2012.06.12 (Tue)
野田首相大飯原発再稼動宣言への反論
『内田樹の研究室』が述べているように、一国の総理大臣が、従属関係にある特定の国や、企業のために国民を犠牲にしてまでも、日本の原発を再稼動すると宣言したことは、企業のトップとしての発言ならまだしも、国家を司る首相の発言としては、不適切であったと誰もが思ったであろう。もし、この地震活動期に本当に大飯原発が再稼動することになれば、野田総理は、日本を滅亡に導いた一国の主として、日本史上に汚点を残すだろう。
10日には、福井県原子力安全専門委員会(委員長、中川英之・福井大名誉教授)が、政府が決定した安全性に関する判断基準を妥当とし、3、4号機の安全対策を十分とする結論で合意した。この報告書が11日午後に西川一誠知事に提出され、知事は、大飯町の時岡忍町長と県議会の意見を参考に再稼働同意の決断を下した。これを受けて、首相と関係3閣僚が16日にも会合を開いて再稼働を決定する。
原発マネーに依存しなければやっていけない福井県が、政府の安全性に関するでたらめな判断基準を妥当と判断して再稼動を決定したことは遺憾である。津波対策や地震対策も未完成、そして、ヴェントもない大飯原発の安全性など確認できるはずがない。
『脱原発弁護団全国連絡会』は、「安全性が確認されないまま再稼働に突き進むことは、次なる破局的事故を招きかねず、市民生活を破滅の淵に晒すものである。」として、再稼動の判断を撤回するように求めている。
菅直人が首相だったときに打ち立てた民主党の脱原発方針は、この野田佳彦の再稼動宣言で、原発推進へと変わってしまった。全国の原発を再稼動させることは、すでに菅直人が首相を辞任した時に決まっており、その後、いくら国民が反対しても再稼動ありきの出来レースだったので、結局、大飯原発を出発点として、ドミノ式に全国の原発が再稼動することになるだろう。
20120610 大飯再稼動を首相表明 どうなる... by PMG5
大多数の国民の反対を押し切って大飯原発を再稼動させるだけではなく、すでに40年を過ぎた美浜原発まで稼動させようとしているとは、狂気の沙汰だ。日本政府の暴走をなんとか止めなくてはならない。
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大飯原発3,4号炉の再稼働に反対する声明/脱原発弁護団大飯原発3,4号炉の再稼働に反対する声明
脱原発弁護団全国連絡会は、関西電力大飯原発3,4号炉の再稼働を進めるとの2012年6月11日付けの政府決定に対し、これに断固として反対し、その撤回を強く求める。
野田首相は2012年6月8日、首相官邸で「国の重要課題であるエネルギー安全保障の観点からも原発は重要な電源だ」「国民の生活を守るために、大飯発電所を再起動すべきだというのが私の判断だ」と記者会見で述べた。大飯3,4号機について、第一次ストレステストに基づいて、政治家である閣僚が暫定基準に基づいて安全性に対して政治判断を行ったうえで運転再開を行うとしている。
福島原発事故の発生によって多くの市民の生活が根底から破壊され、放射性物質による汚染による健康被害発生の不安の内に暮らしている。野田首相にはこの深刻な現実が見えているのだろうか。
現行の安全設計審査指針が誤っていたことは班目原子力安全委員会委員長自らが認めており,原発が安全設計審査指針やこれを前提とする技術基準に適合していても安全と言えないことは,今や国民的確信である。我が弁護団連絡会議に所属する二つの弁護団が担当する仮処分事件において、大飯3,4号機の再稼働の適否について司法判断を求め、その中で以下のような問題点を具体的に指摘している。
市民の生活を守るためには、今、首相に求められていることは、脱原発の政治的意思を示すこと、確実な安全性を確保するための規制委員会・規制庁等の原子力安全行政を経済産業行政とは完全に独立させ、その確立を図ること、そして原発稼働の条件がないならば、再稼働なしでも夏を乗り切るための需給ギャップ対策に注力することにつきる。
安全性が確認されないまま再稼働に突き進むことは、次なる破局的事故を招きかねず、市民生活を破滅の淵に晒すものである。
我々は、次の理由から、政府の再稼働の判断には法的な根拠がなく、また政策としても不適切であり、直ちに撤回されるよう強く求めるものである。
1 国会事故調の報告を待て
福島原発事故に対する国会事故調査委員会の調査報告が、今月にも公表される。この報告を待ち、事故の教訓を踏まえた上での対策を講じた上でなければ、判断の前提がない。
2 規制改革と新安全基準に基づく審査が不可欠
福島原発事故を踏まえた、原子力規制行政の改革が成し遂げられていない。原子力安全保安院と原子力安全委員会は、その能力にも独立性・公正性にも深刻な疑問がある。
現行の安全設計審査基準については現に原子力安全委員会はこれらの見直し作業を行っており、この作業はまだ完了していない。再稼働について判断するためには、①事故の正確な経緯と原因を解明する。②原発の安全審査の根幹をなしている安全設計審査指針、耐震設計審査指針等について、津波や電源対策だけでなく地震や老朽化などの広範な分野について公正な専門家の討議を通じて見直す。③新たな指針を適用して、付近で発生が想定される最大の地震・津波の程度、地震・津波対策の進捗度、運転経過期間や脆性遷移温度などに示される老朽化の程度などについて適切な審査を行い、危険性の程度を正確に把握した上で許否を判断するというプロセスを経なければならない。
新たな機関のもとでの新たな安全基準とこれに基づくバックフィット判断がなされるべきことは、法制上も福島原発事故という未曾有の事態を踏まえた再稼働の最低限の要件であると考えられる。
3 ストレステストの想定に科学的根拠がない
ストレステストの前提とされている対策はもっぱら津波対策、電源対策に限られており、従来の想定を超える地震に対する対策、過酷事故対策などがきちんと盛り込まれていない。また、津波対策、電源対策も福島事故時の想定を超過した津波高さ(福島第1原発での津波高さ15メートル-想定されていた津波高さ5.5=9.5メートル)を機械的に加算することを全国の原発に求めただけであり、その想定には科学的な根拠がない。津波及び地震のみを考慮した原発の頑健性を検討するストレステストはそもそも安全基準の代替とはなりえない。
不公正な規制行政を繰り返してきた保安院によるストレステスト評価にもとづく関係大臣の安全判断など全く信用することはできない。
大飯原発の地震に対する安全性には、重大な懸念がある。原発の傍らには海側に二本、陸側に一本活断層が通っており、これが三連動した場合、大飯原発に定められた制御棒挿入時間2.2秒をこえてしか制御棒が挿入されないため早期にメルトダウンにいたる危険性がある。にもかかわらず、関西電力はそのような危険性はないとして何ら対策をとらず、原子力・安全保安院もこの問題を放置している。
4 ずれ破壊が指摘されるf-6断層(破砕帯)の現地調査が不可欠
さらに、最近になって次のような事実も明らかになってきた。関西電力大飯原発の敷地内にあるf-6断層(破砕帯)について、名古屋大の鈴木康弘教授(変動地形学)と東洋大の渡辺満久教授(同)が付近の活断層と同時に活動し、地表がずれる可能性があり、原子炉施設のずれ破壊の危険性を指摘し、再稼働前の現地調査の必要性を指摘している。関西電力は「活断層ではないと判断しており、再調査の必要はない」としているが、問題は活動性だけでなく、この破砕帯が付近の活断層活動時に連動してずれるかどうかにあり、正確な反論となっていない。
班目春樹原子力安全委員長は、「最新の知見が出たなら、保安院で評価をしっかりやり直すべきだ」(福井新聞6月8日)との見解を表明しており、また産総研の杉山雄一主任研究員も「大飯原発など若狭の原発は、現地調査で改めて状態を確認するべきだ」としている。断層活動によるずれ破壊は震動によるものと比べても強烈な破壊力であり、施設そのものが裂けてしまう危険性もある。このような可能性が指摘されている原発の十分な調査なしに運転再開の判断を下すことは到底許されない。
5 専門家ではない政治家は止める判断はできても、動かす判断はしてはならない
専門家ではない政治家が判断できることは、専門家の判断が信用できない時に原発の運転を止めることである。菅直人前首相が浜岡原発の運転の停止を求めたことは正しい。しかしながら、原子力安全委員会の委員長も疑問を留保している状況で、専門家の間でも意見が分かれ、本来実行すべき手続が履行できない状況で、専門家ではない政治家が安全判断をするようなことは、できるはずもなく、無責任きわまりない。
6 受給ギャップ策を講ずることが、停電など避けるための政治の責任である
原発比率が5割近かった関西電力は、原発なしでは夏場のピーク時に必要な電力の85%程度しか賄えないとする。しかし、自家発電などの供給への確実な組み入れやピークカットのための新たな利用料金契約の拡大、大口需要家への協力依頼などの受給ギャップ策を講ずれば、停電などの事態は避けられる。そのための努力こそが政治の責任である。
以上のとおりであって、福島原発事故のような深刻な原発事故被害の再発を未然に防止するためには、現在停止中の原子力発電所については、福島第一原子力発電所事故の原因を解明し、その事故原因を踏まえた安全基準について、議論を尽くし、それによる適正な審査によって確実な安全性が確保されない限り、再稼働しないことが当然であり、このような条件もないのに、政治家の判断によって再稼働を強行することは次なる原発事故の破局をもたらしかねない。我々は、市民の生活を守るため、政府の判断に断固として反対し、その撤回を強く求める。
2012年6月11日
脱原発弁護団全国連絡会
共同代表 河合 弘之
同 海渡 雄一
大飯原発:「安全性は妥当」福井県原子力委が結論
毎日新聞 2012年06月11日 12時04分(最終更新 06月11日 12時27分)
福井県おおい町の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働問題で、安全性を技術的観点から検証している県原子力安全専門委員会(委員長、中川英之・福井大名誉教授)は10日、政府が決定した安全性に関する判断基準を妥当とし、3、4号機の安全対策を十分とする結論で合意した。この日示された報告書案を微修正し、11日午後、西川一誠知事に提出する。西川知事は同県おおい町の時岡忍町長と県議会の意見を参考に再稼働同意の決断を下し、首相と関係3閣僚が16日にも会合を開いて再稼働を決定する。
報告書案は福島第1原発事故の状況や国の対応、関電の対策を整理。その上で、政府の判断基準やその中で示された30項目の安全対策について、「現時点で知り得る限りの知見を反映している」「事故の進展に従って何重にも歯止めをかける多層的な対策となっている」などと評価した。
さらに、関電による3、4号機の安全対策について、「安全性は向上し、福島第1原発事故を教訓に想定すべきだとされる地震・津波が来襲しても、原子炉の安全を確保するために必要な対策は確保できている」と明記し、政府が「安全」とした判断を追認した。

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