2012.02.08 (Wed)
岩崎京子氏の『赤ずきんちゃん』が教えてくれる戦争の恐ろしさ
例えば、若い頃は、1年は長いと思っていたのが、最近では、あっという間に過ぎてしまうようになった。 若い頃のように新しい経験に出会う数が少なくなったせいもあるだろうし、記憶力が衰えてきたということもあるだろう。このことは、ジャネーの法則、「時間の心理的長さは年齢に反比例する」が説明している。つまり、年齢が高くなればなるほど、時間の心理的長さは短くなるという。
どこで読んだか忘れてしまったが、年をとると時間の流れを速く感じることを示す実験もあった。時計を見ずに1分経ったら合図をする実験では、年齢が上の人ほど遅く合図する傾向があるという。年をとると、現実の時間より精神的な時間がゆっくりと流れるようになる結果だという。
私も最近では、夢中になってブログを書いていて、ふと時計を見てあまりにも時間がたっているのにびっくりすることがある。自分の中の精神的な時間の流れがかなりゆっくりしてきた証拠だ。だから、FBのおともだちのたまちゃんとも話していたんだけど、寝不足気味になってしまう。しかし、寝不足は、美容や健康に大敵なので、避けなければならない。
普通の人にとっては忙しくないのだろうが、そんなわけで、最近はわたし的にかなり忙しくなってきた。それも、「リア充」といえば聞こえがいいが、自分のこと以外のことで大半の時間を割かれている。例えば、3月にトロント大学で行われるオンタリオ州日本語スピーチコンテストの準備では、いつもはコンテストに出場したいと言ってくる生徒はクラスで一人くらいしかいないのだが、今年は元生徒が一人、そして、今教えているクラスからも2人の生徒が出場を希望しているのだ。ただ、50人に一人しか出場できないので、ちょうど50人しかいない私のクラスからは、どちらか一人を選ばなければならない。
そして、国際交流基金から日本語専門家の登録簿を作るということで、大学で日本について教えている教授の名簿を作るのにも学部のコースをひとつづつ調べなければならず、結構時間を費やした。
又、もう一つ、かなりの時間が割かれているのは、同じ学部で教える同僚というか大先輩と言ったほうがいいのかもしれないが、彼女が新しく出版する本に載せる日本語の物語を英訳する許可を作家やイラストレーターの方にお願いしたり、その日本語の物語を英語に訳したりする作業だ。しかし、このような経験からは学ぶことも多い。
今回、その同僚は、『赤ずきんちゃん』の改編版を世界中から30話ほど集めて、全てを英語に翻訳して解説するのだが、その中に日本語の『赤ずきんちゃん』の改編版を1話か2話収録したいということだった。探してみると、結構『赤ずきんちゃん』の日本語の改編版ってあるものなんだね。

ウォルター・クレイン画 「赤ずきん」より
その中でも、日本図書センターから出版されている『「戦争と平和」子ども文学館』の第12巻に収められている岩崎京子氏の「赤ずきんちゃん」は、面白かった。英訳の許可を得るために、同僚が英語の手紙を出版社に何度か送ったが、全く返事がなかったので、その手紙を和訳して送ってみたら、すぐに返事が来た。やはり、英語で書かれていたのでよくないようがわからなかったそうだ。しかし、物語の著作権は出版社ではなく、著者が持つということで、日本図書センターで、岩崎先生の電話番号を伺い、さっそく、電話してみたら、岩崎先生は同僚の本に「赤ずきんちゃん」の英訳を記載することを快く承諾してくださった。これから、イラストレーターの方の許可もとらなくてはならない。
それにしても、今回初めて知った、戦争を二度と起こさないように書かれたこの全20巻・別巻1からなる『「戦争と平和」子ども文学館』は、いつかぜひ読んでみたい作品だ。このような本を子供の頃から読んでいれば、戦争の恐ろしさを実感できるだろうし、又、2度と戦争を起こすなという教訓を次世代へも伝えることができるだろう。
岩崎先生の『赤ずきんちゃん』も、戦争で東京から地方に疎開した5歳の赤い防空ずきんをかぶった女の子のお話で、お母さんに頼まれてお手玉をひとつこわして入っていたアズキで作ったお赤飯をおばあさんに届けることになるのだが、女の子は、届ける前に雑木林の中で殺されてしまうというストーリー。
