2007.10.04 (Thu)
磯谷利恵さん殺害事件について思うこと
そうこうするうちに、『きっこのブログ』「あたしは絶対に許さない!」で磯谷利恵さんが3人の男に殺された事件を知った。『きっこのブログ』では、磯谷さんのお母様からのメッセージが紹介されており、そのお母様の作られた「磯谷利恵さんのHP」などを読んでみると、利恵さんのいたいけな笑顔の写真も載っているし、とにかく心の底から犯人を憎むお母様の気持ちが痛いほどよくわかる内容だった。
利恵さんのHPの「陳情書書式」をクリックすると、3人の殺人容疑者の名前が出てくる。
川岸健治(40)、神田司(36)、堀慶末(32)の3人だ。
下記の東京新聞の記事(キャッシュ)によると今回の殺害は、神田が中心となって行われたらしく、計画的犯行で、事前に凶器や手錠、睡眠薬のようなものまで用意していたそうだ。川岸容疑者が命乞いをする利恵さんの声が頭から離れずに自主したらしいが、神田に言わせると川岸は利恵さんに性的暴行を加えようとしていたそうで、死刑を免れるために自首をしたと見られている。
女性拉致殺害 命ごい無視し強打 川岸容疑者『忘れられず自首』
2007年8月27日 東京新聞夕刊
名古屋市千種区の会社員磯谷(いそがい)利恵さん(31)が殺害され、遺体が岐阜県瑞浪市の山林に捨てられた強盗殺人・死体遺棄事件で、死体遺棄容疑で逮捕された三容疑者は、磯谷さんが拉致されている最中、「殺さないでください」と懇願したのを無視し、ハンマーのような凶器で頭をめった打ちにしたことが、愛知県警捜査一課と千種署の捜査本部の調べで分かった。
県警本部に自ら電話し、犯行を打ち明けた本籍同県津島市、無職川岸健治容疑者(40)は「女性の声が頭から離れなかった」と、磯谷さんの必死の懇願を自首した理由の一つに挙げている。
捜査本部によると、磯谷さんは二十四日深夜、自宅近くで車で連れ去られた後、二十五日午前零時ごろ、愛知県愛西市内の駐車場に止めた車内で、頭を殴られ殺された。
三容疑者の供述などから、車内では川岸容疑者が運転。同県豊明市、朝日新聞セールススタッフ神田司容疑者(36)と名古屋市東区、無職堀慶末(よしとも)容疑者(32)が後部座席で磯谷さんを挟んで座っていた。
このうち神田容疑者が中心となって磯谷さんに包丁を突きつけて脅し、約七万円と複数のキャッシュカードを奪ったとみられる。車内で二人の男にはさまれ、身動きのとれない磯谷さんは恐怖で終始、命ごいをしていたという。
しかし、殺害現場では、磯谷さんの懇願を無視し、やはり神田容疑者が中心となり、頭をハンマーのような凶器で執拗(しつよう)に殴り、殺害したとみられる。
神田容疑者は凶器や手錠、睡眠薬のようなものを事前に用意。最初から女性から金を奪った後は殺害して、遺体を捨てるつもりだったらしい。川岸容疑者は神田容疑者のこうした用意周到で残虐な態度に、驚いた様子だったという。
犯行を県警に打ち明けた川岸容疑者は「自分の車の中で、殺人が起きたことが耐えられない」などと話したほか、「女性の声が頭から離れない」とも供述。磯谷さんが、自分たちに必死に助けを求めてきたのをかわいそうに思ったことを、自首の理由の一つに挙げているという。
捜査本部は二十七日、三容疑者を送検した。
普通に道を歩いていただけで拉致され、お金を盗まれた上に殺されるとは、日本も物騒な世の中になったものだ。職業を見てみると、神田が新聞拡張員であとの二人は無職ということだ。惨殺された上に犯人が見つからずに誰を憎んでいいのかわからない事件も数ある中、この事件では犯人が自首しただけましな方だとは思うが、自首をした川岸健治容疑者に殺害前に利恵さんを殺そうとする神田容疑者を止める良識がなかったことが悔やまれる。
社会格差が広がると、貧しいものが富めるものをねたみ、恨んで、暴力が横行するようになるというのは、ずっと前から言っていることだが、今回の強盗殺人事件も会社帰りの利恵さん(犯人から見れば、一定の職を持ち、リッチに見えた)を妬んで無職や一定の職を持たない貧しい3人が行った犯罪で、自民党の小泉政権や安倍政権が広げた格差がこういった残虐行為をもたらしたと言ってもいいすぎではないだろう。このまま格差が広がれば、こういった残酷な事件はますます多くなるとみている。
こんな残虐な事件でもその背景となる社会のあり方にその責任を見出せる限り、私は死刑には反対だが、今回の殺人犯たちに極刑を科す陳情書に10万名以上の署名が集まったということを考慮すると、今の日本の環境の下で死刑廃止を訴えるのはなかなか難しいのではないかという結論に至る。
