2011.05.16 (Mon)
福島第一原発事故:1号機は3月11日にメルトダウンしていた
福島第一原発1号機(タービン建屋)で見つかった高濃度放射性塩素-38の原因は何か?(リンクは英語原文)
2011年4月20日 付重要更新
4月20日のプレスリリースで東京電力は、3月25日発表の、第一号機原子炉冷却に使用された海水のCl-38放射能濃度測定値 (1.6 MBq/mL) を撤回し、「検出限界未満」とした。この当初の測定値を元に、そのような高濃度は、不慮の過渡臨界の可能性を想起せずには説明できないと私たちは判断していた。東京電力がこの測定結果を撤回し、同プレスリリースに示されるように、分析プロトコル改善に着手したのは、喜ばしいことである。しかし、なぜ、不充分な類別記述のまま(同プレスリリースにおいて、Cl-38 の読みは1.6MBq から「検出限界未満」と変更され、変更理由は「主要ピークによる核種の同定及び放射能濃度の決定」とされる)誤りを撤回したのかについて、説明が願わしいところである。たとえば、Cl-38の主要ガンマ線は1.64 MeV および 2.16 MeV にある。これらがいかなる線と干渉して6桁下げることが必要とされたのだろうか。もしカウント値がCl-38 の為でなかったのなら、いかなる同位元素が 1.6 MBq/mL に匹敵するカウント値を持っていたのか。
4月4日の原子力安全・保安院 による批判以来、東京電力が取ってきた処置は歓迎されるが、私たちは更に厳しい同位元素測定プロトコルと適時の結果報告を促したい。さもなければ、東京電力の重要な測定について一般人の信頼が更に損なわれるのではないか。よって、以下の処置を東京電力が取ることを勧めたい。
1)(単一の数字だけでなく)全スペルトルデータを公表する。
2)試料採取日時を公表する。
3)試料測定の日時を、計数時間とデッドタイムを含めて公表する。
4)測定を同じ日の違う時刻に何度か測定を繰り返す。
5)関心の対象となる他の同位元素(たとえば東京電力が4月20日に撤回した Te-129など)も、検出限界未満であっても測定していただきたい。
6)もし純粋な誤りから撤回が必要になったのなら、どういう誤りであったのか、充分な説明を加えていただきたい。
7)もし第三者の独自の分析が為されているのであれば、東京電力の測定結果判断を検証したその分析者/研究所の名前を明示していただきたい。
東京電力/原子力安全・保安院及び日本政府は前途に多大な仕事を抱えており、測定結果に基づいて重要な諸決断がなされていくことと思われる。それゆえ、分析においても結果の報告においても、厳格なプロトコルに従うことが重要である。
F. ダルノキ=ベレス (Ferenc Dalnoki-Veress)
(翻訳 セルデン恭子)
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(小出裕章さんから4月23日メールで届いたコメント)
ご指摘の点はそのとおりです。
私の推測では、Ge半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリのデータを、測定器メーカーの解析ソフトを使って自動的に解析してしまっているためだと思います。
その結果を本当ならチェックしなおすのですが、それを怠ったためでしょう。
そして、半減期37分のCl-38の場合、測定時点から、試料採取時点までの減衰補正をすると大きな値になってしまいます。
たとえば、370分(約6時間)経っていたとすれば、測定時点の1000倍の値として評価しますし、採取から測定まで740分(約半日)経ってしまっていたとすれば、採取時点に減衰補正すると6桁分大きくなります。
ダルノキ-ベレスさんのコメントどおり、生データが公表されれば、一気に解決します。 2011/4/23 小出 裕章
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図:メルトダウンは3月11日…初動の遅れ裏付け
(2011年5月16日08時58分 読売新聞)
この場に及んで、馬菅は東電の功定評の目標通り収束可能と官僚に言われるままの希望的観測を述べているのにはあきれるばかりだ。つい最近、細野氏が工程どおりにいかないと謝罪したばかりだというのに・・・・。同じ内閣で全く正反対の意見を発表するとは、ますます信用がなくなるのがわからないのか。もう自分は辞めるから嘘八百言っちまえ!ということか。それとも、自分が福島第一原発を視察したために、初動が遅れてメルトダウンを招いたということの責任から逃れるための嘘か。