当時は戦争で食物不足だったのだが、中には、お金持ちの子供もいて、いつもおにぎりや蒸(ふ)かし芋をみせびらかしながら食べていた。それがうらやましかった女の子は、おばあちゃんの家にいく途中で、自分もお赤飯でおにぎりを作って食べながら行きたいとお母さんにねだる。最初はお行儀が悪いと叱った母も、女の子の願いを聞き入れる。
しかし、女の子の死因を調べていた警部は、女の子の重箱のお赤飯がひとつぶも残っていなかったことから、女の子がおにぎりを食べながら歩いているのを見たものがいて、それをとりあげようとして女の子に騒がれ、殺してしまったのではと推理する。戦争で食べるものが不足し、口に入るものを手に入れるためには、殺人さえもしてしまう時代に起こった悲しいエピソードとして次代に語り継がれて欲しい物語だ。
推薦のことば
痛苦の体験から生まれた次代への遺産
古田足日(児童文学作家・研究家)
戦争児童文学はアジア・太平洋戦争の痛苦の体験から生まれた、戦争を二度とおこすな、おこさせるなという、私たち児童文学を書く者の叫びであり、思いである。それは子どもたちへのメッセージであると共に、大人にむかっての訴えでもあり、戦後の児童文学の中で一つの領域を形成した。その集大成が今刊行される。この集成は児童文学史資料としてだけではなく、私たちが戦争をどう考えたかという現代史の貴重な資料であり、次代への遺産である。
極右の石原チン太郎が新しい政党を作り、戦争を始めるのではないかと人々を不安にさせている今、戦争の苦しみや惨めさを語り伝えることが、戦争を2度と起こさないためにも重要となってくる。
もう一つの『赤ずきん』改編版で、小峰書店から出版されている筒井敬介(小西理夫)氏の「もう一人の赤ずきんちゃん」では、小峰書店に電話して聞いても筒井氏の電話番号さえ教えてもらえなかった。なんとも、出版会社によって英訳の理解にかなり差があることもわかった。
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縁無し帽の赤ずきん(19世紀後半、Carl Offterdinger画)
ファイル:Offterdinger Rotkappchen (2).jpg
将来、児童文学作家をめざす人は、日本児童文学者協会で岩崎京子先生を初めとした児童文学作家による講座(通信講座)が開かれているので、ぜひ、挑戦してみたらいかがだろうか。
★申し込み時に担当講師のご希望を出していただきます。
★担当講師が受講生の提出作品を添削します。(定まったテキストはありません。)
★作品のご準備ができるなら書き始めたばかりの方でもOKです。
◆期 間 2012年4月~2013年3月
◆講 師〔創作〕赤座憲久・赤羽じゅんこ・一色悦子・糸川京子・岩崎京子・太田京子・大原興三郎・おぎのいずみ・加藤純子・加藤多一・菊地澄子・北川チハル・きどのりこ・正道かほる・高橋秀雄・橋本ときお・浜たかや・日野多香子・牧野節子・村山早紀・八束澄子・山崎玲子
〔創作&ノンフィクション〕高橋うらら・中尾明・和田登
〔詩・童謡〕海沼松世・野呂 昶・はたちよしこ
◆受講料 Aコース30,000円 Bコース60,000円 Cコース50,000円
◆締 切 3月15日(木)
◆申込方法 申込用紙を下記までご請求ください。
◆お問い合わせ、お申し込みは◆
〒162-0825 東京都新宿区神楽坂6-38中島ビル502
(社)日本児童文学者協会 講座係
TEL03-3268-0691 FAX03-3268-0692
E-mail zb@jibunkyo.or.jp
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赤ずきん(ウィキペディア)あらすじ [編集]
ウォルター・クレイン画
ここでは、グリム童話における『赤ずきん』のあらすじを記す。
赤ずきんと呼ばれる女の子がいた。彼女はお使いを頼まれて森の向こうのおばあさんの家へと向かうが、その途中で一匹の狼に遭い、唆されて道草をする。
狼は先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そしておばあさんの姿に成り代わり、赤ずきんが来るのを待つ。
