2011.01.31 (Mon)
エジプトの若者からのメッセージ
コメント欄でこのエジプトの若者が、他の言語に翻訳されたものがあったら紹介して欲しいということだったので、私もさっそくこの若者のメッセージのコメント欄に和訳が載っている『Translators United for Peace 平和をめざす翻訳者たち』のURLを紹介しておいた。今のところ、このエジプトの若者が書いたメッセージ原文へのアクセス数は、約3000件しかない。みんなでこのメッセージを広く世界中に広めよう。
TUPからの緊急速報を転送します。松元@パレスチナ連帯・札幌
----- Original Message ----- From:
To:
Sent: Monday, January 31, 2011 2:43 AM
Subject: [TUP-Bulletin:0015] 速報874号 エジプトの若者からのメッセージ
◎エジプトにてベルリンの壁崩壊の再現なるか
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ニュースでご覧の通り、エジプトで現在、政治の正常化を求める市民の気運が大きく高まっています。ベルリンの壁が崩壊した時に似て、現在、私たちは草の根からの革命を目撃しているのかも知れません。
エジプトでは、約30年前、時の大統領のサーダートが殺され、非常事態が宣言され、当時、副大統領だったムバーラクが大統領になりました。以来今日まで、非常事態宣言は解除されていません。つまり、非常事態が 30年継続していて、その中で、大統領が自分に都合のいいように法を作り変えている状態が続いています。
エジプトは、アラブの大義を裏切って、イスラエルと単独和平を結んだ結果、アラブ連盟から追放されましたが、そんなエジプト、つまりはムバーラク大統領の独裁制を、アメリカが全面的に援助してきました。そして、それに反対するエジプト人民の声や運動はずっと抑圧、弾圧されてきています。
本速報では「エジプトの一青年」と名乗る匿名の人物によるブログへの寄稿を邦訳して紹介します。これは、ブログサイトとして英語圏で最大手の一つ、blogspot.com に 2011年1月27日に投稿されたものです。
同筆者からの投稿は、これ限り、すなわちこの文章を投稿するためにブログのアカウントを取得して発表したものと見受けられます。そういう意味では、この投稿者が本当に現地人かどうかを確認する術はありません。1/27頃以降、エジプトからのインターネット接続が政府によって禁止された現状ではなおさらのことです。一方、エジプトでの反政府的な言動への弾圧の歴史を考えると、一市民が実名でこのような文章を発表するには決死の覚悟が必要なことは自明ですから、現実問題として匿名投稿になるのはむしろ当然、ある意味で真実味がある、とも言えます。
このブログ投稿は、世界に静かに広がっているようです。投稿の内容が真に迫っていて、かつ簡潔ながらよく練られた文章になっています。私ども TUP(有志)の心を打つものがありました。実際、文章で触れられている基本的な事実関係のうち確認できる部分は TUP有志で確認して、問題ないことを確かめました。無論、現地からの声である以上、確認できない部分が多いことはいたしかたありませんし、だからこそ価値があるとも言えます。
以下、同ブログ投稿を邦訳して、皆さんと共有します。
エジプト市民に近く自由と平安とが訪れることを強く願います。
〔前書: 坂野正明/TUP管理人、邦訳: 山崎久隆/TUP、TUP有志〕
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※凡例: (原注) [訳注]
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2011年1月27日 木曜日
世界への手紙
みなさん、
今日、私は皆様に、エジプトで本当はいったい何が起きているかを知らせたくて手紙を書いています。1月25日に火が付いたデモは、自分にふさわしい人生を送る権利を求める国内の青年たちによって組織されました。大統領を含む政府はそれを否定し、ムスリム同胞団のような反政府組織が行った行為だと主張しています。でも、いいですか、これはどこかの対立党派の行動ではありません。社会全体の行動です。理由は以下の通りです。
