2008.03.23 (Sun)
米国大統領選に見る「左右の対立、新旧の対立」by冷泉彰彦
JMMメルマガで冷泉彰彦氏がこのところ波乱含みの米大統領選について最新事情を詳しく解説して下さっているので、紹介したい(全文は文末のread moreへ)。できれば、JMMの無料メルマガを購読してくださると編集長の村上龍氏も喜ばれる事と思う。
これまではオバマ氏に有利な展開だったのが、一転してオバマ氏が20年来とても親しくしているジェレミー・ライトという黒人教会の牧師が「過激反米発言」をしたことが明らかになるにつれ、こういった人物と親密な関係にあるオバマを軽蔑する動きがでてきた。
この牧師の過激発言は、何度も何度もテレビで繰り返されて放映された。例えば、「金持ちの白人によって米国の黒人は支配されている」9・11のテロに際して、「アメリカが世界へ向けて行ってきた暴力の報いだ」「米国が広島や長崎に原爆を落として何十万人という人々を殺したことは全く気にしていないくせに、NYの9・11のテロで3000人が殺されたことを騒いでいる」「ゲイや黒人を殺すために政府がエイズを発明した」「政府はイラクの大量破壊兵器について嘘をついている」「ヒラリーは決してニガーと呼ばれたことがない」「ヒラリーはオバマのように貧しい家庭で片親によって育てられていないから庶民の気持ちがわからない」「ビル・クリントンは、3つの重罪を犯したら終身刑になる3ストライクス・ローを作り、多くの黒人が終身刑になった」「ビル・クリントンは米国人に対して、モニカ・ルインスキーにしたと同じ事をした」など、反米感情というか、反米政府感情丸出しで、黒人の白人に対する憎しみを強調しており、これから世代を超えた新しい政治を始めようとしているオバマが、実はこういった古い偏質的な考えも持ち合わせているのではないかと若者を中心とした人々の不審を買った。
それでは、ライト牧師がどれだけ過激かという映像をyoutubeでお楽しみ下さい(笑)。
Barack Obama Pastor Jeremiah Wright is anti American Racist
しかしながら、オバマ氏は、18日の火曜日にフィラデルフィアで行った演説の中で見事にダメージコントロールに成功している。ライト牧師との親密な関係は認めつつも、彼の人種の分断を招く彼の発言には反対の意思をはっきりと表明した。そうする中で、今とは違って60年代には確かに人種隔離が現実だったとライト牧師の擁護もしている。
いやあ、過激なんてもんじゃないね。この牧師。でも、黒人や貧しい人にとっては、なんか引きずり込まれちゃうようなカリスマ性も確かにあるかも。日本人にとっても広島、長崎のくだりは、なかなか全うなことを言っていると思う人も多いだろう。オバマ氏はうまく対処したと思うが、この牧師のおかげでかなりの打撃を受けたのは確実だ。
ところで、先日もこのブログでも触れたニューヨーク州のスピッツァー知事による買春辞任騒ぎだけど、冷泉氏によると、民主党にとっては大事件だったけれども、ヒラリーにとってはスピッツァーというのはある種、切り捨てても良い存在だったため、ダメージどころか心の中では喜んでいるのではないかと推測している。
というのも、2006年11月にヒラリーとスピッツァーがそれぞれNY州の上院議員と知事に当選したときに二人とも「不法移民にも運転免許を交付すべき」という公約を掲げて当選した。しかし、その後、大統領選が進む中、ヒラリーは「不法移民への免許証交付」という公約を取り下げたのだ。なぜかというと、中西部の中間層を取り込みたいからで。他人の人権より自分の安全を中心の発想法が支配する中西部では、人権がアピールする東北部とは違い、この政策に反感を抱く人が多いだろうという判断からだった。それと同時にNYで不法移民に運転免許を与えたら、NYの犯罪が増え、治安も悪くなるだろうという世論も広まっていった。
スピッツァーは、強靭にもヒラリーにも、そうした世論にも屈しない態度をとっていたけれども、結局は断念せざるを得なかった。この前後の経緯については、オバマや右派がこのヒラリーの「変節」を批判しており、ヒラリーとしては「変節」前の盟友で今は自分の政治的お荷物となったスピッツァーの存在が邪魔だったのではないかと。だから、今回のスピッツァーの辞任騒動はヒラリーにとって渡りに船といったところだろうと冷泉氏は予想している。
ちなみにオバマ氏は一貫して「不法移民への免許証交付」には賛成で、そのせいかどうかわからないけれども、長年クリントン一家の政治的盟友であったリチャードソン、ニュー・メキシコ州知事は、すでに免許の交付を実施していることがあるのかどうかわからないけれども、オバマ氏支持に切り替えている。
なんとも複雑な米国大統領選だが、冷泉氏の解説によって細かい事情が手に取るようにわかり、興味を持つ人も多いのではないだろうか。この他にもディズニーなどの映画の紹介を兼ねて、左右、新旧の対立について鋭くメスを入れている。読む人を惹き付ける文章が書ける少ない作家のひとりだと思う。
