晋三の応援団役を務め、“安倍親衛隊”とも呼ばれていた。稲田議員は、総裁選予定者討論会の後、「一番感慨深く聴いたのは、安倍官房長官が政策として戦後体制の是正と自主憲法の制定をまっさきに掲げられたことです。誰もできなかったことに安倍官房長官は挑戦しようとされているのです」と述べ、安倍晋三を絶賛している。
稲田議員はまた、同年8月15日の福井新聞に掲載された加藤紘一氏との対談では、「(靖国神社問題は)憲法改正に伴いこれから自衛戦争や国際協力戦争で亡くなった人が出たら、どこで慰霊するのかも含めて議論が必要」と述べており、月刊誌「WiLL」の同年9月号では、「靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです」と語っている。さらに、同年8月29日に開かれたシンポジウム「新政権に何を期待するか?」においては、「教育基本法に愛国心を盛り込むべきだ」と強調したかと思えば、次のようなことも語っている。
「真のエリートの条件は2つあって、ひとつは芸術や文学など幅広い教養を身に付けて大局観で物事を判断することができる。もうひとつは、いざというときに祖国のために命をささげる覚悟があることと言っている。そういう真のエリートを育てる教育をしなければならない」
さて、このような“香ばしい”発言を繰り返す稲田議員が所属するグループは「伝統と創造の会」だけではない。それ以外にも以下のような団体に所属している。
・ 自由主義史観研究会・日本「南京」学会会員
・ 中国の抗日記念館から不当な写真の撤廃を求める国会議員の会事務局長
・ 日本会議国会議員懇談会事務局次長
・ 正しい日本を創る会会員
・ みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会
・ 神道政治連盟国会議員懇談会
スバラシイではないか!(笑) 極右団体にはすべて顔を出しているわけである。さらに、Wikipediaによれば、彼女は「南京大虐殺否定派」であり、弁護士としては、靖国神社参拝関連訴訟の国側の弁護を手がけるほか、「大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判の原告側弁護人」(大阪地方裁判所で原告の敗訴)や「南京百人斬り競争名誉毀損裁判の原告側弁護人」(最高裁判所で原告の敗訴)を務めているそうだ。
(後略)
鈴木邦男をぶっとばせ!:靖国が危ない!
鈴木邦男氏というのは、コメント欄でやっしゃんに教えていただいて初めて知ったのだが、政治活動家、新右翼団体「一水会」顧問でいらっしゃるそうだ。こういった右翼の方でも今回の靖国を国民に見せないことに対しては、意義を唱えている。一水会(いっすいかい)は、ウィキペディァによると、「1972年に創設された民族派政治団体。所謂新右翼といわれる政治団体の一つ。発足当時、それまでの右翼団体とは一線を画す、「理論派右翼」であるとして警察(公安)からマークされた」そうだ。
⑤「国民に見せない」のは、よくない
又もや、映画「靖国」だ。実は、内容についての反対は余りない。8.15の左右の集会、靖国刀をつくる刀鍛冶の仕事が紹介されて、貴重なドキュメントだ。文句のつけようがない。ただ、ラストに、南京事件の「写真」が出る。数十秒か、数分か。「それがけしからん」と言う。それと日本芸術文化振興会から750万円が出てるという。「反日映画に金を出すとは何事か!」というのだ。
しかし、多くの映画に出している。こうした真面目なドキュメントに金を出すのはいいことだ。たとえ、日本に対し批判的だろうと、(そんなことはないのだが)、それに金を出すなんて、日本の寛容さを示すことだ。いいことだ。世界に誇るべきことだ。
