2006.07.03 (Mon)
安倍の靖国参拝に対する愚考

『きっこのブログ』「祖父の代から売国奴」はとても力強く、国民の怒りをうまく表現していた。安倍が大嫌いなきっこちゃんもきっとAbEndキャンペーンに賛同してくれるだろう。
私がAbEndキャンペーンを通して安倍が総理になることに反対している理由は数え切れないほどたくさんあるけど、その中でも靖国神社参拝は大きな理由の一つだ。なぜかというと一国の主である首相が靖国参拝することは、かつての日本の侵略戦争を正当化し、日本軍国主義の復活を強く肯定していると近隣諸国にとらえられかねないからだ。植民地支配のための略奪戦争を栄光の戦争として顕彰し、A級戦犯も含めた靖国神社の「英霊」たちを、「尊い犠牲」として祀っているのだ。そして、首相が靖国を参拝することは、戦争で家族を亡くされた遺族の方々にさえも不快感を与えるのだ。
おまけに靖国神社に祭られているのは、日本人戦死者だけでなく、アジア・太平洋戦争が激化するにつれて、朝鮮、台湾から日本軍の軍人軍属として半ば強制的に戦時動員された約5万人の旧植民地出身者も含まれており、殖民地支配と弾圧の加害者として戦死した日本人とまったく同格の「護国の神」として合祀されている。日本軍の軍人軍属として戦時動員された旧植民地出身者の慰霊や遺族の気持ちを考えたら、いてもたってもいられなくなる。故郷から遠く離れ、異民族の宗教である靖国神社に勝手に合祀されて、とても気の毒だ。自分の家族くらい好きなところに埋葬してあげたいと思うのは当然の気持ちだろう。
そんな中、安倍はよせばいいのに、靖国参拝について又救いようのないコメントをした。
安倍氏、靖国参拝「信仰の自由、国民の一致した考え」2006年07月04日13時07分
安倍官房長官は4日の記者会見で、首相の靖国神社参拝で首脳外交が滞っている中国を民主党の小沢代表が訪問していることについて「(9月の自民党総裁選への)影響はないだろう。国のために戦った方々に対する慰霊の気持ち、信仰の自由、良心の自由が侵されることがあってはならないというのが日本国民の一致した考えではないか」と述べ、中国による靖国神社参拝の中止要求を牽制(けんせい)した。
安倍氏はさらに、「自由と民主主義、基本的人権、法律の支配という価値を持つ国々に共通する考え方だ」と強調。「問題があるからこそ(首脳会談で)意見を述べ合い、違いを認め合うことが成熟した国家の関係ではないか」と述べ、中国の対応を批判した。
何度も言うが、民間の一個人が戦争で亡くなった方々を靖国神社にお参りするのは全然問題ないのは言うまでもないが、首相が参拝するとなると話は全く違ってくる。それは、私人から、公人に変わると、一変してその影響力が高まるからだ。
↑の安倍の発言は、そんな遺族達が起こした靖国参拝訴訟の最近の判決結果「靖国参拝訴訟:最高裁、憲法判断示さず 原告敗訴が確定」(毎日新聞 2006年6月24日 2時57分)を受けてのものだろうが、この判決は腑に落ちなかった。この裁判での今井功裁判長の判決は、首相による参拝が合憲か違憲かの憲法判断を見送っただけではなく、参拝が私的か公的かの判断を示さないまま、原告側の敗訴が確定したもので、私の目には、最もはっきりさせないとならない部分である憲法判断を放棄しており、中途半端に映った。ただ、逆に言えば、首相参拝が合憲と判断されたわけでもないので、小泉や安倍はそこのところ勘違いしないで欲しい。
「政教分離」規定によれば、特定の宗教団体、つまり、靖国神社のような「宗教法人」が国と特別の関係に入ることは、法律で禁じられている。故に首相の靖国神社公式参拝は、過去に何度も日本の司法によって違憲と断じられているのだ。過去の靖国参拝訴訟の判決、並びに判決に対する各新聞社の記事は、『誰かの妄想』の「靖国参拝訴訟 最高裁判決」が詳しい。
首相の靖国神社公式参拝訴訟の中で最も明確に違憲とされたのは、1991年1月10日の岩手靖国訴訟・先代高裁判決においてであり、次のような判決が下った。『靖国問題』高橋哲哉 ちくま新書(2005)p.105より
天皇、内閣総理大臣の靖国神社公式参拝は、その目的が宗教的意義をもち、その行為の態様からみて国又はその機関として特定の宗教への関心を呼び起こす行為というべきであり、しかも、公的視覚においてなされる右公式参拝がもたらす直接的、顕在的な影響及び将来予想される間接的、潜在的な動向を総合考慮すれば、公式参拝における国と宗教法人靖国神社との宗教上のかかわり合いは、わが国の憲法の拠って立つ政教分離原則に照らし、相当とされる限度を超えるものと断定せざるをえない。
したがって、右公式参拝は、憲法20条3項が禁止する宗教的活動に該当する違憲な行為といわなければならない。
[中略]
天皇の公式参拝は、内閣総理大臣のそれとは比べられないほど、政教分離の原則との関係において国家社会に計り知れない影響を及ぼすであろうことが容易に推測されるところである。
少し前に麻生が首相どころか天皇が靖国を参拝するべきだと言ったのを覚えていらっしゃる方も多いと思うが、上の判決を読めば麻生がいかに無知で恐ろしい思想の持ち主であるかがよくわかるであろう。麻生とは遠い親戚関係にある安倍も政教分離の意味がよくわかっていないようで、故に将来、安倍と癒着する統一協会の資金によって支援される政党が誕生し、創価学会と公明党のような関係を築き上げる可能性すらある。この安倍の発言は、右翼の代表者としてなら認められるが、一国の次期総理大臣候補としては、あまりにも無教養で自国中心的な考えが過ぎる。この一言が中国や韓国に日本に対してどれだけ不快感を与え、反感を煽ったか本人はまだ気づいていないようだが、今後こんな奴が首相になって失言を繰り返したらと想像するだけで、気が滅入ってしまう。
改めてAbEnd!安倍が総理になる前にThe Endさせなくてはならない。
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