ホスニー・ムバーラク(今年83歳)は 1981年からエジプト大統領でした。それがいったいどのようなものか、私たちの身になって想像してみてください。ムバーラクは私と私の友人誰もが生まれる何年も前から大統領でした。私が小学生のときも、中学・高校のときも、大学生のときも、結婚したときも息子が生まれたときも、ムバーラクはずっと大統領でした。単にムバーラクだけが「私の人生まるごと」と同じあいだ大統領だっただけではなく、取り巻き連中までみなそうだったのです。アフマド・ファトヒー・スルール(今年79歳)は 1986年から大臣で、1990年からの 21年間ずっと議会の指導者[人民議会(下院)議長]でした。サフワト・エル=シャリーフ[現上院議長]は 1980年代から、他の者たちもみな、私たちが生まれる前から政府の中枢にいて、いまでもその地位にとどまったままです。
国の状態はどこもかしこも、ほとんどの人にとって悪化の一途をたどっていました。教育、報道、経済などすべてが間違った方向に向かっており、私たちが生まれたとき以来ずっとそうでした。一般のエジプト人がどんな生活をしているかにかかわらず、政府は独占企業がもっと利益を上げられるように「改革」してきました。それと同時に、1981年からずっと「非常事態宣言」が機能していて、必要と見なされれば誰でも、国家安全保障上の理由により裁判抜きで身柄を拘束することが認められてきたのです。さらに、選挙では不正が行われ、そのうえで、なお真実の声を発表するどのような表現形式を認めることさえ拒否しています。大学の学生組合の選挙にまで不正が行われ、骨の髄まで堕落しきっています! ありとあらゆる分野の指導者たち、知事、大学長、工場長さえもが現役か退役した将軍です。社会のあらゆるレベルでの腐敗はいうまでもありません。失業率は、特に若者の間であまりに高く、また貧困が蔓延して国民の半分以上が貧困ライン以下で暮らしています。ほかにもまだ、ここに書き切れないたくさんのことがあります。
けれど、いまこそチェンジの時です! 私たちは今までずっと警察や治安当局を恐れていました。裁判なしで私たちを拘禁し、拷問しても殺しても問題にならないことを知っていたからです。でも、もうたくさんだ! 私たちは待って、待って、いつかは正されると30年間むなしく待ちました。この前の議会選挙では、かつてない規模の不正が行われ、ムバーラクにさらに一期――あと 6年間か、あるいはかれが死ぬまで――大統領の任期を与えるお膳立てがされました。私たちは可能な限り平和的な手段をとろうとしましたが、自由声明に署名することさえ追放の理由とされ、追及されました。私たちに選択の余地はなかった。より良く生きること、子どもたちのためにより良い人生を用意することは、私たちの権利です。
だまされてはいけません。人々を動かしているのはどこかの野党やイスラーム主義者ではありません。社会全体が、なかでも特に私たち若者が動いているのです。私たちは平和的にデモをしていますが、政府はごろつきや悪党を雇って抗議者のあいだに潜入させ、問題を引き起こさせて、それをわたしたちのせいにしようとしています。政府は容赦なく私たちを叩き、ネットやメディアを検閲し、ほんものの銃弾やゴム弾、催涙ガスで攻撃し、何百という抗議者を拘禁したり多くの人たちを殺傷しています。これは本物の戦いで、しかしほとんど一方的な戦いです。私たちは警官が同胞であることを知っています。ただ「命令に従っているだけ」です。私たちはできる限り、どんな場合においても警官たちを傷つけるのを避けています。
親愛なるアメリカの仲間のみなさん
あなたがたの政府は30年にわたり、ムバーラク大統領に最大の支援を提供してきました。武器と催涙ガスで国家安全保障体制を支えています。米政府は、私たちの国に毎年 16億ドルに及ぶ資金を与えていて、それは腐敗したエジプト政府の中で主にさまざまな形の賄賂として使われています。あなたがたの「民主的な」祖国はイスラーム主義者を恐れるあまり、我々の政府を支援しています。いいですか、怖いものなどないんです。イスラーム主義者についてのあなたがたの見解は事実に反し、間違いだらけですが、その話はまた後日。私たちのリーダーを選ぶことは私たち自身の権利であるという一点において、あなたがたの支援を望みます。私たちを支援し、上院議員や下院議員にエジプト政府を支援するのをやめるように言ってください。私たちを支援し、自由はパンよりも重要であると世界に伝えてください。私たちを支援し、30年続いている政府を追放するのを手伝ってください。もしもあなたの孫たちが、いまと同じ支配者を目撃するとしたら、あなたがどのように感じるかをぜひ想像してください!