又、最後に「ニセ写真」を流したというが、まだ論議されている写真があるのなら、その点をクレジットで付けたらどうですかと、監督に言った。しかし、「確信があります」と言う。それ以上は、こちらも言えない。あとは公開した後に皆で話し合ったらいい。又、そのための〈場〉を作ったらいい。何度も言うように国民に見せないで、「上映中止しろ!」はおかしい。
又、新聞、テレビもだらしがない。こんな大きな騒ぎがあるのだ。ちゃんと関係者に取材して報道すべきだ。街宣をかける右翼の言い分も聞けばいい。映画制作側の言い分も聞けばいい。右翼が恐くて上映をやめた映画館の言い分も聞けばいい。そして、堂々と、討論させたらいい。今は、吉野VS浪人会の大正時代よりも、ずーっと言論が不自由になっている。勇気がない。
いや、平成の時代になってからでも、少しは自由な報道があった。嘘だと思うなら、ネットの「You Tube」を見たらいい。かつてTVで放映された右翼の映像が随分と流されている。「曲がり角に立つ平成の右翼」とか、「密着・少年右翼」などだ。又、右翼が車に火をつけて首相官邸に突っ込む衝撃の映像も流されている。島田紳介にインタビューされて私が答えている。又、一水会の若き活動家・徳弘三十四が街宣をやって人々を引き付けている様子も映っている。これを見て、「おーっ、右翼は立派だ」と思う人もいるだろう。又、「右翼は横暴だ」と思う人がいてもいい。見る人の自由だ。そして、多くの人に考えさせたらいい。
映画「靖国」の中でも、右翼の活動はかなり紹介されている。これだけでも、多くの人に見てもらう価値はあるだろう。
今の日本は、稲田朋美、水落敏栄、有村治子のような極右と言われる思想の偏った者が政治権力を握り、映画などの芸術を通しての表現の自由が奪われたり、国民が見たい映画を鑑賞する権利まで奪われる状況になってしまった。もっと恐ろしいのは、旧日本軍の行いを反省することなく、愛国心を教育の場で子供に押し付けたり、祖国のために命をささげる覚悟があるものこそが真のエリートであるなどと恥ずかしげもなく語る政治家が言論の自由を規制していることだ。
あまりにも右翼化してしまった日本。嘆くべき現実である。
本日もランキングの応援、宜しくお願いいたします。

にほんブログ村 政治ブログ 現在 2 位
みなさまの応援のおかげでこれまでの最高順2位になれました♪
1位になれるでしょうか。引き続き応援ありがとうございます。
『自民党 - トラックバック・ピープル』
http://member.blogpeople.net/tback/09077
ブログ村トラコミュ『自エンド』
http://politics.blogmura.com/rpc/trackback/85445/9w2tguyw8nnr
にトラックバックしています。
【More・・・】
前編・映画「靖国」上映中止と参院内閣委での有村議員の質問から《有村氏:文化行政に対する予算の適切な執行がなされたかどうかという点におきまして、映画「靖国」について質問をさせていただきます。映画「靖国」は文化庁所管の独立行政法人、日本芸術文化振興会において平成18年度の芸術文化振興基金、記録映画、募集分の助成対象に採択されて750万円の公的助成金を受けた映画で、来月公開予定と理解しております。文化庁次長、尾山(眞之助)文化部長、今日参考人でお越しになっていただいています。またこの日本芸術文化振興会の会長は、これからの映画をご覧になりましたでしょうか。本件を所管される直接の系統において見たことのある人で、責任権限が一番高い人はどなたでしょうか。
尾山文化部長:私、文化部長でございますが、私が一番責任が高い立場にございます。
