2008.11.07 (Fri)
田母神前空幕長が投げかけた波紋

画像は、『晴天とら日和』よりお借りしています。
このエントリーは、もっと前に書こうと思っていたのだが、小室哲哉の詐欺事件や米大統領選などが重なって、遅くなってしまった。その後、田母神前空幕長は定年退職したそうだが、本来は、懲戒免職されるべきなのに、6000万円の退職金までもらうそうだ。あまりにも生温い処置に怒りを覚えずにいられなかった。
その根底には、事が大きくなる前に、田母神前空幕長を定年退職として片付けて、トカゲのシッポ切りでなんとか済ませようとする防衛省や政府のいやらしい意図があるのはミエミエだ。その証拠に、田母神氏は定年退職が発令される前に「懲戒に当たるかどうか議論したい」と防衛省側に伝えていたにもかかわらず、同省は「論文に問題があるのは明らか。審理には長期間かかり、必要ないと判断した」とし、強制的に定年退職させている。
今回のこの問題は、田母神前空幕長が教育を受けてきた防衛大学や防衛省の根本的な教育のあり方が問われる問題だ。防衛省や政府は南京虐殺や慰安婦問題など日本軍に都合の悪い莫大な資料を全て燃やしたり、証言などの証拠隠滅を図ったという過去がある。
核心さんのお父様は、南京虐殺に関わった第65連隊第1大隊所属日本兵士の一人で、「百人斬り訴訟」で勝訴した本多勝一氏のインタビューを受けて、南京での出来事をありのまま語ったことがあった。すると、右翼団体や知り合いの日本兵や防衛省などから言ったことを取り消すようにと大きな圧力がかかったという。政府がいかに南京虐殺がなかったことにしようと捏造したかの資料は、下記のエントリーで紹介した。
田母神前空幕長にしては、防衛省で常識となっている意見を表明しただけなのに、強制的に定年退職になるとは納得がいかないと思ったのであろう。田母神前空幕長が田母神前空幕長が「チラシの裏」に表明した意見は、よく2ちゃんねるの右翼軍事掲示板やネトウヨによるコメントで見られるものであり、右翼の間では常識とされている意見に一致する。私は、たぶん、そういったほとんどの意見は、防衛省に勤務する人々や天下りなどの政府関係の人々によって書かれているのではないかと疑っている。
「アパ」主催の懸賞論文には、78人の航空自衛官が応募していたことが、民主党の外務防衛部門会議で明らかになった。78人のうち62人が第6航空団(石川県小松基地)に所属。田母神氏は小松基地司令を務めていた時代(1998年10月から1999年12月まで)に、APAの元谷外志雄代表と知り合い、その後二人は密接な関係を保ち、昨年8月には航空自衛隊小松基地のF15戦闘機に試乗させたことも明らかになっている。そういった親しい間柄だったために今回の最優秀賞受賞は、出来レースだったのではないかとも言われている。
論文の応募者総数は235人で、その30%が空自隊員だったという。防衛省は、航空幕僚監部の教育課が「自己研さんに役立つ」と全国の部隊に紹介していたことを明らかにした。驚く事に、論文を投稿していたのは1等空佐、2等空佐が各3人、3等空佐が4人、尉官が64人と、大半が幹部クラスだったそうだ。空自トップの田母神氏の意向を踏まえて組織的に投稿していた可能性が出てきたことからも、この問題は、単に田母神前空幕長一人の責任が問われるだけでなく、組織的に関与していた防衛省そのものの責任を問われるべきであり、ここまで大きくなるまでこの問題を見過ごしていた浜田靖一防衛相は、責任をとって辞任するべきだ。
又、2007年の3月に田母神を空幕長に任命したのは、当時の防衛大臣は、久間章生だ。防衛利権を貪り尽くし、「原爆投下はしょうがない」の失言で辞職を余儀なくされたなさけない男だ。そしてその時の首相はご存知の通り、政権を途中で投げ出した安倍晋三だった。田母神の任命には、久間や安倍はもちろんの事、APAの元谷外志雄代表もかかわった可能性がある。
APAの元谷外志雄代表は、安倍晋三の後援会である「安晋会」の副会長でもあり、安倍に田母神氏を空幕長として推薦したのは、田母神氏と交友関係にあった元谷外志雄の可能性もある。当時の首相が、耐震偽装で問題となった企業の代表である元谷外志雄のような者に、日本の防衛省の人事に口出しさせて、重要な決定を下していたとしたら恐ろしいことだ。これまでやってきたことに加え、安倍の責任は重い。次期、衆院選で、久間と安倍の二人は必ず落選させなければならない。
マスコミの攻撃は、田母神一人に集中しているが、何よりも批判されなくてはならないのは、戦争責任を逃れるために歴史を『歪曲』(「わいきょく」<=麻生は絶対に読めないだろう。

今回の問題に関して、閣僚たちは、建て前は、田母神を批判しているが、本音は全く反対の所にあるに違いない。すでに削除されてしまったNHKニュースからとらちゃんが、この問題への一部の閣僚の反応を転載して下さった。
NHK「論文問題 閣僚から批判相次ぐ」
ミエミエのウソばっかりしゃべるんでないわ、って思っちゃった!