赤ずきんがおばあさんの家に到着。おばあさんに化けていた狼に赤ずきんは食べられてしまう。
満腹になった狼が寝入っていたところを通りがかった猟師が気付き、狼の腹の中から二人を助け出す。
赤ずきんは言いつけを守らなかった自分を悔い、反省していい子になる。
『赤ずきん』ストーリーの変遷 [編集]
ペロー以前 [編集]
作品としての赤ずきんで最も古いものは、1697年にフランスで出版されたペロー童話集の中の『赤ずきん』であるが、それ以前の話としてスウェーデンの民話『黒い森の乙女』やフランスに伝わるメルヘン[1]など類話が確認されている。
ペローが民話から作品にする段階で変更を加えたとされる点はいくつかある。
主人公に赤い帽子をかぶせた[1]。
民話では、赤ずきんが騙されておばあさんの血と肉を、ワインと干し肉として食べるシーンがあるものもあるが、そのシーンを削除[1]。
狼が近道を行ったため先回りされたとされるが、民話では主人公に「針の道」と「ピン(留め針)の道」などの二つの道を選ばせるシーンがある[1]。
主人公が着ている服を一枚一枚脱いでは暖炉に放り込むというシーンを削除[1]。
民話にはない「教訓」を加えた。
この物語は宮廷を中心とするサロンの女性たちのために書かれたものであったため、下品なシーンや残酷なシーンなどを削除し変更が加えられたのだと言われている。なお、ペロー童話では赤ずきんが狼に食べられたところでお話は終わり、猟師は登場しない。
ルートヴィヒ・ティークの赤ずきん [編集]
ドイツにおいて初めて赤ずきんを作品化したのは、ルートヴィヒ・ティークによる戯曲"Tragödie vom Leben und Tod des kleinen Rothkäppchens"[2](『小さな赤ずきんの生と死』1800年)であった。
ティークはペロー童話では登場しなかった猟師を話の中に登場させ、赤ずきんを食べた狼を撃ち殺させた。だが、この話でも赤ずきんは食べられたきり、救出されない。
グリム童話の赤ずきん [編集]
グリム童話の『赤ずきん』は長い間、ドイツのとある農家の非識字者である老婆が語る話を聞き取り、手を加えずに原稿に起こし出版したものであると信じられていたが、実は話の提供者にそんな人物は一人もいないということがハインツ・レレケの研究により判明している。
赤ずきんの話の提供者は、ヘッセン選帝侯国に属する高級官僚の娘たちであり、読み書きも当然に習得しているであろう彼女たちがペローの童話を読んでいる可能性は充分にある。そのことから、赤ずきんはドイツ土着の物語ではないとすら危ぶむ声もある[誰によって?]。
さらにグリムは、版を重ねるごとに話の内容に手を加えていった。赤ずきんとおばあさんが狼のお腹から生きたまま救出されるというモチーフを加えたのは彼らである[1]。
近代並びに現代における赤ずきん [編集]
赤ずきんの物語は世界中で愛され、シャルル・ギュオーやデ・ラ・メアなど様々な作家が赤ずきんのパロディ作品を世に出している。おばあさんが狼と赤ずきんを食べてしまうというヨアヒム・リンゲルナッツの『クッテル・ダッデルドゥが子どもたちに赤ずきんのお話を聞かせる』や、赤ずきんがおばあさんに化けた狼を見抜き、即座に銃で撃ち殺すというジェームズ・サーバーの『少女と狼』などが有名である。
『ヴァンパイアセイヴァー』という日本産の対戦型格闘ゲームにも、この過激な性格の赤ずきんをモチーフにした「バレッタ」というキャラクターが登場する。このゲームでは彼女が対戦相手である化け物たちに対し、しおらしげな態度を見せつつ隙を突いて仕返しをしたり、手榴弾や機関銃を撃ち放ったりする姿が面白おかしく表現されている。また海外でも、『The Path』(ザ・パス)といった赤ずきんをモチーフしたゲームや、ハードコアに表現したロックアートなどがある。
解説 [編集]
語源 [編集]
タイトルのドイツ語: Rotkäppchenは、Rot-käpp-chenの3節からなる合成語である。Rotはredにあたる。käppはKappe(≒cap、ふちのない帽子の意)がルートであり、語合成に伴い短縮化・ウムラウト化させている。chenは、小さいもの・愛らしいものといった意味の接尾辞であり、また転じて俗に日本語で「○○ちゃん」と愛称するのと同様にも使用される。
つまり、Rotkäppchen は意味を取れば「赤い帽子のおちびさん」となり、節に分解した Rot-käpp-chen では、「赤-ずきん-ちゃん」であるといえる。
作品の背景 [編集]
ドイツの社会史研究者の中[誰?]には、「赤ずきんの家庭に父親が不在であること」そして「おばあさんが近隣に他の家がないような場所に住み、近くを通りがかったのは猟師であった」などという点から、飢饉が続いた近世の初期、口減らしのために山に姥捨てにされたおばあさんのところまで内緒で食料を届けに行っていた少女の家庭環境や時代背景に絡め作られた話なのではないか、と推理する向きもある[要出典]。
深層心理学的解釈 [編集]
赤や狼に深層心理的なシンボルを読み取ることが出来るとか、元々は女の子がふらふら歩いていたら、悪い狼に食べられますよという教訓話であったとか、さまざまな解釈がされている。
精神分析学者のエーリッヒ・フロムやブルーノ・ベッテルハイム等は『赤ずきん』をはじめとしたメルヘンを読んで精神分析的解釈をし,民間伝承や民俗学に関して様々な考察をしたが、これらは間違ったものが多かった。
なぜなら今日知られている「赤ずきん」の話の内容の多くはシャルル・ペローが創作したものであって歴史が浅いので、それを読んでも民俗学的知識が得られるはずがなかったのである。例えば「赤ずきん」に出てくるずきんの赤さをフロムは「月経の血」、ベッテルハイムは「荒々しい性的衝動」と解釈したが、ずきんを赤くしたのはペローのアイデアであった[1]。メルヘン学者のロバート・ダーントンは彼らを批判し、「精神分析学者のフロム氏は存在しない象徴を超人的な敏感さで嗅ぎとって、架空の精神世界へ我々を導こうとした」と述べた[1]。

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「勧善懲悪のまともな司法の復活を 」Dendrodiumさまhttp://dendrodium.blog15.fc2.com/blog-entry-1173.html
日本を下っ端の十代新兵アメリカ兵の治外法権でやりたい放題に犯罪を犯せる無限の草刈り場に仕立てる日米地位協定を破棄すれば、ただちに日本国憲法が発布以来初めて発効して日本の国土と政府の主人はアメリカ軍属などではなく日本人主権者国民となる。
日本人が自ら地位協定を破棄するとき、アメリカはこれに一切干渉できない。非合法的手段を用いない限り、地位協定破棄を防ぐことはできないのである。アメリカは地位協定そのものをなんとしても残したいので先手を打って改訂を申し出てくるが相手にしてはならない。そもそも同じ人間の間に「地位」の違いによる「人権」の違いなどあってはならないのであるから、どのような「改訂」も必要なく「地位」協定そのものを破棄するだけである。
こんなものを認めている事自体人間としての誇りも尊厳もかけらも持たない奴隷根性そのものなんだがね。
▼地位協定の凶危▼
地位協定の意味は、母国語も知らない若い新米のアメリカ兵が、日本国内に入った途端アメリカ国内にいた時に受けていた法律による行動規制を全部捨てて、たとえどんな悪虐非道を働いても、地位協定ある限り日本の官憲はこれに指一本触れることすらできない、というものである。
この無学な新米米軍兵が日本国内にいる限り地位協定治外法権ですべての日本人の生殺与奪の権をその手に握って、その行為はあらゆる処罰から自由である。
地位協定ある限り米兵でさえあれば酒に酔って機銃を乱射して仮に皇居へ乱入して今上陛下を殺めたとしても、日本の法律では身柄拘束さえできないし、日本の刑罰をこの錯乱酩酊した(振りをした)乱射米兵に全く適用できない、というのが日米地位協定の現実なのである。
尊きいとやんごとなき今上陛下をアメリカの下賎で卑しい暴力からお守り申し上げるために、国会議員は直ちに地位協定破棄可決せよ。
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この事実を報じている長周新聞2012年2月8日付け一面トップ記事全文タイプ速報します。(誤変換あれば各自修正ください)
愛宕山米軍住宅含め白紙に戻せ-----市民欺き在沖海兵隊も移転
市長選では隠し、終ったとたん発表:民意問い直せの世論沸騰
[岩国]
在日米軍再編計画を巡る動きが新たな展開を見せている。6日、米政府は、沖縄からグアムへ移転させる米海兵隊の規模を当初の8000人から4700人へ縮小し、残りの3300人のうち1500人を岩国基地へ移転、常駐させることを日本政府に打診。「アジア重視」で中国との戦争準備をすすめるアメリカの新防衛戦略にそって沖縄の基地を日本全土に分散させる動きだが、「有力候補地」となった岩国基地は、厚木から移転してくる空母艦載機部隊などとあわせると2万人近い米軍関係者が押し寄せて国内最大の軍事拠点となる。市長選から一週間後に突如としてわいて出た岩国基地の大増強計画に、市民のなかでは「どこまで岩国市民をバカにするのか。このままでは岩国に日本人は住めなくなる」「事実を隠したままでやった市長選は無効でやり直すべき。約束違反もいいところで、市長も知事も愛宕山の売却も含めて白紙撤回するのが当然だ」と激しい思いが渦巻いている。
「米軍一挙に2万人へ迫る規模」
現在、米軍岩国基地には、海兵隊員とその家族、軍属を含めて約6000人が駐留している。2005年に公表された「米軍再編中間報告」で、厚木基地から米海軍空母艦載機(59機)とともに将兵約1600人)に軍属、家族を含めて4000人を2014年までに移駐させる計画が発表され、市民の強い反発を受けてきた。今回の米側の要求は、そこに1500人もの海兵隊を加えるものだが、軍属や家族を含めればその数は4000~5000人にも膨れあがるといわれる。つまり、岩国基地には一挙に2万人近い規模の米軍関係者が乗り込んでくることになり、人員だけでも現在の3倍というとてつもない増員となる。市民からは「沖縄でも犯罪を繰り返す海兵隊のたちの悪さを市民はよく知っている。岩国をアメリカ村の無法地帯にして、市民は岩国から出て行けということか」「愛宕山に270戸の米軍住宅を作って済む話ではない。市内全域が米軍住宅にされる」と語られている。
特に市民が怒っているのは、一週間前の市長選までは、福田市長もそれをバックで支えた民主党政府も米軍問題には一切触れず、「夢をかたちに!」など脳天気なフレーズの合唱で市民を煙に巻いておきながら、終ったとたんにマスコミを使って「民意は米軍再編に”現実的対応”(容認)を選んだ」と大騒ぎし、さらなる負担を押し付けてくるやり方だ。
これまでも「騒音軽減のため」といって2500億円をつぎ込んで米軍基地の沖合埋め立てを進めてきたが、ふたを開ければ、基地は二倍に拡張され、滑走路は「移設」ではなく二本体制、空母も接岸できる巨大岸壁までつくられた。また、埋め立て用の土砂を掘り崩し、学校や新興住宅など「新しいまちづくり」をするはずだった愛宕山開発事業は、はじめからわかりきっていた赤字を理由に廃止し、米軍住宅用地として売り払う。米軍問題に関しては、ウソを並べて市民をだますのが常套手段であった。
自民・公明に加えて、民主党、連合や自治労、「地元の意向を尊重する」と素知らぬ顔でうそぶいてきた二井知事も、米軍のために「ひとつ」になって「圧勝」を目指した先月末の市長選では、民間空港や国立病院移転、駅前開発などの鼻先ニンジンをぶら下げて業者などを締め付け、防衛省は「全小中学校にエアコンを設置する」という約束までして福田市長の「実績」を演出したものの、棄権者が続出して投票率は過去最低。福田市長の得票は、前回より5000票近く落とし有権者の三分の一にとどまる実質の不信任となった。まして、岩国基地への艦載機移転に関しては、「普天間基地の移転問題が解決するまでは、先行させることは認めない」としており、「容認」を公約に掲げたわけではない。市民をバカにした「後出しジャンケン」も甚だしいやり方に「民意を問い直せ」の声は高まっている。
「基地中心に道路網整備:県や市への怒り強く」
運送業に携わる男性は、「数十年前からの計画済みのものを時を見計らって表沙汰にしたまでの話ではないか。沖合移設も愛宕山も同じように市も県もすべて承知しているはずだ。基地を中心にした道路網整備を見ても岩国を一大軍事拠点にすることは素人でも予測できる」と語る。