有村氏:この芸術文化振興基金は助成金を交付するにあたり、配付資料で私の事務所が書かせていただきました。出典はもともと助成金募集案内でございますけども、助成金を交付するにあたり、助成金を交付するにあたり、芸術文化振興基金助成金交付の基本方針を出しておられます。そこで書いてございますように、これは灰色で囲んでおります、以下以下、これこれのことを助成すると。ただし「商業的、宗教的、または政治的な宣伝意図を有しないもの」としますと明確に書かれています。ここが最大のポイントの一つになると認識しております。そこで文部科学大臣政務官に伺います。小泉総理の靖国参拝について世論のみならず国政を預かる私たち国会でも8月15日前後には与野党の最大の関心事となり是非が議論されました。このことは政治的な事柄でしょうか。
尾山文化部長:独立行政法人日本芸術文化振興会の芸術文化振興助成金交付の基本方針におきまして、基金による助成につきましては、「政治的、宗教的宣伝意図を有するものは除く」とされておるところでございます。この映画「靖国」の審査を行った記録映画専門委員会におきまして、この方針についての判断が行われたものと承知しております。政治的テーマを取り上げることと、政治的な宣伝意図を有することは、一応分けて考えられると思っているところでございまして、本件につきましては、政治的なテーマを取り上げていても、政治的な宣伝意図を有するものとまではいえないと専門委員会で判断されたと聞いているところでございます。
有村氏:分かりました。小泉総理の靖国神社参拝の是非をめぐって宗教的、思想的な相違などの理由によって靖国神社を相手に裁判を起こし、自らの政治的主張を展開することは、これは政治的な事柄でしょうか、宗教的な事柄でしょうか。私は文部科学大臣政務官にお伺いしたいと存じます。
保坂武文部科学政務官:本質問につきましては、ときの総理がご判断し、対応している事柄と私どもは思っている次第であります。
有村氏:総理がご判断されるもので、政治的なんでしょうか、どうなんでしょうか。その辺をお伺いします。
保坂政務官:私ども政務官の立場といたしまして、政府の最高責任者の立場で、この参拝についてご判断をするものかと存じております。
有村氏:参拝の是非をめぐってご意見を伺っているのではございません。このような靖国神社の参拝の是非をめぐって靖国神社を相手に裁判を起こしている。そして自らの政治的主張を展開すること、このことは政治マターか宗教マターかどうですか、そうじゃないんですか、ということを伺っております。
保坂政務官:えー、いずれにいたしましてもこれら問題は、国際的な世論を巻き起こす問題でもありますので、私の答弁の方では差し控えさせていただきたいと存じます。
有村氏:今いみじくもおっしゃいました。国際的な世論を喚起するもの。つまり国際政治の場でも議論をされている極めて政治的なことでございます。今頷かれた通りでございます。私もそう思います。今日皆様に配布をいたしておりますように、この映画宣伝用のパンフレット2ページ目に記載されている通り、右、2ページ目の裏のキャストというところには、3人の名前が書かれています。この映画に出てくる中心人物のうち、3人のうちの2人であるこの菅原龍憲さん、高金素梅さん両氏は、小泉前首相(ママ)の靖国神社参拝についてこの映画の申請がだされた当時も現在も靖国神社を相手取って訴訟を起こしており、当該映画のテーマである靖国神社とは係争関係にあります。しかも、この映画の中で両氏は、彼らが現実の社会の中で提起している訴訟と同じ趣旨の主張をそのまま展開をされており、一連の靖国関係訴訟を代弁する政治的宣伝がそのままキャスティングにそのまま反映されています。にも係わらずこの映画が政治的、宗教的宣伝意図を持っていないとどうやって断言されるのでしょうか。
尾山文化部長:ご指摘のように、金高素梅さん、菅原龍憲さんがインタビューで出ておられるのは事実でございますけれども、全体として政治的な意図を有するものとはいえないと先ほど申しあげた記録(映画)専門委員会で判断されたものと承知しております。