諸外国では死刑廃止への動きが高まっているが、日本の場合は、まだまだ準備ができていないのだと思う。私は、大都市などでの人口過密から生まれる人間関係の複雑さがある限り、国民のストレスのレベルがかなり高いため、いろいろな残虐な事件が起こりやすいのではないかと考える。
例えば、北米では赤信号でも右折(日本の右ハンドルの場合は左折)できるのだが、それは人口密度が低く、道路も広くて視界が広いことや、ドライバーが歩行者を尊重する気持ちが強いこと、生活の中で人々が走る習慣がないので人が突然飛び出したりすることはめったにないということなどが赤信号でも右折できるという交通規則が容認されている大きな理由だと思う。しかし、人口密度が高く、生活がせわしない日本の大都市などで、赤信号でも左折できるようにした場合、かなりの数の人身事故が予測される。又、日本のドライバーで歩行者を尊重しながら走っているドライバーはどのくらいいるだろうか。北米で信号のない道を渡ろうとするとほとんどの車は止まってくれるが、日本では信号のない道を渡ろうとしても、止まってくれる車はほとんどいないような気がする。
つまり、道路の環境やドライバーの心構えが全く違った場所で同じ交通規則を適用するのは難しいのだ。
それと同じように、外国で死刑廃止する国が増えているからと言って、それをそのまま日本に適用できるかというと、やはり、環境や宗教や国民性の違いなどからかなりの困難が予想されるのではないかと思う。
「他人の過ちを許すことによって、神に自分の過ちを許してもらう」という精神構造は日本人はキリスト教信者以外持ち合わせていないのではないだろうか。日本では「やられたら、やり返す」という信条がより一般的だと思う。又、カナダなどでは特に「他人を尊重する気持ち」を持つことの大切さが学校教育で毎日のように強調されているが、日本の競争社会の中では他人をいかに蹴落とすかといった教育はされても、他人を尊重するような教育はされていないのではないか。もし、この3容疑者に他人を尊重する気持ちがあったら、今回の強盗殺人事件は起こらなかったであろうとも思う。
これは蛇足になるが、人口過密によるストレスを解消するには、地方での生活が豊かにできるように、政府や大企業が各県に分散したり、農家への援助を増やしたり、東京だけに職が密集するのではなく、地方にも広がるようにするしかないと思う。地方では、土地や家の値段も低いため、大きなマイホームも簡単に買えるし、そのローンも職がある限り安心して払える。
こうして暮らしが豊かになった国民一人一人に心の余裕ができれば、他人を尊重する気持ちも高まり、死刑制度を廃止する準備ができるのではないかと思うのである。逆に、人々の生活が不安定で物騒な今の日本で死刑制度をなくしたら、人々はいつ犯罪に遭うか毎日不安な日々を過ごすことになるだろう。
過去に書いた関連記事:
格差が広がり犯罪が増加する日本を憂う
山口県・光市母子殺人事件: 世論が変わるとき
光市母子殺人事件:本村洋氏の気持ちはわからぬではないが・・・
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- 関連記事
人を物としか見ていない。下手したらそれ以下な扱いをしていますが、過去のコンクリート詰め殺人事件では、未成年者と言う理由で死刑にはならず。再犯者まで出す結果になりました。
死刑は合法的な殺人でしかありませんが、犯人に対して何等の猶予を与えられるものでもありません。
しかし、近年になってから、社会全体…人間一人一人のモラルの低下が目立っています。このまま行けば、似た犯罪は間違いなく増加すると思います。
今回も、犯人達は、死刑をなんら恐れておらず、開き直りともとれる発言をしています。変わる…改善されるなどと言う、偽善的判断は必要ないと思います。
但し、最後まで犯人達には伝わらない思いがあります。被害者の恐怖…
今回のような事件の場合、生きたまま、ミキサーにかける等、被害者と同じ苦しみを味わって死んでもらいたい気もします。
被害者を殺してしてしまう悪循環は恨みを買うだけ。加害者たちはもっと頭をつって犯罪を犯すべきだ。法治国家で殺人は最低の犯罪だ。加害者も地獄で被害者に詫びるがよい。目的以外のとをして被害者を殺す必要はない。
ここは戦場ではないのだから殺さなくても相手には殺されない。
貴方の家族が惨殺されても死刑廃止を声高に主張出来ますか?