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これまではオバマ氏に有利な展開だったのが、一転してオバマ氏が20年来とても親しくしているジェレミー・ライトという黒人教会の牧師が「過激反米発言」をしたことが明らかになるにつれ、こういった人物と親密な関係にあるオバマを軽蔑する動きがでてきた。
この牧師の過激発言は、何度も何度もテレビで繰り返されて放映された。例えば、「金持ちの白人によって米国の黒人は支配されている」9・11のテロに際して、「アメリカが世界へ向けて行ってきた暴力の報いだ」「米国が広島や長崎に原爆を落として何十万人という人々を殺したことは全く気にしていないくせに、NYの9・11のテロで3000人が殺されたことを騒いでいる」「ゲイや黒人を殺すために政府がエイズを発明した」「政府はイラクの大量破壊兵器について嘘をついている」「ヒラリーは決してニガーと呼ばれたことがない」「ヒラリーはオバマのように貧しい家庭で片親によって育てられていないから庶民の気持ちがわからない」「ビル・クリントンは、3つの重罪を犯したら終身刑になる3ストライクス・ローを作り、多くの黒人が終身刑になった」「ビル・クリントンは米国人に対して、モニカ・ルインスキーにしたと同じ事をした」など、反米感情というか、反米政府感情丸出しで、黒人の白人に対する憎しみを強調しており、これから世代を超えた新しい政治を始めようとしているオバマが、実はこういった古い偏質的な考えも持ち合わせているのではないかと若者を中心とした人々の不審を買った。
それでは、ライト牧師がどれだけ過激かという映像をyoutubeでお楽しみ下さい(笑)。
Barack Obama Pastor Jeremiah Wright is anti American Racist
しかしながら、オバマ氏は、18日の火曜日にフィラデルフィアで行った演説の中で見事にダメージコントロールに成功している。ライト牧師との親密な関係は認めつつも、彼の人種の分断を招く彼の発言には反対の意思をはっきりと表明した。そうする中で、今とは違って60年代には確かに人種隔離が現実だったとライト牧師の擁護もしている。
いやあ、過激なんてもんじゃないね。この牧師。でも、黒人や貧しい人にとっては、なんか引きずり込まれちゃうようなカリスマ性も確かにあるかも。日本人にとっても広島、長崎のくだりは、なかなか全うなことを言っていると思う人も多いだろう。オバマ氏はうまく対処したと思うが、この牧師のおかげでかなりの打撃を受けたのは確実だ。
ところで、先日もこのブログでも触れたニューヨーク州のスピッツァー知事による買春辞任騒ぎだけど、冷泉氏によると、民主党にとっては大事件だったけれども、ヒラリーにとってはスピッツァーというのはある種、切り捨てても良い存在だったため、ダメージどころか心の中では喜んでいるのではないかと推測している。
というのも、2006年11月にヒラリーとスピッツァーがそれぞれNY州の上院議員と知事に当選したときに二人とも「不法移民にも運転免許を交付すべき」という公約を掲げて当選した。しかし、その後、大統領選が進む中、ヒラリーは「不法移民への免許証交付」という公約を取り下げたのだ。なぜかというと、中西部の中間層を取り込みたいからで。他人の人権より自分の安全を中心の発想法が支配する中西部では、人権がアピールする東北部とは違い、この政策に反感を抱く人が多いだろうという判断からだった。それと同時にNYで不法移民に運転免許を与えたら、NYの犯罪が増え、治安も悪くなるだろうという世論も広まっていった。
スピッツァーは、強靭にもヒラリーにも、そうした世論にも屈しない態度をとっていたけれども、結局は断念せざるを得なかった。この前後の経緯については、オバマや右派がこのヒラリーの「変節」を批判しており、ヒラリーとしては「変節」前の盟友で今は自分の政治的お荷物となったスピッツァーの存在が邪魔だったのではないかと。だから、今回のスピッツァーの辞任騒動はヒラリーにとって渡りに船といったところだろうと冷泉氏は予想している。
ちなみにオバマ氏は一貫して「不法移民への免許証交付」には賛成で、そのせいかどうかわからないけれども、長年クリントン一家の政治的盟友であったリチャードソン、ニュー・メキシコ州知事は、すでに免許の交付を実施していることがあるのかどうかわからないけれども、オバマ氏支持に切り替えている。
なんとも複雑な米国大統領選だが、冷泉氏の解説によって細かい事情が手に取るようにわかり、興味を持つ人も多いのではないだろうか。この他にもディズニーなどの映画の紹介を兼ねて、左右、新旧の対立について鋭くメスを入れている。読む人を惹き付ける文章が書ける少ない作家のひとりだと思う。
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