親愛なるヨーロッパの仲間の皆さん
あなたがたのリーダーはエジプトの状況を気にかけています。ムバーラクが腐敗していることを知っていて、それゆえに心配しています。わたしたちがひどい圧政の下にいることを知っていて、その状態が続くことを望んでいます。あなたがたのリーダーは、ローマ時代から、英国による最後の植民地支配が終わるまでずっと、エジプトを監視していました。けれども、自分たちの国を治め、自由がどれほど貴重であるかを自分たちの子どもに教えるのは、私たちの権利です。リーダーと政府を選ぶことは私たちの権利です。そして私たちを支持するのは、あなたがたの人道的責務です。あなたの国のリーダーに対して、私たちを支援すると言ってください。エジプト大使館に行って、あなたの支持を示してください。私たちの大義について人々に話し、そして、私たちが、自分たちの権利、生まれてこのかたずっと抑圧されてきた自分たちの権利を手に入れようとしているだけであることを知らせてください!
親愛なる世界の皆さんへ、
これは、あなたが本当は何者であるかを試される瞬間です。あなた自身の真実の瞬間です。あなたの良心はまだ生きていますか。あるいは、あなたは人間性よりも利害関係を重んじますか? あなた自身の尊厳を証明し、私たちが人間性の回復を要求することを手伝ってくれるでしょうか。それとも、戦車が我々を轢(ひ)くのを、脇に立ってただ見ているだけでしょうか? それはあなたが決めることですが、覚えておいてください。それはあなたが一生抱えていくことになる何かであり、いつかあなたはこの件で子供たちと正面から向き合わなければならないかもしれません。
お声が聞こえるのを楽しみにしています。
[「皆さんのご意見をお待ちしております。」の方がいいのでは?]
エジプトの一青年より
【More・・・】
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原文: "A Letter to the World" by An Egyptian Youth
URI: http://jan25egy.blogspot.com/2011/01/letter-to-world.html
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本速報は、TUPウェブサイト上の以下のURIに掲載されています。
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?content_id=906
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TUP速報 http://www.tup-bulletin.org/
配信責任者:坂野正明
TUPへの問い合わせ:
http://www.tup-bulletin.org/modules/main/index.php?content_id=8
過去の TUP速報:
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/
■『冬の兵士──イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実』
(TUP翻訳、岩波書店、2009年8月発売)
http://www.tup-bulletin.org/modules/main/index.php?content_id=32
■『ガザ通信』
(岡 真理、TUP翻訳、青土社、2009年3月発売)
http://www.tup-bulletin.org/modules/contents/index.php?tag=%E7%A9%BA%E8%A5%B2%E4%B8%8B%E3%82%AC%E3%82%B6%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E5%A0%B1%E5%91%8A
■TUPアンソロジー『世界は変えられる』 (七つ森書館)
JCJ市民メディア賞受賞
http://www.pen.co.jp/syoseki/syakai/0480.html
■『世界は変えられるII』も好評発売中
http://www.pen.co.jp/syoseki/syakai/0375.html
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パレスチナ連帯・札幌 代表 松元保昭
〒004-0841 札幌市清田区清田1-3-3-19
TEL/FAX : 011-882-0705
E-Mail : y_matsu29@ybb.ne.jp
振込み口座:郵便振替 02700-8-75538