有村氏:全体としては政治的意図は持っていないとおっしゃいますけれども、キャストとして上がっている名前は3人しかないんです。そのうちの2人は靖国訴訟の原告なんです。そしてここに刈谷直治さん、残り一名のキャストの名前が挙がっていますが、この刈谷直治さんは、この映画のキャストになることを知りませんでした。そして今もキャストになることを了承していらっしゃいません。そしてこの靖国神社に関して、この刈谷さんは政治的発言は展開しておられません。こんないびつな形の映画がどうして政治的ではないとおっしゃるんでしょうか。3分の2は原告、靖国訴訟、今も係争中の原告でございます。もう一人は何も政治的なコメントをしていない3分の2が原告であるにもかかわらず、どうして政治的意図がないと言えるんでしょうか。教えていただきたいと存じます。
尾山文化部長:審査に当たっては、あの、製作会社から提出されました企画書、そして最終的に完成試写で専門委員会が確認しておりますが、その結果として、えー、あのー、(しどろもどろ)政治的な宣伝意図を有するものまでは言えないというふうに専門委員会で判断されたと承知しているところでございます。
有村氏:尾山部長、随分強弁されているようですが、その強弁は後に苦しい立場をつくることと私は思います。芸術文化振興基金から、今尾山部長がおっしゃったように、審査を厳正にしていただいたというふうにおしゃっていますが、助成金を受けようとしてこの有限会社「龍影」のチャン・イー代表取締役は、助成金交付要望書を提出した最初の段階、18年7月19日です。その最初の段階から、その資料に、映画の概略には、小泉参拝をめぐり靖国の政教関係を透視する、と明確に書かれています。そして主な出演者、キャストとしては、小泉首相靖国参拝を意見と考えられる東京訴訟の会を登場させる旨、明記をして交付金交付の申請書を提出されます。つまり申請者は意図してこの問題を取り上げます、と明確に書かれた上で最初の助成金交付要望書を出されているわけです。つまりこの助成金交付要望書が正式に提出された時点で、振興会がこれを公式に受理した時点で、この基金が助成を禁じている政治的、宗教的喧伝意図を有するもの、に当たるはずでありますが、それでも文化庁は「いや、この映画には、これには政治的、宗教的な宣伝意図は入っていませんよ」と強弁されるおつもりでしょうが、ご見解をお伺いいたします。
尾山文化部長:先ほど申しあげましたように、政治的テーマを取り上げるということと、政治的な宣伝意図を有するということは一応分けて考えられると考えておるところでございまして、本件につきましては政治的なテーマを取り上げていても、政治的な宣伝意図を有するものとまでは言えない、と、その独立行政日本芸術文化振興会の専門委員会で判断されたと文化庁は聞いておるところでございます。
有村氏:それでは、別の観点から伺います。靖国訴訟、つまり宗教法人である靖国神社を訴えている方が原告となってメインキャストを為している、その方が実社会で実際に裁判で展開されている主張をそのまま映画の中でも宣伝されているのに、これが宗教的意図ではない、政治的ではないとおっしゃるのなら、何が宗教的宣伝、政治的宣伝に該当するのでしょうか。これから、応募される方々、応募を希望されている方々にも、また、国民の税金の配分を決めるということでの調査権を行使している私たちにも分かる形で具体的に明示していただきたいと存じます。
尾山文化部長:政治的、宗教的な宣伝意図を有するものかどうかは、交付要望書の内容を踏まえまして、専門委員会において個別に検討されるものであると考えます。過去にそのような事例があるわけではございませんけれども、例えば特定の政党や特定の宗教法人のPR映画であれば、該当するのではないかと思われるところでございます。
有村氏:PRではなくて、ではその方々の主旨とまったく違うむしろ「反日」をしているというような場合はどうなるのですか。いいもの、PRだけはアウトで、反PRであれば、それはOKということでしょうか?