余り簡単に被害者の人権を考えないで下さい。
この犯人たちの予備軍は日本に沢山いるでしょう。実際に犯罪を犯してみるかどうかまだ決めていないけれど、でも、「世の中」や「女性」に対して非常に暴力的な感情を抱いている層が明らかに厚くなってきていることは確かです。
そういう人たちが合法的に武器を持ち戦場に旅立つとしたらどんなことが起こるでしょう。
私は、今回の事件で、日本軍の兵士たちが過去に戦場で何をしたかアジアに問われていることは、誇張ではなく本当に起こったのではないかと連想しました。
日本人の男性の中には、密室で弱いものに対してこんなことができる人たちがいるのだ、ということ、それから、この事件の犯人をヒーローのように思う若者たちが沢山いる様子なこと、それを見て、戦争になったら日本人の男性たちが戦場で「必要以上に」おそろしいこと、無辜の市民や女子どもを手にかけることがはっきり予想できました。
私は死刑反対派ですが、しかし、どうもこの3人の犯罪が軽く見られている様子な日本が恐ろしいです。
わたしは日本に帰る気はないですが両親がいるので日本のことは心配です。
現行犯なんかはその場で射殺されますよ
冤罪の疑いがないためです
優しい日本のように「犯罪者の命を尊重する」と言う感性はありません
少し調べたらわかることですが欧州における死刑廃止は
「司法への不信」が原因です
そのために「冤罪の疑い(可能性)がある」と言う理由で死刑は廃止され
逆に冤罪の可能性のない現在進行中の犯人は問答無用でぶっ殺されます
日本みたいに「犯罪者でも命は命」だなんて気に掛けてくれませんよ?
最近の立てこもり事件でも日本は犯人の命を尊重して警官に犠牲を出しました
これが向こうなら建物ごと掃射されてますね
これが日本と欧州の命に対する根本的な価値観の差です
日本は軽犯罪では冤罪が多いのですがその事実は周知でなく
また重犯罪ではその性質上冤罪率が低い為に
司法官憲は国民からある程度の信頼を得ているというだけです
ちょくちょくお邪魔しています。
Tun on Redが許されるのは確かに人口密度が低い街で、ですね。NYCに住んでますが、NYCは駄目です。でも、トンネル越えたお隣NJではOKなので。
地方在住者です。大企業を本社自体地方に移すべきだと考えています。少なくとも各県のいくつかの市に。そうでもしないと地方は廃れるばかりです。
(単なる願望で、不可能ですが)今の税金私物化知事の時に遷都してもらいたいです。
地方の宣伝嬉しいです。でも、人を思いやる優しさを悪用する市町村合併など地方もエライ目に合わされてますよ^^
「他人のものを盗っちゃダメ!」「他人を困らせちゃダメ!」「人を殺しちゃダメ!」って言ったら子どもに笑われそうな社会・・・作った人間に責任取ってもらいたいけど・・・
嬉しくて泣きたくなる程の、笑われない心をつくりたいね
「やられたら、やり返す」←そりゃ逆に向こうの話でしょ。。日本はもともと神の許しなんか必要なくてあえて書くなら「他人の過ちは水に流す」ってことがまず思い浮かぶね。殺人まで犯したんなら無理っぽい話だけど。
外国人からも日本人はおとなしいと思われてるし、そういうキリスト教圏の国と比べても犯罪も少ないし。
カナダは日本より殺人発生率が低かったりするのかな?
米国なら止まって通してくれる人が多いのに!