岩国市内では、米軍住宅となる愛宕山と基地を結ぶ市道牛野谷29号線、県道牛野谷-尾津線など、国道188号線と山陽本線をまたぐ高架橋を造れば基地に直結する巨大道路が次々と造られている。また、基地から大竹ICまでの長距離を結ぶ地域高規格道路「岩国大竹道路」、平田バイパスや国道2号線を延長し、新幹線が停まる新岩国駅や岩国ICにつなげる計画などもある。
さらに、米軍住宅建設にともなって愛宕山にある市第一工場(ゴミ焼却場・築19年)を「老朽化」を理由に帝人岩国工場の海側埋め立て地である日の出町へ移転させ、そこまでのアクセス道路として新港から臨港道路の建設を進めている。これは、米軍が弾薬輸送に使っている新港埠頭から日本製紙岩国工場内を通り、突き当たる今津川にトンネルを掘るか橋を渡せば基地へつながる。
「米軍は基地内で弾薬を載せた艦船を直接接岸して作業することは嫌がる。東広島や江田島の弾薬庫からは陸路を使って運ぶので必ず道路が必要になってくる。愛宕山から基地内の米軍住宅につなぐ道路が増えているが、いずれ尾津に広がる蓮田も米軍住宅として買収するつもりではないか。30年ほど前に愛宕山にNHKが放送用アンテナを建てようとしたとき、米軍がクレームを付けて中止になったことがある。表に出る都市計画は、すでに米軍と数十年かけて決められたことが実行されているだけだ」と指摘する。
また、最近愛宕山へ移転する国立病院(黒磯町)付近にいつの間にか基地内と同じキリスト教会が建てられていることも指摘されており、「国有地である国立病院跡地に愛宕山だけでは収容しきれない米軍の住宅を造るのではないか」といううわさもある。
別の男性は、「すでに米兵は1000人以上が基地外に住んでいて、市内のあらゆる団地に入り込んでいる。光熱費もタダなので、クリスマスにでもなればど派手なイルミネーションで家を飾り立てるからすぐにわかる。軍事道路が整備されるということは、戦争が間近に迫っているということ。米軍は岩国市民を盾にして戦争をやるつもりだ」と語気を強めた。
商工業者の男性は、「市内では、旅館やホテルなど地場企業が相次いで倒産して、商工会議所の会員数もこの10年で500社近くも減ったという。帝人や日本製紙などが岩国から出て行く理由もこの米軍再編と関係しているとすれば、”夢をかたちに”どころかこれからもっと岩国は寂れていく。安心してこどもも育てられないが、現役世代も生きていけず岩国から出て行かなければいけない」と吐き捨てるように語った。
車長に住む男性は「市や県はすでに知っていたはずで、二井知事などははじめだけ”心外だ”と怒ってみせるいつものパフォーマンスをやっている。市長選で福田市長が再選されたことで市民をナメて発表したのだろう。グアム移転費だけでなく、普天間基地の改修費用までアメリカは日本負担を要求しているが、政府がしきりに消費税増税と叫んでいることとつながる。福田市長がこれで”はい”といえば、卑怯極まりない。これまでも市民をだましてきたが今回の手口もまったく同じ。岩国は米軍のものではないし、日本の土地だし、市民のものだ」と強調した。
旭町に住む婦人は、昨年末に二人組の米兵が年配婦人の家のガラスを割って侵入したことに触れ、「米兵は泥酔していたわけでもなく興味半分で事件を起こした。厚木の部隊に加えて沖縄の海兵隊も受け入れることになれば、凶悪事件が多発することは疑いない。アメリカから打診されていたことに対して、現地の市長や知事が知らなかったということはないはず。いつも市民にはほぼ計画が決まった段階で知らされるが、あまりにも岩国市民をバカにしている。容認云々ではない。愛宕山の売却も拒否して全貌を明らかにすべきだ」と話した。
車町在住の男性は「沖縄の負担を分かち合うなどと言っているが、アメリカの都合ですすめるための詭弁だ。アメリカ基地の負担をわざわざ日本国内で分かち合う必要は無く、当然にも岩国も66年間、同じ屈辱を受けてきた。日本国民の要求は”国外への撤去”だ。中国と戦争するなら確かに岩国は好位置だが、また岩国をアメリカの盾にするわけにはいかない」と話した。
この問題は下関でも、人工島が岩国基地と結んだ軍港になるという世論が広がっている。(了)