尾山文化部長:具体の事例に則して、専門委員会において個別に検討されるものと考えております。
有村氏:ということは専門委員会がキーの一つになってまいりますね。この映画を製作した李纓監督は、「北京週報」の日本語版でこのようなことをおしゃっています。「私の映画が具体的に示しているのは、『菊と刀』でその二者の間の関係だ。最後に問いただす最も鍵となるのはやはり天皇の問題だ。天皇の問題が解決されず、永遠に曖昧のままに過ぎ去られれば、靖国神社の問題を解決することはできない」と北京週報に答えられているんですね、公言されているんですね。ここでもこの映画の特定の政治的喧伝意図があることが明白になっているんです。因みにこちらのパンフレットにありますこの右側には、キャストとかスタッフとかいろいろ書かれていますが、委員の先生方ご覧になってお分かりになっていただけますように、ほとんどが中国名でござまいす。これが果たして日本映画なのかなあ、というふうに私は素直に疑問を提じずにはいられないんですけども、この中で8人のプロデューサーの名前が出ていますが、8人のうち7人は中国の方でございます。日本人としてただ一人、協力プロデューサーとして、名前が挙がっている山上徹二郎氏は、「この映画の影響はアジアを飛び越し、世界的に注目を集めることになる。『靖国』が日中韓と欧米で公開されれば、日本は戦争責任問題を本当に反省せざるを得なくなる」と人民日報の国際版サイトで語っておられます。常識的に考えますに、戦争責任というのは戦争を終結して、戦争に勝った国と負けた国がそれぞれ負うべき、持つべき責任、制裁、権限を明確に出し合い、当事国双方が折り合いのつく条件を明文化して講和を結び、国境を定めるという極めて政治的なプロセスです。戦争状態を終結し、当事国同士の国際関係を正常化していくプロセスは政治そのものです。いかがでしょうか、この見解に何か間違いがあるでしょうか。外務省政務官教えてくださいませ。
小池外務大臣政務官:戦争責任という言葉はさまざまな文脈で用いられるものでございまして、いちがい申しあげることは困難ではありますけれども、一般的には戦争後当事国間で、いわゆる平和条約を締結することによりまして、戦争状態の終了、それに伴う領土問題、および戦争賠償等にかかる問題を解決しております。戦後我が国も当事国との間で、平和条約等を締結して平和国家として歩んでまいりました。このような戦後の日本の対外政策が当時の政治指導者の重要な決断のもとに進められてきたことは疑いのないところでございます。
有村氏:小池政務官、本当に簡潔なご見解をしていただき、ありがとうございました。外務省を代表してのいわゆる常識的な見解だと思います。私が日々感じている感覚と何ら違いがない。つまり今おっしゃったように戦後の平和国家としての歩みをつくる原点でございます。まさに国際政治そのものでございます。この政治そのものであります戦争責任をテーマにし、しかも、主張を一方的にしか論いていない映画が政治的喧伝意図がないと認識される理由を、尾山部長、私たちに分かる平易な、通常の常識人が理解できる日本語で説明をしていただきたいと思います。
尾山文化部長:先生、あの、北京週報の記事をご引用なさいましたけども、この映画の審査に当たりましては、株式会社「龍影」、あ、有限会社「龍影」から提出されました企画書、そしてそののち完成した試写によって行っておるわけでございまして、その結果としてその助成が行われたということでございます。
有村氏:質問に答えていただいておりませんが。(答えろよ!だめだよ、質問に答えてないよ、とヤジ)
尾山文化部長:あの、北京週報に、どのようなことを監督がおっしゃっているかは別として、審査は提出された書類によって行っておるということでございます。
有村氏:政治的宣伝意図がないと認識される理由を私たちに分かる日本語で説明をしていただきたいと申しあげているんです。自民党の議員だけでなくて、与野党を超えてやはり議員の先生方にちゃんと分かるような、私自身に分かるような説明をしてください。
尾山文化部長:あの、本件の審査を委ねられまして、日本芸術文化振興会の記録映画専門委員会において、そのような判断をしたということでございます。
有村氏:手続き論を伺っているのではありません。さっきから二度も三度もその説明は伺っています。これが政治的意図ではないというふうに言い切られるその背景を教えてくださいと申しあげているんです。
尾山文化部長:審査を行った専門委員会の判断についてご説明をさせていただいているわけでございます。
有村氏:その審査を行ったとおっしゃいますけども、その先生方が見てくださったはずの、最初の申請書類に、チャンイー代表がですね、小泉総理の靖国参拝の政教問題を透視すると明確に書かれているんですよ。それが政治的意図ではないと断言されているわけですから、その理由を聞かせてくださいと聞いているんです。今一度申しあげます。手続きを聞いているのではありません。お分かりになられると思いますが。
尾山文化部長:あの、私どもは、専門委員会の審査の結果についてご説明を申しあげているわけでございまして、あの、結果、そういう宣伝的な意図を有するものではないという判断をしたということを確認しているわけでございます。ただ、どういう理由かということにつきましては、その間の議事録を作成しているわけではございませんので、これ以上の説明はちょっと難しいところでございます。(何を言っているんだ!とヤジ)
有村氏:議事録をつくっていらっしゃらないんですか。ではどうやってその審議の正当性を証明されるんですか?