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日本も50年以上も従米政権の自民党に支配され続け、民意の力でやっと政権交代が実現したかと思ったら、今度は、米国が新政権の総理を換えて新政権を乗っ取ってしまった。日本の二の舞にならないように、エジプトは、米国に注意したほうがいいだろう。この米国のやり方は、下の記事でも明らかだ。
The Protest Movement in Egypt: "Dictators" do not Dictate, They Obey Orders
by Michel Chossudovsky
『マスコミに載らない海外記事』が前述の記事を和訳し、とても貴重な情報を共有してくださっているので、その一部を紹介したい。
(前略)
結びの言葉
ホスニ・ムバラク解任は、ここ数年間アメリカ外交政策の計画上にあった。
政権取り換えで、意味がある政治的変化が起きたかのような錯覚を与えつつ、連続性を確保することができる。
エジプトに対する、ワシントンの狙いは、"抗議運動をハイジャック"し、ホスニ・ムバラク大統領を、新たな従順な傀儡国家元首で置き換えることだ。
ワシントンの狙いは、大国の権益を保持し、エジプト国民を貧困化させてきたネオリベラル経済戦略を維持することだ。
ワシントンの観点からすれば、政権取り換えの為に、もはやアメリカ帝国主義の全盛期のように独裁主義的な軍事政権を就任させる必要はない。左翼を含め、諸政党を取り込み、市民社会団体に資金援助をし、抗議運動に潜入し、国政選挙を操作することで実現可能なのだ。
エジプトにおける抗議運動に関し、1月28日のYoutubeのビデオ放映でオバマ大統領は語っている。"政府は暴力に訴えるべきではない"。より根本的な疑問は、その暴力の根源が何かということだ。
エジプトは、イスラエルに次ぐ、アメリカ軍事援助の最大の受益者だ。エジプト軍は、ムバラク政権の権力基盤だと見なされている。
"自由市場"改革と、中東の軍事化と相まって、20年以上エジプトとアラブ世界に押しつけられてきたアメリカの政策が、国家による暴力の根本的原因なのだ。
アメリカの狙いは、抗議運動を利用して、新政権を据えることだ。
民衆運動はエネルギーの方向を変えるべきだ。アメリカと"独裁者"との関係を明らかにすべきだ。アメリカの政治傀儡は追放すべきだが、"本当の独裁者"を標的にすることを忘れてはならない。
体制変革プロセスの排除。
ネオリベラル改革の解体。
エジプトとアラブ世界の米軍事基地の閉鎖。
本当に主権をもった政府の樹立。
Michel ChossudovskyによるGlobal Research記事
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フェイスブック、ツイッターによる革命だ!と快哉を叫べれば嬉しかろうが、そうは問屋がおろさない。帝国は周到。しっかりリスク回避策をしかけてある。日本ですら、自民党と民主党に、棲み分けている兄弟もいる。
インターネット自体、そもそもアメリカ国防省によるプロジェクト。自分たちが作ったツールで、自分たちを崩壊させる軍隊など、世界に存在するまい。イランの核施設に放たれたワームのように、逆の使い方なら、もちろん、あるだろう。ウエブや、ブログを書いている人間の正体や、趣味、嗜好を追跡したり、通報したりは、日常茶飯事だろう。フェイスブックも、ツイッターも、軍ではなくとも、アメリカ発のソフト。
日本の学生運動エリート、後でしっかりアメリカに留学し、先生におさまっていた・いる人がある。内閣や都庁に居すわる人も。中国の有名反体制運動家もアメリカで生活していたりする。彼等にとって、帝国は天国?
アメリカ留学された、この国の官庁・政治家エリートの皆様は、エジプトの活動家諸氏とは違う、トロイの木馬でない、良いお仕事をしておられるのだろうか?
宗主国、この模範的属国は、ますます手放せない。
火山は頻繁に爆発するが、民衆は決して爆発せず、66年にわたり、黙々と莫大な戦争資金・みかじめ料を献上し、侵略基地を受け入れる、世界に一つだけの国。戦闘機の飛行訓練、迷惑だと訴えても、はじかれる全体不幸社会。
この国に必要なものは、エジプトや、チュニジアと同じだろう。
体制変革プロセスの排除。
ネオリベラル改革の解体。
沖縄と本土の米軍事基地の閉鎖。
本当に主権をもった政府の樹立。
だが実現するのは、平成の売国・壊国。TPP加盟、消費税増税、比例定数削減・憲法破壊。思想的・経済的な焼け野原、目の前に見える気分。
(後略)

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