2012.02.27 (Mon)
第84回アカデミー賞に東日本大震災からの復興を描いた『津波そして桜』がノミネート
《あらすじ》
ジョージ・クルーニーが演じる主人公のマット・キングは、ハワイの王家の血筋をひく、由緒ある人物。だが父親としては失格で、17歳と10歳の娘たちとの関係はぎこちなくなっていた。そんな矢先、妻のジョニーがボートの事故で昏睡に陥る。いきなり片親の立場となったマットは、これまで放置してきた家の中のことに取り組まなければならなくなる・・・。そして妻ジョニーが浮気をしていたことを知らされてしまう。家族のこれからと自分の生き方を見定めるため、妻の浮気相手を探し出し、娘たちを連れて、会いに行くことに。家族とは?絆とは?と考えさせられるストーリー。
今年、何よりも、注目したいのが、ドキュメンタリー(ショート)部門にノミネートされている『津波そして桜』だ。
このドキュメンタリーは、映画『ブラインドサイト ~小さな登山者たち~』や『カウントダウンZERO』を手掛けたルーシー・ウォーカー監督が、『カウントダウンZERO』を宣伝するために来日していたとき、桜の花を描いた映像を撮影中だったが、そのとき、東日本大震災が起きてしまった。
そこで、ルーシー・ウォーカー監督は、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の被災者たちが、復興に向けて歩み始めた姿を、日本の文化を象徴する桜の花とともに綴り、39分の短編を作った。この作品の中では、もちろん、日本語がそのまま語られている。この映画が作られたいきさつなど次ページで。
【More・・・】
参考記事:アカデミー賞ノミネート作品 東日本大震災からの復興を描いた『津波そして桜』とは?ルーシー・ウォーカー監督を直撃!【第84回アカデミー賞】
シネマ
トゥデイ 2012年2月27日 9時40分
[シネマトゥデイ映画ニュース] 映画『ブラインドサイト ~小さな登山者たち~』や『カウントダウンZERO』を手掛けたルーシー・ウォーカー監督が、東日本大震災からの復興を描いた新作ドキュメンタリー映画『津波そして桜 / The Tsunami And Cherry Blossom』について、プロデューサーのキラ・カーステンセンとともに語った。
ルーシー・ウォーカー監督映画『カウントダウンZERO』場面写真
同作は、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の被災者たちが、復興に向けて歩み始めた姿を、日本の文化を象徴する桜の花とともに綴った39分の短編。本年度アカデミー賞短編ドキュメンタリー部門でノミネートされている秀作。
制作過程について「まずルーシー監督が、『カウントダウンZERO』を日本で宣伝している同時期に、桜の花を描いた映像の詩を残そうと考えたの。そして、撮影も去年の3月3日から始めるつもりでいたの……。ところが、3月11日にあの東日本大震災が起きてしまった……。当然、桜の花を撮影している状況ではなくなって、われわれも震災後の状況を伝えようとする意思に変わっていったのだけれど、桜の花が日本の文化にもたらす意味合いから、ぜひとも桜の花も撮るべきだと考えたの」とプロデューサーのキラ・カーステンセンが語り、さらに撮影は撮影監督、通訳、監督と自分とで、本当に少人数で行ったことも明かした。
そんな桜の花を、最初にルーシー・ウォーカー監督が撮影することに決めたのは、母親の影響によるものらしい。「わたしの母ががんでロンドンの病院の床に伏していたとき、死期が迫っていることにはお互い気づいていたの。そして、その部屋の窓から桜の木が見えていて、それを見たわたしの母が、今年は桜が咲くのを見られないかもしれないねとわたしに語りかけてきたの」と辛い体験を告白した。
だが、ルーシーの母親も、自分の母親(ルーシーの祖母)をがんで亡くしていたそうだ。「わたしの祖母もまた桜の木を前にして、母親に同じことを話していたことがあったそうなの。でもそのときの母親は、その言葉が祖母が母親と人生や死について語り合いたかったサインだったことに気づかず、後で気づいて後悔したことをわたしに話してくれていたの。だから母親ががんになったときは、すぐにわたしは母親といろいろな話をする機会をつくったわ。でも、そんな母親もわたしが30歳のときに亡くなって、父親もその1か月後に亡くなってしまったの……」と悲痛のどん底に落ちてしまったそうだ。
ところが、両親を失ってからしばらく経ったある日「わたしはニューヨーク市内の道をマラソンしていたときに、道に連なっていった桜を見上げたことがあったの。そのときに、過去のことが走馬灯のようによみがえってきたけれど、その桜の木によって希望が持てて、ようやく心を落ち着かせることができ、さらにこれまでの気持ちを癒すことができたの」と彼女にとって、深い思い入れのある木であったため、家や家族を失った震災の犠牲者にも、震災場所で咲く桜の花が特別な思いで彼らの目に映っているのではないかと思ったそうだ。
この映画の今後についてキラ・カーステンセンは「現在のところ、アメリカではTVチャンネル、HBOが放映権を獲得していて、テレビで放送することになると思う。一方日本でも、いろいろな機関や映画祭が興味を示してくれて、それぞれで上映することになるわ。でも、日本での映画としての配給権やテレビの放映権は、まだ決まっていない段階なの。ただ、これまでこの映画を制作する上で、アーカイブの映像の確保や、いろいろな意味で助けてもらったのが日本のチャンネル、NHKで、アカデミー賞も彼らはレッドカーペットを撮影することになっているから、NHKのようなチャンネルで放送されることを願っているわ」と語り、さらに日本を再び訪れると告げた。
映画は、津波に飲み込まれ何もかも崩壊し、瓦礫だらけの荒廃した土地で、希望のように咲く桜の花が目に焼き付いてくる。そして、人の思いが詰まった一輪一輪の花が、徐々に揃って団結しながら満開し、一つの木(国)としてその復興を待ち続けているように思えた。我々は、また桜を咲かさなければいけない。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)
- 関連記事
-
- 米国の中学生がスクールバスで老婆虐めるYouTubeが反響を呼び老婆へ多額の寄付金が (2012/06/25)
- エリザベス女王即位60年の祝賀行事に幕 (2012/06/06)
- 第84回アカデミー賞に東日本大震災からの復興を描いた『津波そして桜』がノミネート (2012/02/27)
- 雪の日は車のスリップと歩行中の転倒にご注意 (2012/01/24)
- ハーマン・ケインが不倫疑惑で米大統領出馬を断念 (2011/12/04)
Tags : 第84回アカデミー賞 |
ルーシー・ウォーカー監督 |
津波そして桜 |
カウントダウンZERO |
ジャン・デュジャルダン |
アーティスト |
ブラピ |
マネーボール |
ジョージ・クルーニー |
|
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック