2009.06.11 (Thu)
第三者委員会が報告書で検察に説明責任を求める

カナダでは大学のキャンパスで子供たちのためのサマーキャンプが行われる
先日の党首討論で鳩山代表が触れていた「政治資金問題を巡る政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会」(飯尾潤(座長) 政策研究大学院大学教授、郷原信郎(座長代理) 名城大学教授、弁護士、櫻井敬子 学習院大学教授、服部孝章 立教大学教授)の報告書、本篇(623kb)と資料篇(2,228kb)が10日に民主党へ提出された。検察に説明責任を求め、偏向報道を批判し、民主党の危機管理や党としてのあり方を提案する内容だ。覚書としてその内容のまとめとこれに関するニュース記事などを紹介する。
(追記 2010年1月18日:残念ながら「政治資金問題を巡る政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会」へのリンクは切れてしまったようだ。恐らく、現在の見解と違ってきたからかもしれない。)
本篇(623kb):
政治資金問題を巡る 政治・検察・報道のあり方に関する 第三者委員会 報告書
2009 年 6 月10 日(pdf ファイル)
資料篇(2,228kb):
政治資金問題を巡る政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会 報告書
資料編
2009 年 6 月10 日(pdf ファイル)
本篇は、48ページ、資料篇は148ページと膨大な数に及んでいるが、郷原氏のテレビや論文での主張がかなり反映されている報告書となっているので、彼の意見を熟知している人なら、あっという間にすんなりと読めると思う。
内容を一言でいうのは難しいが、大雑把に言えば、東京地検の谷川恒太次席検事が、政治資金規正法違反の起訴を行った3 月24 日に述べた下記の意見を元に、その言葉の真偽を検証することが発端となっている。
谷川氏は、「ダミーの政治団体の名義を利用するという巧妙な方法により、多額の寄附を受けてきた事実を隠すため、という本件犯行の動機、犯行に至る経緯、犯行態様についての事情も考え合わせると、政治資金規正法に照らして看過しえない重大かつ悪質な事案と判断した」と述べた。
【More・・・】
『videonews.com』の第三者委員会 会見(70分)によると、第1章、第5章は郷原氏が担当され、第2章、第3章は櫻井氏が原案を書かれたそうだ。報告書本篇は次のように構成されている。
注.色文字は転載文。
【目次】
はじめに 当委員会の目的と課題..........................................................................................................1
第1 章 検察の捜査・処分をめぐる問題................................................................................................ 3
第2 章 政治資金規正法のあり方について..........................................................................................12
第3 章 検察・法務省のあり方について.............................................................................................. 16
第4 章 報道のあり方について.............................................................................................................. 21
第5 章 政党の危機管理の観点からの分析........................................................................................32
第6 章 政治的観点から見た民主党の対応....................................................................................... 41
おわりに..................................................................................................................................................... 46
(補論)本件政治資金問題に関連する法解釈及び事実関係についての検討結果.....................48
