2011.12.08 (Thu)
福島の除染は「白い象」byニューヨーク・タイムズ
福島第一原発事故後の除染を「白い象」に喩えているのが、「Japan Split on Hope for Vast Radiation Cleanup(広域にわたる放射能除染に対して日本が賛成派と反対派に分裂)」と題された12月6日付けのオンライン『New York Times』だ。マーティン・ファクラー氏は、記事の中では、福島第一原発事故後の除染作業をめぐる日本での議論を紹介しながら、除染は、「日本再生」を暗示するには違いないが、一方で、除染には莫大な費用がかかるため、これからの20年間、日本は、除染による浪費によって経済成長を停滞させ、津波・大地震の災難後、もうひとつの経済的大災難を迎えるだろうと予測している。
この記事の冒頭では、現代のゴースト・タウン化した双葉町を描写しているがそれが実に生々しい。
「災害に向けて螺旋状に始まった双葉町の境にある原子炉から逃げた住民によって3月に放置されてから、伝統的な木の家がたるみ、崩れ始めた。地震によってダメージを受けた屋根には雨が入り込み、内部から家を浸食し腐り始めている。
空虚な町への入り口への道路のアーチ型の看板が愚弄して見える。そこには、
「原発エネルギー:正しい理解が生活を繁栄させる。」と書かれていた。」
以下、記事前半を和訳。
双葉町から避難した住民は、福島第一原子力発電所が、セシウムやヨウ素を放出したとき、原発から20キロ以内、そして汚染された北西の地域に住んでいた9万人の人々の一部だ。
今、日本は、避難者を家に戻すために、莫大で前例のない除染を計画している。もし、試験的な除染が効果的であった場合は、将来の日本を勝ち取るために、その地域に人々を戻すかどうかの議論が活発に交わされている。除染支持者たちは、その地域を復興させることは、日本の恐るべき決意と優れた技術を世界にしらしめるいい機会であり、又、同時に、日本はいまだに巨大な力をもっていることの証となると見ている。
除染支持者にとって、除染は、「日本再生」の暗示なのだ。
これに対し、除染反対派は、福島県除染の努力は、恐らく日本史上最大の浪費公共事業プロジェクトに終わる可能性があり、これからの20年間、日本は、除染による浪費によって経済成長を停滞させ、津波・大地震の災難後、もうひとつの経済的大災難の例となるであろうと批判している。
原発事故以来、今のところ、日本政府は、時期尚早に危険を見逃し、大惨事の影響を過小評価している。すでに試験的除染は始まっている。政府は地域の住民が汚染された庭や野原から何トンという土壌を保管するのをいやがることを予想できなかった。
町の近郊地域の除染の結果を検査した放射線専門技師は、長期の居住では、国際安全基準を超えて被曝することを明らかにした。
地域復興の能弁な支持者でさえ、政府が住民の苦境をどこまで理解しているかわからないと言う。
「(除染によって)福島を救うのは可能だと思う。しかし、避難住民は、それが生きているうちに叶うと思ってはいけない。」と東京大学のアイソトープ総合センター長の児玉龍彦教授は語った。
専門家は、莫大なスケールの除染からすると、数千の建物から放射性物質が洗浄され、米国のコネティカット州並みの広さの地域で多くの表土を交換された後、住民は初めて自分の家に戻ることができるとみていると説明した。
山々の森林も樹木を切断するなどして、除染する必要がある。
旧ソビエト連邦では、福島よりも大きい唯一の災害であった1986年のチェルノブイリ原発事故の後、そこまで大規模な除染はされなかった。その代わり、旧ソビエトは、30万人の人々を移動させ、広大な農地を放棄させた。
多くの日本政府関係者は、そんな贅沢はできないと信じている。放射能汚染地域は、人口密度の高い日本国土の3%を占めている。
「私たちはチェルノブイリとは違う。私たちは、家に帰ることを決定された。日本には住民を帰らせる意志と技術がある。」と大熊町の渡辺利綱町長(64歳)は語った。
家族が19世代も大熊町に住んでいるという渡辺氏のように、地方に住む日本人は家に深い執着があるという点も、(住民を帰宅させるという)解決法に反映されている。彼らの心からの家に帰りたいという切望は、日本中から多くの同情を集めており、彼らの(家に戻りたいという)願いに反対するのは難しい。

写真:Ko Sasaki for The New York Times
池田みつえさんは、福島の家には絶対に帰りたくないと言った。特に、医療検査で、彼女の8歳になる息子、ゆうま君がセシウムで内部被曝してしまったことがわかった後は。
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2011.11.21 (Mon)
山本太郎氏と福島みずほ氏の脱原発対談
2011年11月11日【対談】山本太郎×福島みずほ テーマはスバリ「脱原発」
俳優の山本太郎氏と社民党・福島みずほ党首の対談です。
テーマはスバリ「脱原発」。
東京電力福島第1原発事故を巡って
様々な活動を行っている山本太郎と、
脱原発~自然エネルギーへのシフトを訴えてきた
社民党・福島みずほ党首が「脱原発」の本質にせまります。
「脱原発」は実現可能か?
「脱原発」を進めていくためには何が必要なのか?
【出演】
福島みずほ(社民党党首)
http://twitter.com/#!/mizuhofukushima
山本太郎(俳優)
http://twitter.com/#!/yamamototaro0
岩上安身(ジャーナリスト)
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【代読】
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2011.11.19 (Sat)
西山元審議官、女性問題から除染問題へ
このところ、悪い意味で環境省が注目を浴びているが、今度は、あの女性問題で懲戒処分を受けていたヅラ西山先生が、環境省で除染問題に取り組むことになった。本人が、直接除染するわけではないだろうが、一応、福島に住んでの職務なので、懲罰人事ではないかと思う。
【原発】西山元審議官が福島除染推進チームに異動(11/11/18)
除染はどこまで効果あるのかというエントリーでも書いたとおり、費用ばかり天文学的にかかり、その効果が疑わしい除染に税金を使うのは反対だ。効果に限界のある無意味なことを、税金を無駄に使って行う環境省には怒りを覚える。いくら、環境省を
環境省が、汚染土壌を投棄させた前総務課長と細野環境相、そして、ヅラ西山の3人を除染作業に直接従事させるなら、まだ許せるが・・・・。実際、細野環境相は除染にボランティアとして参加したようだ。
汚染土壌投棄について、mickyさんからコメントをいただき、全く同感したので、転載させていただきたい。
初めまして。
無責任でご都合主義の日本の欠点をもろに表したかのような「汚染土壌投棄」に憤りを感じ、 今日本の人達はこの国について何を思っているのかを知りたくて検索したところ、こちらにたどり着きました。
全くもってとんでもない話ですね。 私も同じ気持ちです。
とりあえず謝っておけば面倒くさいことは避けられる、と考えている大人が非常に多くなりました。その結果、無責任で卑怯で道徳心のかけらもないご都合主義な社会を増長させているんだと思います。
謝る姿勢を見せたり、辞めさせることで責任を示す、などの行為は現場の被害を被っている人達にははっきりどうでもいいこと。
大事なことは、いざ放射能を浴びたらどういう症状が出るかやその場合どう対応すべきかなどだと思うのに、現実的な話を避けるのが日本ですね。
この国で生きていく自信がとことんなくなる事件でした。
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2011.10.26 (Wed)
避難よりも除染を主張する児玉龍彦氏への疑問
『大山こういちのブログ』児玉氏の医師倫理を問う―1
その他一連の発言の中心は「除染」である。
監修された小学校や 幼稚園周辺の住民から私に要請があり 駆け付けた。
なんと土ぼこりや水煙で 周辺住民が二次被ばくを受けている。監督として彼の姿はない。
なるほど氏は医師であり 「除染」という一種の清掃の専門家ではないが・・・それにしても。
しかし、その責任者を問えば この「ボランテリア氏」だという。
児玉氏が、国会で「いったい国は何をやっているのですか。」と原発事故から3ヶ月たっても何の対策もできていない無能な政府への満身の怒りを表明し、除染で、被災地を復興させることを提案したときは、その動画は、ネットで話題となり、合計で20万回以上視聴された。
その一方で、最近では、「除染はどこまで効果あるのか」というエントリーで紹介したとおり、除染には限界があるという報告書の信頼性が高まってきている。
しかし、児玉氏は、ひたすらと除染の効果だけを訴え、避難についてはほとんど語らない。10月25日に、福島の放射能被害を考える有志議員によって2回目の「放射能除染についての緊急勉強会」で講演されたときも、児玉氏から避難という言葉は一度も聞けなかった。
有志議員による放射能汚染についての緊急勉強会第2弾20111025full.m4v
児玉氏が講演で使われた資料:国会への除染の課題
又、民主党風間参議院議員による原子力委員会に関する最初の質疑に対して、風間議員の無責任さにあきれたのと原子力委員会のメンバーを今すぐ罷免するべきであり、除染法56条の改正する(除染に関する権限を原子力委員会の判断なしでもできるように)という意見には同意するが、2番目のみんなの党の柿沢議員の「除染には限界があるという報告書についてどう思うか」という質問に対しては、なんとなくはぐらかして答えていたのが気にかかった。
一家500万円をかけて完璧に除染したとしても、次の日には風によって新たな放射能がやってくるのであり、除染には限界があることを児玉氏もよくわかっていると思う。福島県民を故郷に戻したいがためにこれほどまでに除染にこだわるのか、または、除染利権のためにこだわるのか、今のところ私にはわからない。
しかし、人々の健康を考えなければならない医師としての立場だったら、除染をする人や福島の人たちの被曝のことを考え、除染よりも避難を優先するべきではないのだろうか。
以下、原発に関する情報をいつも参考にさせていただいている伊達直人氏のフェイスブックから、大山議員のブログ記事を読んだ後で、児玉氏に対してどう思うかのコメントを紹介させていただきたい。