止まれなくてごめんと、心の中でつぶやきました。
米国って都市部を少し離れると信号が少ない為に、
自分で判断しなきゃいけない場面が多いからかな?と思いました。
日本は、信号王国だから、何だろう。。。
信号に従っていれば正しいと、なぜかそう思ってしまう気がします。
一応、高齢化社会になってきてるので、状況を見て止まれるようには心がけていますが。。。
少し前、イリノイ州で見た、高速の工事現場手前の立て札、びっくりしました。
「作業員はねたら14年刑務所10000ドル。」(Worker hits 14 years jail $10000)
一瞬、目を疑いました。日本じゃ書いてないなぁと。
死刑の是非を考えたことはあまり無くて。。。
でも、もし、私が執行人だったら、やっぱり気分のいい物ではないですね。
それから、今、逆転裁判なんてゲームをしてます。私の性格が素直な物で、重箱のすみ突っつくよーな指摘しないといけないのが心苦しかったりします。
人を裁くのって、辛いなぁ。。。ゲームでも。
小泉や安部のファッショ体制を許した日本国民の情けなさには呆れます。一日も早く、民主、共産、社民を中心とした民主主義・護憲保守政権が誕生することを祈ります(今の自民公明体制は危険なファシズム体制)。
死刑制度については、私はどんな理由があろうとも絶対に容認してはいけないと思います。
どんな非人間的な殺人を犯したからといって、死刑を求める、死刑を支持するというのは、非人間的な殺人を犯した人と同じ過ちを自分も犯すことだと思います。
日本は仏教徒の人口が圧倒的に多い国ですが、仏教の教えは、死刑を容認するものではありません。日本は、平安時代の一時期、死刑廃止の歴史を持つ国です。
お釈迦様は、「憎しみは憎しみをもってしてやまず、愛をもってしてやむ」
親鸞の先生の法然は、お父さんを殺されていますが、お父さんが死ぬとき「仇を討つな。討てば必ずまた仇として狙われる。その連鎖が止まらなくなる。そうでなくて出家せよ」とおっしゃっていますが、まさにそのとおりだと思います。
日本も国のおこなう人殺し、報復殺人容認につながりかねない死刑制度は廃止ししなければならないと確信いたします。
アメリカや欧州の制度をそのまま日本にもってくればまず失敗します
小泉首相の経済政策が失敗した理由がそれです
古くは中国の律令制を日本にもってきて大失敗した例があります
猿まねはだめですね
さて、取り上げていらっしゃる事件は、本当にひどい。どう弁護しようにもしようのない事件です。
今、日本では毎日のように死刑判決が出ています。
他国と比べて、日本の殺人事件は凶悪なのか?そこはわかりませんが、アメリカや中国なら死刑になるでしょう。
ただ死刑廃止を求める人達は、苦しい立場でしょう。私は、条件付死刑廃止論者ですが、現行法の下で、死刑にするなと言うのは無理があると思います。
国民の合意形成と刑法改正。そこで死刑を廃止しないと、量刑の不安定が起きて、司法の場が混乱します。
しかし、国民の合意形成には、大変な難しさがあると思っています。
ほぼ毎日、あなたのサイトは覗いています。
私は「アクセス数」にはこだわりませんが、
あなたのサイトのアクセスには脱帽です。
お元気ですか。
何だか「ワインのアルバイトで疲れて」とか書いてあるので
心配です。
一度、会いたいですね。この前会ってから、もう丸二年経ちました。
京都は近年ますます入洛客が多く、ブームが続いてます。
新都ホテルも増築して、よくお客が入ってます。
では、また。
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ストレス社会が犯罪者を生み出した、だから社会にもその犯罪に責任がある、だから量刑を軽くする というロジックは繋がらない。
刑の重さは何で決まられるべきかという視点が甘い。
量刑は社会うんぬんではなく、その人が犯した結果に対して課されるべきである。
その個人の行動と社会をつなげる間に、どれだけ不確定・不明要素があると思っているのか。
実際に被害にあったことがない人は、社会の中にそんな残酷なことがあることを認めるのが怖いから、何となく社会全体のせいにして、現実の社会の不条理さを薄めているのだと思う。
実際は、人間は何万年前から殺人をしていて、いつ何時そういったことが起こるか分からないというのが人間の社会なのだと思う。
私も、実際に身内が殺人されるまでは、人権擁護団体(死刑廃止運動も活発にしている)のサポート会員であったほどの人ですが、実際に身近に起こり、犯人(不条理に逆恨みしている)が極刑にならない限り、海外に移住しなければ安心して結婚も子どもと作ることもできない。
量刑は、単純にその人が犯したことの結果に対して課されるべきだと思う。
結果論であるということ(現在より厳しくなること)が浸透すれば、それが抑止力になると思う。
(否定する内容を記載しましたが、こうやって量刑に考えるきっかけをネット上で多くの人に提供して下さっていることには感謝致します。)