まずは、第1章の検察の捜査、処分をめぐる問題点を指摘する。
1.本件について政治資金規正法違反が成立するのか否か
2.仮に違反であるとしても、同法違反の罰則を適用すべき処罰価値ないし事案の重大性・悪質性が認められるのか
3.被疑者を任意出頭当日に逮捕するという捜査手法を用いたことが妥当なのか否か
4.同じ政治団体名義で同様の寄附が自民党議員に対しても行われていたのに、小沢氏に関連する政治資金規正法違反の事実のみを立件し、逮捕・起訴を行ったことが偏頗な捜査ではないのか
上の問題点に対する結論:
(11ページ、「3.小括」より)
民主党代表であった小沢一郎氏の公設秘書の大久保氏を逮捕・起訴した政治資金規正法違反事件の捜査・処理に関しては、そもそも違反が成立するか否か、同法の罰則を適用すべき重大性・悪質性が認められるか、任意聴取開始直後にいきなり逮捕するという捜査手法が適切か、自民党議員等に対する寄附の取扱いとの間で公平を欠いているのではないか、など多くの点について疑念がある。このような捜査・起訴のために、総選挙を間近に控えた時期に野党第一党党首を党首辞任に追い込むという重大な政治的影響を生じさせたことに関して、検察は説明責任を負っている。
以下、その理由をまとめた箇所を抜粋する。
1.(6ページ、「(2) 寄附をめぐる実態との関係」より)
このように、政治資金規正法の解釈としては、「寄附をした者」とは、基本的に、「寄附者として金銭の交付や振込など外形的な行為を行った者」と解するべきだと考えられるが、このように解したとしても、例えば、寄附名義の団体、資金の拠出者から政治団体に金銭や利益を供与するための単なる「トンネル」のような存在で、寄附行為者としての実体がまったくない場合には「行為者」と認められず、資金の拠出者が寄附者となる場合もあり得る。そういう意味で、実態とまったく無関係に判断できるわけではない。
本件は、刑事事件として起訴された事案なのであるから、実態に基づく判断は、最終的には、公判手続の中で証拠による事実認定に基づいて行うほかない。しかし、実態に基づいて検討を行うための一つの手がかりとなる資料がある。それは、西松建設が2009 年5 月15 日に公表した内部調査委員会による調査報告書である。
同報告書に記載された政治団体の実態及びその政治資金の寄附の実態によれば、これらの団体を、資金の拠出者から政治団体に金銭や利益を供与するための単なる「トンネル」のような実体のない団体とは認め難い。「寄附をした者」が政治団体ではなく西松建設であるとの検察の主張立証には相当な無理があり、「寄附をした者」を政治団体と記載したことは虚偽記入罪には該当しないのではないかと思われる。
2.(6~8ページ、「2-2.事案の重大性・悪質性」より)
しかし、本件が、東京地検次席検事の説明のように、果たして、「巧妙な方法」によって
多額の献金を「隠してきた」事案と言えるであろうか。以下のような理由から、本件は重大
かつ悪質な事案とは言い難い。
ア 「表の献金」であること(内容省略)
イ 政治団体名義での寄附の動機(内容省略)
ウ 「巧妙な方法」と言えるか(内容省略)
これらの点から考えると、本件では、これらの政治団体の名義で寄附が行われたことが「巧妙な方法」とまでは言えず、西松建設からの寄附であることを「隠す」効果も希薄だったと考えられる。むしろ積極的に隠そうとするのであれば、むしろ、西松建設との関係が他には知られていない取引先業者を通しての迂回献金の方が効果的だったと考えられる。仮に違反と判断されるとしても、その悪質性は低いと言うべきである。
3.(9ページ、第2パラグラフより)
このように、そもそも罰則適用を行う必要についてすら疑問な事件について、任意聴取を開始した当日にいきなり逮捕するという捜査手法は、公設秘書を逮捕することで政治的影響を生じさせることの方に主目的があったのではないか、と疑われても致し方ない面がある。しかも、大久保秘書は、逮捕後、引き続き勾留され、起訴後2ヶ月以上経った5月26日にようやく保釈された。このよう長期間の身柄拘束がいったいいかなる理由によるものなのか、検察には十分な説明を行う必要があろう。
4.(12ページ、第5パラグラフより)
これらの事実に照らせば、「新政治問題研究会」などの名義での西松建設側からの与野党の政治家への寄附に関する政治資金規正法違反の立件に関して、小沢氏側への寄附だけを特別に取り扱う合理的な理由があるとは考えにくい。
以下、各章の印象にのこった文を抜粋する。
第2 章 政治資金規正法のあり方について
(15ページより)
現行法は、政治資金規正法違反行為に対する制裁として罰則を中心に規定している。罰則を置くということは刑罰権の発動によって行為者に制裁を加えるという制度設計であり、処罰対象者が国会議員である場合には、立法府の活動に対する警察・検察当局による権力的介入を立法者みずからが容認していることを意味している。
しかしながら、本来、政治資金については政治家が自ら律するべき問題であるという原点に立ち返ると、自らの不始末は自ら糺すという見識を持って、制裁措置についても議会自身がこれを発動するような仕組みを工夫することが望ましい。サンクションのあり方は多様であり、たとえば、現行法上認められている公民権の停止は刑罰を前提とするものであるが、刑罰と切り離した形で公民権の停止をひとつの制裁手段として整備することはもとより可能であるし、刑罰としての罰金に代えて非刑罰としての制裁金を新規に導入するなど、罰則以外の効果的な制裁措置の導入を真剣に検討すべきである。安易な罰則への依存は、法執行を警察・検察当局に依存することと同義であり、立法技術の観点からみても稚拙というほかない。具体的には、立法府の中に独立性の保障された機関を設けるなど、外国の例も参考に、政治資金の扱いに関するルール設定、制度設計について、国会において新機軸の議論が活発に行われることが期待される。この問題は、与野党相携えて、国権の最高機関としての見識を示すことが国民の期待にも沿うものであろう。
第3 章 検察・法務省のあり方について
(16ページより)
西松事件は、検察官による逮捕、公訴提起という「公権力の行使」に端を発した事案であり、第1 章でも触れられたように、その前提とされた被疑事実について法律解釈上の疑問が提示され、また事案の重大性・悪質性の評価や捜査手法を踏まえ、検察による権限行使が法律の規定に照らし適切であったといえるかどうかが問題となる。また本件では、政権交代の可能性のある総選挙を間近に控えたタイミングにおいて、公権力の行使が野党第一党党首の第一秘書に向けられたものであったため、それが有権者の政治的選択に少なからぬ影響を与えたことは否定できない。そのため、民主主義社会における検察の権力行使のあり方、関連して、権力行使にかかる説明責任のあり方について、問題意識が喚起された。
今日、様々な場面で説明責任が問われることが多いが、もともと、わが国で「説明責任」という概念が法律上登場したのは、1999年に制定された行政機関情報公開法1条においてのことである。法律上は、説明責任とは、政府がその諸活動を国民に説明する責務のことをいい、国民主権原理に根拠を有するものとされている。それは、主権者たる国民が国政に関する諸問題について意思決定を行うにあたって必要十分な情報を、政府自身が適時・適切に提供する責務を負っているということであり、政府の憲法上の責務と考えられている。したがって、政府の一部局である検察庁・法務省がその責任を負う立場にあることに疑いをはさむ余地がないことを、まず確認しておく。なお、刑罰権の行使にあたっては、検察庁のみならず、刑罰法規の解釈・運用について法務省刑事局が密接に関与していることから、刑罰権の発動を論ずるにあたっては、検察庁と法務省の双方を念頭に置く必要がある。
第4 章 報道のあり方について
(23ページ)
3 月8 日付産経新聞に記載された「小沢氏 監督責任も 起訴なら失職の可能性 政治資金規正法」との記事4は、政治資金規正法の誤った解釈による誤報であり、この記事を読む読者に大きな誤解を与えたといえる。
政治資金規正法25条2項は「政治団体の代表責任者が当該政治団体の会計責任者の選任及び監督について相当の注意を怠ったとき」に罰金刑に処すると定めているが、この「及び」は選任についての相当の注意と監督についての相当の注意の両方を怠ったことを要件とする趣旨であり、「監督」についての相当の注意を怠っただけで罰金刑に処せられることはなく、ましてや公民権停止で失職する可能性もないことは明らかである。上記産経新聞の記事は、大久保氏が東京地検に逮捕された後、同地検が小沢前代表を聴取するなどと報じられる中で、小沢前代表の刑事責任追及の可能性と、それによる議員失職の可能性について国民に重大な誤解を与えるだけでなく、公職を辞職することで起訴猶予処分となって議員辞職を免れる余地があると示唆することで、小沢前代表自身の進退の判断にも重大な影響を与えかねないものである。
このように「監督責任」を見出しに掲げ、「監督責任ミスが認定され、起訴された場合には、小沢氏は最終的に衆院議員を失職する可能性も出てくる」と述べた上で、故土屋義彦埼玉県知事が同様の事件で会計責任者に対する監督責任を認め、知事を辞職したことで、反省の情を認められて起訴猶予処分になったことにまで言及した同記事は、読者あるいは有権者に対し誤った政治判断を与えるだけなく、故土屋知事の事例を引き合いに出して、小沢前代表の進退にも影響を及ぼそうとする意図も窺われるものであり、NHK の報道と同様に、本件の一連の中で際立って問題を含む記事であった。また、この記事には「捜査関係者」といった語句が頻繁に登場しているが、その記述の通りであるとすれば、検察が報道機関をあたかも「広報機関」のように利用して、世論の誘導や小沢前代表の進退や捜査への対応に影響を及ぼそうとした疑いもある。上記のように、法律上は会計責任者に対する監督ミスだけで罰金刑に処せられることはなく、ましてや議員失職はあり得ないのであり、まったくの誤報である。産経新聞は徹底した報道検証が必要であると考えられるが、当委員会から書面で質問
を行ったにもかかわらず、産経新聞からは本報告書執筆時点で、いまだ回答はない。
第5 章 政党の危機管理の観点からの分析
(40ページより)
これまで述べてきたように、今回の事件に対する民主党及び小沢前代表の対応は、政党の危機管理対応という観点からは問題がある。発端となった検察捜査自体に第1 章で述べたような多くの疑念があり、また、それに関するマスコミ報道にも第4 章で述べたような問題があることは確かであるが、政党としての危機管理に失敗した結果、政党支持率の低下、小沢代表(当時)の辞任を求める世論の高まりを受けて総選挙を目前に控えた時期の代表辞任という事態に至ったことは厳然たる事実であり、それは、多くの国民の支持を受け、その期待を担う政党にとって反省すべき事柄である。民主党にとっては、その危機管理の失敗を、今後、危機管理対応のみならず党運営全般に活用していくことこそが、今回の事件を乗り越えて国民の信頼を回復するための最良の手段である。
危機管理の失敗の最大の原因は、今回の事件に関して、小沢前代表の政治家個人としての当事者的立場と、政党の党首としての立場とを切り離すことができず、両者の立場が渾然一体となったまま対応したことである。そのため、検察の捜査・起訴に関する問題やマスコミ報道の問題などがあっても、それらの問題を客観的な観点から的確に指摘することができず、事態の一層の悪化につながった。
問題は、なぜ、当事者の立場と民主党の党首としての立場を切り離すことができなかったのか、ということである。危機管理の失敗の根本原因は、多くの場合、組織の日常の中にある。民主党の日常的な党活動の体制において、強烈な個性を持ったリーダーの指導力と、党としての判断や対応を客観化するシステムとの調和という面で問題がなかったのか、という観点から、今回の事件における危機管理の失敗の原因を検証してみることが必要であろう。
第6 章 政治的観点から見た民主党の対応.
(41ページ)
本章の目的は、民主党の求めに応じて、「小沢前代表および民主党の対応、説明責任について検討する」ことである。今回の政治資金規正法違反事件に関連して、小沢前代表や民主党の「説明責任」を問う声は根強いが、具体的にどういう説明を求めているのかについて、さまざまな論点が錯綜し、小沢前代表や民主党が対応に苦慮したようにも見られる。そもそも、当委員会の設置自体、そうした戸惑いの現れとも見ることができる。そこで、本章では、広く国民の支持を獲得しようとする政党がとるべき政治戦略の観点から、小沢前代表及び民主党の対応を検討し、党内運営のあり方についての方策を示す。
政党や政治家は広く国民の支持を獲得することを目的とする存在であり、問題がなければ、関心を持たれなくてもよい、というわけにはいかない。その意味で、政党や政治家は、積極的に自己の立場をアピールし続けなければならないのである。不利な状況においても、単に疑惑を解消するだけではなく、説明を通して、国民のなかに共感を拡げるという積極的な姿勢が欠かせない。その点で、あまりに防衛的になるばかりでは、事態を有利に打開することにはならないことに注意が必要である。
おわりに
(46ページより)
半年以内に総選挙が行われるという時期に、政権獲得をめざす野党第一党が、党首の政治資金問題による検察の強制捜査によって深刻な打撃を受け、国民の政権選択にも大きな影響を及ぼした今回の問題は、日本の民主主義の基盤そのものに関わる多くの重要な問題を提起することとなった。
今回の政治資金規正法違反による検察捜査については、第1 章で述べたように、そもそも違反が成立するか否か、同法の罰則を適用すべき重大性・悪質性が認められるか、任意聴取開始直後にいきなり逮捕するという捜査手法が適切か、自民党議員等に対する寄附の取扱いとの間で公平を欠いているのではないか等、多くの点について疑念がある。そのことが、政治活動と政治資金の関係に関して公開のルールを定める政治資金規正法の制度の枠組み、運用の在り方は、現在のままで良いのか、不当な捜査権限の行使や起訴に対して検察組織の外からのチェックシステムが設けられていない現在の制度に問題はないのかなど、第2 章及び第3章で述べた問題を提起することとなった。
また、第4 章で述べたように、今回の政治資金問題に関する報道のあり方には、情報源の偏り、公正さに欠ける報道内容などの問題があった。それによって、主権者たる国民による適切な判断の前提となる情報を提供するという報道機関の存在意義が、根本的に問われることになった。
一方で、このような検察の捜査・起訴によって打撃を受けた民主党の側にも、小沢前代表の政治家個人としての当事者的立場と、政党の党首としての立場とを切り離すことができず、両者の立場が渾然一体となったまま対応したために、事態を客観的に把握し、党として適切に問題を指摘することができなかったことなど、政党としての危機管理の面の問題があった。また、広く国民の支持を獲得すべき政党の党内運営のあり方にも、情報発信のまずさなど政治戦略上の問題があった。それが、代表の政治資金に関わる問題で民主党が政治的に窮地に立たされる大きな原因になった。