尾山文化部長:専門委員会の先生方が高い見地された結果ということでございます。
有村氏:それをおっしゃると専門委員会のメンバーの中に入っていらっしゃる方の思想信条を聞かざるを得なくなります。そのようなリスクをとられたのは、尾山部長の答弁からだということをご承知おきください。委員長、この点について私は、議事録で皆様お分かりいただけますように、再三再四、手続き論を伺っているのではなく、これが政治的意図を持っていないと断言されるその背景を教えてほしいと、限られた時間なのに、この時間で随分浪費がありました。後に文化庁によって、正式に文書でコメントをしていただけるよう、一週間以内の提出を求めたいと思います。ぜひご検討いただけるよう委員長にお願い申しあげます。
委員長:後日理事会で協議をいたします。
有村氏:そもそも李纓監督は、もともとは「南京」に関する、「南京事件」に関する映画をつくりたいと思っていたと北京週報で答えていらっしゃいます。この映画のクライマックスでは南京事件に関して、中国側から証拠写真として出されている写真の中でも、ねつ造と断定されたり、現在の学術界からその信憑性が著しく問われているような写真が、あれよこれよとコラージュのように出てきます。これはまさに特定の政治的意図の最たる証左ではありませんか。
尾山文化部長:えー、あのう、おー、日本芸術文化振興会から映画で使用されている写真や映像の真偽を判定する立場にはないので、そのことについては審査していないということを聞いているところでございます。
有村氏:(冷静に)とぼけないでいただきたいと思います。その写真が本物ですか、偽物ですか何て聞いていません。そのような信憑性が極めて疑われている学術界でも問題になっているのを次等次へと出してくる。これは特定の政治的喧伝意図の最たる証左ではないかと伺っているんです。
尾山文化部長:日本芸術文化振興会は、そういったことの内容については、審査対象としていないということを言っているところでございます。
有村氏:すいません。いやしくも専門委員会の方々は、給料、報酬を得てこの審査をしていらっしゃるんです。そして最後のこの映画のクライマックスというのは映画人ならずも私たちもみんなクライマックスは大事だということは分かっているんです。そこで南京事件でこれはねつ造写真であって、明らかに言われているもの、また疑義があるものが次から次へと出てくる。そこを審査しないで、どこをご覧になっているんですか。
尾山文化部長:写真、その、映像の真偽を、判断する立場にはないので、そのことを審査対象としていないと申しあげている。
有村氏:その写真の真偽なんて聞いてません。その真偽が疑われる写真を次から次へと出しているところは政治的意図だと私は思うんです。そうじゃないと断言されるその理由を述べてくださいと先ほどから申しあげてます。(きちんと答えろよ!とヤジ)
尾山文化部長:この判断をいたしましたのは、あの、再々、あ、あの恐縮でございますけれど、あの、専門委員会でございまして、その間の議事録等は作成されておりませんので、これ以上の答弁はしかねるところでございます。》
- 関連記事
Tags : 映画 |
靖国 |
Yasukuni |
週刊新潮 |
アルゴ・ピクチャーズ |
稲田朋美 |
水落敏栄 |
有村治子 |
尾山眞之助 |
どんな映画でも、とりあえず公開して欲しいです。
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック