2008.08.22 (Fri)
西脇茂利氏に読ませたい西脇昌治氏の日記
『クジラクリッピング』の「2人の鯨類学者/西脇氏」(2008年08月21日)は、とても対照的な二人の鯨類学者、西脇茂利氏と故西脇昌治氏を紹介している。
現(財)日本鯨類研究所の調査部長である西脇茂利氏は、昨シーズン調査捕鯨団長を務めた人。今年の2月には、日本の捕鯨船が親子の鯨を殺したとして、世界中から非難された。一方、日本は親子の鯨であることは、否定し、小さな方は、赤ちゃんではなく、単に小さな種類の鯨であると言い訳をしている。
Japanese whaling fleet kills mother whale and her calf(BBCNews)
日本の捕鯨船が親子の鯨を殺す
一方、故西脇昌治氏は、kknekoさんによると、「鯨類学のバイブルの一冊「鯨類・鰭脚類」(東大出版会)を著し、鯨研の前身である財団法人鯨類研究所に在籍したこともあり、その後東大、琉球大の研究の傍ら教鞭をとられ、82年には日本哺乳動物学会会長にも選出されたそうだ。戦時中は 海軍大尉勲二等でもあった氏は、84年に亡くなられたが、戦後直後に南氷洋捕鯨の監督官に赴任した時の日記が1990年に北泉社より『南極行の記』(副題:1947/48 捕鯨船団での日々)として出版された。
kknekoさんが「当時の捕鯨操業の様子が詳細に分かる貴重な資料で、捕鯨問題に関心のある方にはぜひ一読してもらいたい本」ということで、引用して下さったので、転載させていただく。
![]() | 南極行の記 1947/48―捕鯨船団での日々 (1990/05) 西脇 昌治 商品詳細を見る |
1月10日 (前略)最後に上った第二文丸のFinは65 feetだったが、mammary glandがthickness 13 cmもありmilk presentだったが、involutingとして我慢して違反にはしなかった。会社の奴等で癪にさはる奴(例へば漁撈兼作業課長、解剖係等)をギャフンと言はすには良い材料だが、私の判定一つで日本の世界に対する成績が悪くなるのだから、正確を第一とし(即ち信義ある調査を第一とし)判定に於ては我が日本に有利にせねばならない。その為に来たのでは無いか。私の感情で国権を侵してはならない。夜食後長嶺と一杯やりながら話す。早く東京へ帰り度い事ばかりだ。
※ 乳腺にミルクがあり、泌乳していたことを示す。しかし、この場合は、乳腺は退縮中で、泌乳活動を終えつつあるとみなして、仔連れ鯨捕獲の違反の疑いがあるのを目こぼしした。このようなことは日本の捕鯨では普通のことであり、会社や行政からも目こぼしを期待されたが、研究者にとっては耐えがたいことでもあったので、後には研究者は監督官を兼任しないケースが増えた。(粕谷氏注)
1月27日 (前略)大きな白の二頭連だと思ったら、小さい三分の二位のが小さい息をまぜて居る。船の連中は、あれは長須が混って居るので、子連れでは無いと言ふ。雌の肥り方。噴気。背鰭。背色等長須の様でもあり、子供の様でもある。しかし、私より実際に目の肥えた連中であり、しかも、監督官の面前で禁令を破って見せる様な事もあるまいと、その侭追尾させる。始めは小さいのが後からついて泳いで居たが、敵(捕鯨船)に追ひかけられたと気がついてからは、小さいのを前にして大きな白が後から揃って泳いで行く。そして、大体の場合♂が敵に近い方に居て♀を守ってやって居る。此の前第三文丸に乗った時は二頭連(夫婦)は一回も見なかったのだが、今日はどうも二頭連ばかりでその中の一頭をやっつけるのは可哀そうだ。しかし可哀想がってばかり居ては漁は出来ないし、当方が可哀想になる、早く帰れる為に犠牲になってくれよと祈ってやまぬ。そして今日の親子(?)の愛情又は夫婦の愛情を見せられては、それを打ち壊して自分の利益にのみ汲々として居る人間達。捕鯨業が嫌になった。母船では感ぜられない嫌な気分だ。遂に追尾成功。♂鯨はあへない最後をとげてしまった。それは大きな、♂にしては全く稀な程大きな85,6 feetもある奴ではあったが、それをやっつけた時、そして私に自らの功を話に来た時の、砲手の喜色満面ニタリとして残忍な笑ひを忘れる事は出来ない。私が、それと全く反対の気持ちで居るのも知らないで。それでもまあ♂で良かった。あれが♀であり、あの小さいのが、長須では無くて、子供だったら。小さいのは育たないかも知れない。此の点が国際協定のやかましく言ふ所であり、鯨を如何に可愛がるかと言ふ点だ。♂が自分が倒れても♀と子を守らうと言ふ精神、次代に示す♂の愛情は生物界いづれも変わらないだらう。犠牲になった♂の冥福を祈り、その犠牲によってのがれ得た♀の、そして小さき者の幸福を祈るや切。(後略)