民主党は、本報告書で述べた政治資金規正法の枠組み、検察のあり方、マスコミ報道などに関する問題などを的確に認識し、今後の党としての政策立案、制度論に活かしていくとともに、今回の問題を教訓として、党運営、党の組織に関する問題についても改善を図っていくべきである。
今回の問題の教訓を活かすためには、民主党が政権交代を阻止しようとする検察の意図的な権限行使、マスコミ報道の被害者的立場にあるかのように受け止めることは適切ではない。今回の問題で露呈した様々な問題は、政治資金制度、検察制度、メディアに関する制度などに関する構造的な問題に根ざしたものであり、今、重要なことは今回のような事件で政党政治に対する脅威が生じさせないようにするために、その構造自体を改めることである。そのためには、むしろ政治的には対立する現在の政権政党などと協力しながら、政党間の共通の課題として、超党派的な立場から取り組むのが望ましい。
民主党は、今回の一連の問題を、政権獲得をめざす政党に降りかかった災難ととらえるのではなく、民主主義国家における政治・検察・メディアの関係に関する重要な問題を顕在化させ、今後取り組むべき課題を認識する契機と受け止めるべきである。そのような前向きの取り組みを行うことができるかどうか、そこに政権を担い得る責任政党としての真価が問われていると言えよう。
結論の中で、「小沢前代表の政治家個人としての当事者的立場と、政党の党首としての立場とを切り離すことができず、両者の立場が渾然一体となったまま対応したために、事態を客観的に把握し、党として適切に問題を指摘することができなかったことなど、政党としての危機管理の面の問題があった。」とあるが、具体的に何がいいたいのかよくわからない。もう少し具体的に書いて欲しかった。もっと早く政党の党首を辞任するべきだったということが言いたいのなら、それは違うと思う。
何度も言うように小沢代表が辞任したのは西松建設献金問題の引責辞任ではなかった。もっと早い時点で辞任していたら、そらみたことかと西松問題が原因で辞任したように思われていたに違いない。
又、第6章の「1-3.検察に関する発言の問題」(42~43ページ)に書かれているような検察批判を控えるべきとの見解には同意しかねる。
強制捜査の時期などから、政府の一部に属する検察が、現政権側の利益のために、野党に打撃を与えるための捜査・起訴ではないかという疑いについては、あってはならないことではあるが、理論上は排除することはできない。
そこで、当事者がそのような可能性に思い至って、それに憤慨するのを否定することまではできない。しかしながら、法的秩序の安定性を考えれば、司法に対する政治的介入を意図していると誤解されかねず、問題が大きい。
その意味で、当事者的立場にある政治家が、総選挙の時期とからめて検察の措置を批判し、さらに進んで、検察のあり方そのものを直接批判することは、控えるべきであり、慎重な言い回しが求められる。総選挙の結果次第では、内閣総理大臣になることが予想される民主党の代表として、検察の独立性に疑問を呈するのは、政権の座に着いたら、逆に検察の活動に介入するのではないかという疑いを抱かせかねないからである。
会見の記録などから、小沢前代表もこの問題の所在を理解していると推測されるが、秘書逮捕直後の会見では、やや感情的になったという印象のある発言があり、それが広く報道されたのは反省点である。
もちろん、第1 章で述べたような問題があるので、検察の措置に対抗するために、当事者的立場にある政治家が、検察の立場とは違う立場を取っていることを説明することは必要である。
これに関して、民主党、とりわけ幹部は、先に述べた当事者的立場にある政治家と政党の立場を区別するという観点から、検察批判的な発言を抑制することが、より強く求められる。ところが、幹事長など党の幹部によって「国策捜査」という言葉が使われ、また検察に圧力を加えると誤解されかねない発言が相次いだのは、適切ではなかった。
ただ、検察の措置に問題があるということを、全く論じていけないわけではなく、そうした問題の所在に人々の関心を向けさせる発言は認められる。政治的有効性からすれば、民主党関係者が抑制の効いた発言を続けるなかで、第三者の間から、検察の措置に関する批判がわき起こるといった事態の方が、より民主党にとって、好ましい事態であったと考えられる。
次に、郷原氏もよく取り上げていらしたが、本篇第4章でも批判されているNHKと産経の捏造記事を転載する。
(本篇30ページより)
◆資料: 2009/03/24 23:50-24:30 NHK 総合テレビ「きょうのニュース&スポーツ」
(一部) 西松建設事件 起訴の小沢代表秘書 一転して虚偽記載認める供述
西松建設の政治献金をめぐる事件で政治資金規正法違反の罪で起訴された民主党の小沢代表の秘書が、東京地検特捜部の調べに対し、「西松建設からの献金だと認識していた」と、うその記載を認める供述をしていることが関係者への取材でわかりました。小沢代表の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で公設第一秘書の大久保隆規被告は陸山会と小沢代表の政党支部が実際には西松建設から合わせて3500 万円の献金を受けたのに、OB の政治団体からの寄附だと、収支報告書にうその記載をしたとして、今日、政治資金規正法違反の罪で起訴されました。大久保秘書は逮捕後、東京地検特捜部の調べに対し、「西松建設の献金とは認識していなかった」と不正を否定していましたが、関係者によりますと、最近になって、「献金は西松建設からだと認識していた」と、うその記載を認める供述をしているということです。特捜部は、西松建設の公共工事の受注と、政治献金とのかかわりについて、引き続き捜査を進めるものとみられます。
小沢氏監督責任も 起訴なら失職の可能性 政治資金規正法
(産経 2009.3.8 01:39)
(転載開始)
小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部が小沢氏本人にも規正法違反の疑いがあるとみていることが7日、捜査関係者の話で分かった。規正法は政治団体の代表者に、会計責任者への監督責任について罰則を設けており、これに違反する疑いがある。特捜部は政治資金収支報告書の虚偽記載への関与の有無の解明と並行して、監督責任についても調べを進めるもようで、監督ミスが認定され、起訴された場合には、小沢氏は最終的に衆院議員を失職する可能性も出てくる。小沢氏への参考人聴取でも、監督責任について確認するとみられる。
地検によると、西松建設がダミーにしていた政治団体は、「新政治問題研究会」(新政研)と「未来産業研究会」(未来研)。陸山会の会計責任者で小沢氏の公設秘書、大久保隆規容疑者(47)は平成16年3月~19年3月、西松から受領した2100万円を新政研と未来研からの献金とする虚偽の記載を、政治資金収支報告書にするなどした疑いが持たれている。
規正法は、政治団体の代表者が、会計責任者の選任と監督について相当の注意を怠っていた場合、50万円以下の罰金を科すと規定している。起訴されて規正法違反罪で罰金刑になると、裁判官の判断によっては公民権が停止され、被選挙権を失う。国会法の109条は、現職の衆院議員が衆院議員選挙の被選挙権を失った場合、自動的に失職すると規定している。
特捜部は15年、元参院議長で埼玉県知事だった故土屋義彦氏の資金管理団体の虚偽記載事件で、会計責任者だった土屋氏の長女が起訴された際に、土屋氏から事情聴取。土屋氏は監督責任を認め、特捜部は土屋氏の監督ミスを認定した。ただ、土屋氏は知事を辞職したことなどから、特捜部は「反省の情がみられる」として起訴猶予処分とした。
捜査関係者によると、特捜部では、大久保容疑者が西松側に直接、献金を要求した上、金額などを具体的に指示していた悪質性を重視。12年から長期間にわたり、大久保容疑者に会計責任者を任せていた小沢氏の監督責任は、決して軽くはないとみているもようだ。
この第三者委の捏造記事の指摘に対して、産経からは、全く何の説明も得られず、全く筋違いもはなはだしい記事を書いて、馬鹿のひとつ覚えのようにいまだに民主党の「説明責任」を迫っている。ここまで来ると、意図的に説明責任を回避している上に、報道機関としての公平なバランス感覚を失っているとしか言いようがない。これでは、購読者も急減するはずだ。
(転載終了)
最後に、この報告書を受けて、メディアの反応を紹介したい。
第三者委の報告についての産経の記事は、捏造記事については何の説明もなく、いまだに、民主党の説明不足としている。
【主張】民主党第三者委 「形式犯」決めつけは残念
2009.6.11 03:11
(転載開始)
西松建設の違法献金事件で民主党が設置した外部有識者による「第三者委員会」が提出した報告書は、小沢一郎代表(当時)の公設第1秘書を政治資金規正法違反で逮捕、起訴した検察捜査に強い疑問を提起した内容だ。事件に関するマスコミ報道のあり方も厳しく批判している。
だが国民の多くが疑問を感じたのは、小沢氏がいかなる目的でゼネコン側から多額の献金を受けていたか、などだ。第三者委は「実態の究明を目的とする機関ではない」と釈明するが、こうした疑問に迫ろうとする姿勢が報告書から読み取れないのは残念だ。
これで説明責任が果たされたことにはなるまい。民主党自体が今後、どう自浄能力を示すかが残された宿題となろう。
(以下省略)
(転載終了)
上の産経の記事で「国民の多くが疑問を感じている」とされている小沢氏が献金を受けた目的だが、その献金の使い道はすでに小沢代表は、記者会見を開いて、公開したいが、事務所に強制捜査が入った時に書類をほとんど持って行かれたので、説明するすべがないと「第三者委員会」のヒアリングで答えている。
小沢氏の聴取要旨=民主第三者委(時事通信 6月10日
(転載開始)