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大山弘一 |
避難 |
除染 |
児玉龍彦 |
原子力委員会 |
罷免 |
除染法56条 |
改正 |
2011.09.28 (Wed)
除染はどこまで効果あるのか
除染するにせよ、中途半端にするのでは費用がかさむだけで何の効果もない。まず、効果的な除染にはいくらくらいかかるのだろうか。朝日の記事によると、「放射性物質の除染対象になる可能性のある地域は、最大で福島県全体の7分の1に当たる約2千平方キロに及ぶ」そうで、セシウムをほぼ除去できるとされる深さ約5センチまではぎ取ると、体積は約1億立方メートルになり、除染土壌の体積は東京ドーム80杯分に相当するという。さらに、この除染土壌の中間貯蔵施設を造るとなると、国家予算とほぼ同じの約80兆円かかるそうだ。しかし、それでも、完全に放射性物質を除去することはできないようだ。
これを試算したのは、除染の考え方や手順などを盛り込んだ除染基準をまとめるために環境省が9月14日に初会合を開いた有識者による「環境回復検討会」のメンバーでもある東京大学(環境システム工学)の森口祐一教授。
また、『EX-SKF-JP』神戸大学山内知也:福島市渡利地区、「除染はできていない」で紹介されていた神戸大学大学院海事科学研究科の山内知也教授(放射線物理、放射線計測)による9月20日付けの『放射能汚染レベル調査結果報告書
渡利地域における除染の限界』と題された報告書を見ても、除染には限界があることがわかる。
概要:2011年9月14日、福島市渡利地区において空間線量の計測を実施した。「除染」が行われたということであったが、6月の調査において最も高い線量を記録した側溝内堆積物には手が付けられておらず、地表面における空間線量は当時の2倍に上昇していた。「除染」のモデル地区としてある通学路がその対象になったが(「除染モデル事業実施区域」)、その報告によると平均して7割程度(約68%)にしか下がっておらず、空間線量も1~2 μSv/hに高止まりしている。今回の調査においてもその通学路の周辺において20 μSv/hを超える非常に高い線量が地表面で計測された。コンクリートやそれに類する屋根の汚染は高圧水洗浄によっても除去できておらず、住宅室内における高い線量の原因になっている。除染の対象にはされなかった地域の水路や空き地、神社、個人宅地内の庭で高い線量が計測され、最も高い線量は地表で20 μSv/hを記録した。本来の意味での除染はできていない。
また、今でも福島第一原発からは、大量の放射能が漏れており、福島の住民の間では、いくら除染しても翌朝には、『フレッシュな放射能』が降ってくるとまで言われているそうだ。
Video streaming by Ustream
『Bird's-Eye』福島第一原発 98 『フレッシュな放射能』いくら除染しても翌朝降ってるより
いくら莫大な費用をかけて除染したところで、福島第一原発の放射能が完全に止まるまでは、放射性物質を完全に除去できないのは、誰にも明白だ。除染といえば、まるで放射性物質が完全になくなるように聞こえるが、実際には、完全にはなくならないし、限界もあるので、単なる気休めにしかならない。それどころか、除染作業で被曝する人も急増するだろう。
日本政府や東電は、莫大な費用をかけて、このような気休めをするのではなく、もっと現実的にものを考えなくてはならない。80兆円あれば、全額を原子力損害賠償として使い、汚染区域の住民を全員避難させて、新しい住宅を与えたり、被曝治療することも可能だ。昨日のエントリーのアビさんのコメントにもあった通り、住民にとっては、故郷を失うのは本当につらいだろうけど、福島や近県の汚染地域を放射能汚染物質の貯蔵地として全国にばらまいた高濃度放射能汚染したがれきや除染して溜まった汚染土壌の集積地としたほうがいいのではないか。
もしこれができないと、被曝を恐れた日本人はほとんど海外へ逃げ、日本中にばら撒かれた放射性物質で被曝した日本人は、近い将来ほとんどが死に絶え、人口が激減した日本は国家として成り立たなくなるだろう。そして、最悪の場合、日本全体が、世界の使用済み核燃料置き場と化してしまうかもしれない。これを避けるには、最低、次のことが必要だ。
1.政府や東電は、真実の放射能拡散情報、飲料水の汚染状況を毎日報告する。
2.福島原発から100キロ以内の人々を緊急に全員避難させ、生涯、無償で住宅(国や東電が所有する保養地など)を提供する。
3.福島原発から250キロ以内の子供は、これから数年間は国が責任をもって内部被曝の定期検査をする。
4.この地域の人々が、甲状腺癌や白血病、その他の癌になった場合、無条件で治療費や手術は国が負担する。
5.高濃度汚染がれきは、福島第一原発から100キロ以内に貯蔵庫を作って埋める。
6.高濃度汚染水を海洋や地下水と接触させないよう、汚染水貯蔵庫や原子炉を囲む鋼鉄製の壁や底をつくる。
7.日本国内の原発を数年以内に全廃する。
国民だけでなく世界中が東電や日本政府に対して完全に信用を失ってしまった。しかし、東電や政府にも、国民のことを思える良心のある人が残っていることを祈りたい。