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2011.04.14 (Thu)
福島第一原発は、チクタクと時を刻む時限爆弾
Expert: Despite Japanese Gov’t Claims of Decreasing Radiation, Fukushima a "Ticking Time Bomb"
日本政府は、原発事故評価が最高レベル7に上がった危機にもかかわらず、福島第一原子力発電所のまわりの放射能レベルや食の安全についての恐れを沈めるのにやっきとなっている。ニューヨーク市立大学シティカレッジの加來道雄物理学部教授は、「放射能は原子炉から漏れ続けている。状況は全く安定していない。そればかりか、一つ間違えば、3つの原子炉でメルトダウンが起きて、チェルノブイリを大きく越える可能性もある。」と言う。
エイミー・グッドマン:日本の菅直人首相は火曜日にひどく破損した福島第一原子力発電所の周りの放射能レベルや食の安全への恐怖を沈めようとした。原発事故評価が最高レベル7に上がり、大災害についての不安がさらに高まった後に菅首相はコメントを発表した。
巨大地震と津波が東北地方を襲ってから一ヵ月後に行われた記者会見で、菅首相は、福島原発の周りの地域で生産された野菜は、放射能汚染にもかかわらず、食べても安全だと語った。
菅直人首相:これからは、自粛ムードに過度に陥ることなく、できるだけ普通に生活するべきだ。福島原発事故で被害を受けた地域の作物を買うことが、その地域を支援することになる。その地域の作物を活用し、支援することを楽しむべきだ。どうか、そのようにお願いします。
エイミー・グッドマン:国際原子力機関(IAEA)のデニス・フローリー報道官は、食品サンプルの汚染濃度は、国内基準を下回ったと発表した。彼はまた、日本の原子力危機は、チェルノブイリとは比べられないと言った。
デニス・フローリー:2つの事故の構造は、全く異なります。 チェルノブイリでは、原子炉が作動中に事故は起こりました、そして、原子炉格納容器が爆発しました。 福島では、たとえ現在、格納容器が破損し、放射能が漏れているとしても、そのとき、原子炉と格納容器は停止中でした。 その意味で、2つの事故は全く異なるわけです。
エイミー・グッドマン:日本当局によれば、福島原発の事故評価を「レベル7」に上げたのは、状況が突然の悪化したためではなく、放射能の濃度が、レベル7に達したからだと発表しました。 1986年のチェルノブイリ原発事故は、原発事故を評価するために国際原子力機関によって開発されたスケールで、最も高いレベル7と評価され、福島原発事故以外で唯一の原発事故だった。 しかし、日本当局は、日本の発電所が放出している放射性物質は、今のところ、チェルノブイリの10分の1であると主張しています。
日本の状況を議論するために、日系アメリカ人の物理学者であり、ベストセラーの作家でもあり、ニューヨーク市立大学シティカレッジの理論物理学部教授である加來道雄氏をお招きしました。彼の新書は、『物理学の未来:2100年までに科学はどのように毎日の生活を変えるのか』です。
ようこそ、「Democracy Now!」へ。また、お会いできて光栄です。
加來道雄博士: エイミー、ショーにお招きいただきましてありがとうございます。
エイミー・グッドマン:まず、福島第一原発がチェルノブイリと同じカテゴリーの「レベル7」になったことについてお話しいただけますでしょうか。
加來道雄博士: さて、この原子力事故の大きな衝撃を控え目に扱おうとして、東京電力は最初は「レベル7」になったことを否定していました。 しかしながら、この事故がどんなレベルであるかを決定づける公式、数式があります。 この事故は、すでに5京ベクレルの放射能を放出しました。計算してみて下さい。原子事故評価のレベル7に当たります。まだ、チェルノブイリ以下です。 しかしながら、放射能は、原子炉から漏れ続けています。状況は全く安定していません。 つまり、福島第一原発は、カチカチと音を立てる時限爆弾を抱えているようなものです。 それは安定しているように見えますが、本の小さな引き金(たとえば、二次地震、パイプ破損事故、福島の作業員の避難など)で、3基の原子炉で完全な炉心溶解を起こして、チェルノブイリを超える規模になる可能性もあるのです。
エイミー・グッドマン:物理学者として、実際に日本のこれらの原子力発電所で何が起きているのかみんながわかるように説明して下さいませんか。
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