民主党の「第三者委員会」が5月20日に行った小沢一郎代表代行からのヒアリング要旨は次の通り。
-党代表を辞任したが。
政治資金の処理について一点の曇りもない。しかしこのまま代表の座にいるよりも政権交代がより確実になるのではないかと考え、辞任を決断した。代表選が公正に行われ、より強固な挙党態勢ができたことは本当によかった。
-代表を辞めても説明責任はなくならないとの指摘もある。
代表のままで民主党が政権を取れば首相になるが、辞任した以上それはない。重い決断を行ったことで、やるべきことは十分にやったと思っている。
-政治資金の使い道を説明すべきでは。
以前、記者会見を開いて、事務所費について電話代や切手代に至るまですべて領収書を付して公開した。今回も同じようなことをすればいいと言われるかもしれないが、事務所に強制捜査が入った時に書類をほとんど持って行かれたので、説明するすべがない。
-企業・団体献金の全面禁止を提唱したが。
企業・団体献金は何も問題だとは思っていない。しかし、今回の事件で、当事者も予測できない形で問題が生じないよう仕組みを考える必要があるのではないかと思うに至った。
-秘書逮捕翌日に検察を批判したが。
いささか感情的になっていたかもしれないが、決して間違っていたとは思わない。検察権力の行使の仕方によっては政治に大きな影響が生じてしまう。何らかの公正なチェックシステムをつくることが重要だ。
-なお説明不足との見方も出ると思うが。
政治資金の公開に他の政治家以上に力を注いできたにもかかわらず、私だけが説明責任を果たしていないと言われることが全く理解できない。むしろ説明責任を果たすべきは検察やマスコミの方だ。(2009/06/10-23:02)
((転載終了)
第三者委員会の報告書について、上述の産経にもあったように、小沢前代表を悪者に仕立て上げた張本人である時事通信や読売も、この報告について、さっそく偏向した記事を書いている。
時事:小沢氏の説明不十分=東京地検捜査「多くの疑念」-第三者委報告
「報告書は民主党の対応について「危機管理の観点から問題があった。失敗の最大の原因は、小沢氏の政治家個人としての立場と政党党首としての立場を切り離せず、混然一体となったまま対応したことだ」と指摘。小沢氏に関しては「どういう目的で政治資金が使われるのか説明し、もっと積極的にマスコミに訴えかける姿勢があってもよかった」と対応を批判した。」
読売:小沢氏に一定の理解、検察・報道に問題…民主第三者委
「報告書は、民主党の対応について、小沢代表代行(前代表)の「政治家個人としての立場」と「党首としての立場」を切り離さず、混然一体として対応したことが事態の悪化を招いたとして、「政党の危機管理対応という観点から問題があった」と総括した。」
きっと政府から、原稿に「小沢代表代行(前代表)の「政治家個人としての立場」と「党首としての立場」を切り離さず、混然一体として対応したことが事態の悪化を招いた」の一文を入れよという指令があったのだろう。全くミトコンドリアのように単細胞化したマスゴミの論調には笑える。
関連記事:
民主党:第三者委員会 『 報 告 書 』 に思うこと、。。。(資料)

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考えは多種多様、でも、政権交代を目指す心意気は一つのブログリストをとらちゃんが作ってくださいました。
【政権交代】を目指すブログリスト
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モノでもアートでも、薄っぺらいのが蔓延るようになって久しいですが、作り手に独自の「こだわり」や「思い入れ」が乏しいんでしょう。メディアのニュース/記事もまたしかり、という気がします。それは大企業での組織的な作業になるほど酷くなって、気にするのは「出来上がりの体裁」ばかり。そんな根無し草を続けていれば、カンタンに波にさらわれてしまうのも当然だし、その後は沈むだけでしょう。
T_2nd |
2009.06.12(金) 07:03 | URL |
【編集】
この報告書の各紙のニュース見て期待はしてませんでしたけど、予想通りっていう感じですね。自浄作用がないというか・・・
ひふみ |
2009.06.11(木) 23:27 | URL |
【編集】
scottiさま、
NHKからして、捏造報道を何度も繰り返し伝えていたのですから、日本のメディアが国民の信用をなくすのは当然ですね。読売、産経、NHK、フジは早くつぶれて欲しいです。
NHKからして、捏造報道を何度も繰り返し伝えていたのですから、日本のメディアが国民の信用をなくすのは当然ですね。読売、産経、NHK、フジは早くつぶれて欲しいです。
美爾依(みにー) |
2009.06.11(木) 13:32 | URL |
【編集】
今や、日本のテレビ新聞はチンピラの難くせと同じレベル。
誰も、真剣に聞いてないし、相手にもしていない。
テレビ新聞が自滅するのは時間の問題かな?