1月30日 (前略)鯨は一時間おきに次々と上る。0430に上げた第三文丸の白皮をはがすと乳がほとばしり出た。指に付けてなめて見る。甘い。しかし幾分苦味が残る様な気がする。しかし、収縮中のものであると見倣す、not lactatingとする。中々難しい所だ。日本の監督官が乳を乳で無いと言ったとなると問題だ。乳腺としては乳を分泌して居ても、収縮の過程にあって子供には勿論授乳して居ないし、乳頭からも出ない。此の状態を言ふのである。watch交代後某監督官が室に来て、方針を変更したと言ふ。今迄は違反が出なければ反って疑がはれるからうんと辛くしたが、橋立の様子を見ると(橋立は違反五頭出してGHQから叱られ本省から制限体長の強化及対捕鯨船の処罰を言って来た)。違反は出せないと思ふから、甘くして、見て見ぬふりをしようと言ふ。こんな自分の成績や感情で行動する官吏が居るからいつ迄たっても駄目なのだ。かふいう奴こそ追放すべきである。もっと日本の立場を理解して、尺長のあるものを計り直して引下げ違反を出したりしなければ良いのだ。甘くすると言ふ今後の甘くしかたが見物だ。私は最後迄同じ方針で行かう。正確を基礎としてまけられるものはまけるが、此のまけると言ふのは人情では無く、その時の判断であり、出来得れば我が国に有利にとなる様に考へれば良いのだ。甘くばかりしてまけてばかり居て日本の監督官は信用出来ぬと言ふ事になれば、それこそ世界に対して大変な事になる。(後略)
※ 仔連れの母鯨は捕獲禁止で、捕れば砲手は処罰される。仔を連れていたか否かは捕獲の現場を見なければわからないので、泌乳の有無でこれを判断する。ここでは「泌乳なし」といつわりの記録をして違反を見逃したのである。(粕谷氏注)
前述の殺された親子鯨のYouTubeの画像を見た後で、この日記を読むと、日本の捕鯨船はなんと残酷なことをするのだろうかと怒りで指が震えてきた。日本の捕鯨船では、親子鯨を殺しておいて、親子ではなかったと偽装するなんてお茶の子さいさいなのだろう。きっと赤ちゃん鯨は、肉がやわらかくておいしいから高く売れるに違いない。そのために違反も見過ごす。このように思慮のない捕鯨を行っているから、日本は世界中から非難を浴びているのがわからないのだろうか。
日本の捕鯨船は全てが偽装だ。商業捕鯨のくせに調査捕鯨としているし、南極海での商業捕鯨は禁じられているのに、調査捕鯨だからといってごまかす。そして、親子鯨を殺しているのに、親子ではないと言い張る。これじゃ、世界中から日本は偽装国家だと言われてもしかたがあるまい。そして、調査捕鯨の科学性も無価値に等しいとkknekoさんから手厳しく批判されている。
kknekoさんが最後に西脇茂利氏に問いかけている。
さて、西脇さん。今の鯨研が、故西脇博士に対して恥ずかしくない、胸を張れるだけの仕事をしていると、本当に思いますか?
答えはもちろん「NO」だろう。
いくらなんでも親子鯨を殺してはいけないと思ったら、今日もランキングの応援よろしくお願いします。

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Tags : 南極行の記 |
(財)日本鯨類研究所 |
西脇茂利 |
西脇昌治 |
鯨の親子が殺されるのは、本当に悲しいですね。
日本の捕鯨船には一刻も早く南極海から撤退していただきたいです。そうすれば、鯨の親子も平和に暮らせるから。
調査捕鯨といいながら、やっていることは商業捕鯨で、ろくな調査もしていないくせに、天下りでも1000万円以上の給与をもらっている(財)鯨研の管理職はかなり問題ありですね。
捕鯨には、毎年、運営に5億もかかり、広報費に6億かけているということですが、世界から批判をあびるだけで、調査といっても鯨を大量に殺す意味のない調査ばかりで、存在価値が全くないと思われます。
日本の国益のためにも南極海での捕鯨はやるべきではないと強く思います。
惨いですね、これは。
フェアじゃない。
決まりを破ってまで捕獲することはないと思います。
影に隠れているのはお金のためならルールを破ってもよいという商業主義が見え隠れしているみたいで気分が悪いです。
赤ちゃん鯨が、柔らかくて高く売れるという、人間の利益追求の理由で殺されたとしたら可哀想すぎます。
それと高く売れるとのことで、密漁の理由にならないか心配です。
私は、鯨を口にします(めったに手に入らないし買わないのですけど)が、たぶんしばらく(もしかしたらずっと)鯨は口にしないかもしれません。
真相が解明され隠蔽体質が少しでも減るよう望みます。
でなければあまりにも殺されずにすんだ母子鯨の命が可哀想でたまりません。
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私もこの親子の鯨が殺された動画を見た時は、本当にショックでした。母と子の鯨を追いつめてこのように殺すことは、倫理に反しています。世界中が日本の捕鯨に感情的に反対しているのも分かるような気がします。
まあ、これはかなり極端な例ですが、日本では、光市母子殺害事件で母親と赤ちゃんが殺されたときは、加害者に対して多くの国民が感情的になりましたが、鯨の母親と赤ちゃんが殺されても殺した日本の捕鯨船は全く何の罪にも問われないし、マスコミは全くスルーというのはあまりにも冷酷ではないでしょうか。