産経新聞って新聞なんて名のる資格もないよ。
コイズミのヤラセタウンミーティングに加担していた会社。
それで新聞社???
誰も、真剣に聞いてないし、相手にもしていない。
テレビ新聞が自滅するのは時間の問題かな?
産経新聞って新聞なんて名のる資格もないよ。
コイズミのヤラセタウンミーティングに加担していた会社。
それで新聞社???
scotti |
2009.06.11(木) 12:00 | URL |
【編集】
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西松建設違法献金事件に関連して民主党が設置した有識者会議「政治資金問題をめぐる政治・検察・報道のあ
2009/06/12(金) 06:00:57 | 植草一秀の『知られざる真実』
【西松問題】シロアリ補完勢力が暗躍しても政権交代を望む民の声は止められない!【委員会報告】
野党第一党党首を辞任にまで追い込みながら、与党関係者は事情聴取もされないという「片手落ち」というにはあまりにも酷すぎる西松事件であるが、10日に発表された 「政治資金問題を巡る政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会」の報告書に関し、 シロアリジミ...
2009/06/12(金) 00:25:04 | ステイメンの雑記帖
メディアに思うこと、。。。(第三者委員会 『 報 告 書 』)
当 ブ ロ グ へ の
皆様のご支援に感謝致します! ありがとう!
●カナダde日本語 美爾依様。
第三者委員会が報告書で検察の説明責任を求める
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●kimera25様。
最終
2009/06/11(木) 21:05:19 | 晴天とら日和
特定商取法違反容疑で7人逮捕 統一協会関連施設を捜索(朝日新聞) より
19時のNHKニュース でも大きく取り上げられていたが,統一協会の悪質な「印鑑販売商法」が「検察庁」でなく,「警視庁公安部」によってガサ入れされた.ちなみに 「統一教会」というのは間
2009/06/11(木) 20:54:20 | Die Weblogtagesschau laut dem Kaetzchen
昨日、 第三者委員会 から民主党に報告書が届けられた。
昨夜から、NHKをはじめ各TVで報じられているのだが、かなり つまみ食いをしただけの報道 となっている。
【委員一覧】
飯尾潤(座長) 政策研究学教授
郷原信郎(座長代理) 名城大学教授、弁護士
櫻井敬子 学...
2009/06/11(木) 17:17:46 | 雑感
頭はサッカーのことで一杯なので,今日も手抜き(自爆)
案の定,ホームで日本はカタールに持久戦負けしましたね.表向きには引き分けだけど,手厳しい見方をしないと,今回の教訓は生かされません.
岡田監督の,とにかく前半の初めに先制点を取って,最後まで相手...
2009/06/11(木) 16:49:43 | Die Weblogtagesschau laut dem Kaetzchen
民主党:第三者委員会 『 報 告 書 』 に思うこと、。。。(資料)
当 ブ ロ グ へ の
皆様のご支援に感謝致します! ありがとう!
●カナダde日本語 美爾依様。
第三者委員会が報告書で検察の説明責任を求める
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●kimera25様。
最終
2009/06/11(木) 12:46:26 | 晴天とら日和
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