▼
中曽根外務大臣
「さきの大戦への政府の立場は『村山談話』などに示されており、論文は不適切だ。中国、韓国にすでに説明しているが、今後機会をとらえて必要があれば説明していきたい。任を解き、退職の措置を取ったことは適切であり、退職金の問題は、規定があり、防衛省が考えることだ」
石破農林水産大臣
「航空自衛隊のトップの地位にある人が、政府の見解と明らかに異なることを発表したことは、政府内で意見が割れているとも受け取られかねず、文民統制の考え方からして好ましくない」
舛添厚生労働大臣
「航空自衛隊のトップである以上、政府の一員であり、政府の見解とそごをきたさない形で発言すべきであり、防衛大臣の決定は妥当だ。ただ、今回は刑法犯罪を犯したわけではなく、定年退職という措置を取ったのだと思う」
塩谷文部科学大臣
「論文は、空幕長という立場においてはたいへん不適切だ。論文の中で『戦後教育のじゅ縛』と指摘しているが、そういうことはなく、できるだけ正しくしっかりと教えており、村山談話、あるいは小泉談話で侵略戦争ということを明確にうたっている」
斉藤環境大臣
「国の基本的な方針に反する発言を行い、まったく良識を欠いている。地位にふさわしくない言動、行動であり、更迭は当然だ」
中川財務・金融担当大臣
「論文を読んでいないので、中身についてコメントは控えたい。総理の判断をわれわれは尊重しなければならない」
(読みもしないでソ~リの判断ウンヌンっておかしいぞ!)
え?小泉談話なんてあったのってびっくりしたんだけど、ネット探しても中国では有名みたいなんだけど、日本ではほとんど知られてないみたい。石バカボンは確か集団的自衛権に賛成じゃなかったか?
全くもっともらしく、田母神前空幕長を全員一致で批判しているが、それなら、田母神前空幕長の「チラシの裏の落書き」の載った「APA」 の懸賞論文サイトを閉鎖せずにいまだに放置しているのはなぜか。田母神前空幕長の意見を政府見解と異なると言いながら、「APA」のサイトをそのまま放置しておくのは、まさに、田母神前空幕長の意見を広めたいという魂胆があるのではないか。政府見解と異なる田母神前空幕長の意見を英語に翻訳し、世界中どこからもアクセスできるようにしてあるにもかかわらず、放置しているというのは、日本の国益を損なう行為だろう。
この問題は、とらちゃんも伝えている通り、海外のニュースでも数多く紹介されているのだ。
『晴天とら日和』「田母神俊雄航空幕僚長・天下の妄言『日本は侵略国家であったのか』。これで日本の進路を見誤る事のないように念じる。」
とらちゃんは、「田母神問題『日本は侵略国家であったのか』。これは防衛省ぐるみの確信犯ではないのか!」と言っているけど、私にしたら、今回の問題は、防衛省ぐるみの確信犯だというのは、もちろんのこと、極右政治家がウヨウヨいる自民党と防衛省が悪徳業者「APA」と綿密に申し合わせて仕組んだ元谷外志雄の著書や「APA」の宣伝のような気がしてならない。「APA」は、田母神前空幕長への300万円の賞金の他に、自民党にいくら献金したのだろうか。
参院外交防衛委員会は、田母神俊雄前航空幕僚長を11日に参考人として招致することを決定したそうだが、その時に、野党には、田母神俊雄前航空幕僚長一人の責任追及だけではなく、防衛省、自民党、APAの関与についても、深く掘り下げて調査してもらいたい。
参考記事:
『保坂展人のどこどこ日記』「田母神航空幕僚長」がトップに君臨した自衛隊の体質
『回廊を行く――重複障害者の生活と意見』「国家」の涙--前空幕長の罪と罰
『天木直人のブログ』更迭だけではすまない航空幕僚長の暴言
『志村建世のブログ』自衛隊の誇りと田母神論文
『岩手日報』論文応募隊員は78人 防衛相、退職金返納要求
田母神氏は なんちゃって「論文」 の中で、「しかし人類の歴史の中で支配、被支配の関係は戦争によってのみ解決されてきた。強者が自ら譲歩することなどあり得ない。戦わない者は支配されることに甘んじなければならない」 とまるで、戦争を肯定するようなことを恥ずかしげも無く堂々と書いている。日本は、再び同じ過ちを繰り返さないためにも、過去の侵略を認め、反省しなければならない。戦死者から授かった九条を守らなければならない。
我が窮状
九条
第二章 戦争の放棄
第九条 【戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認】
<1> 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
<2> 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
こどものための九条
六 戦争の放棄 第二章 戦争の放棄
みなさんの中には、今度の戦争に、お父さんや兄さんを送り出だされた人も多いでしょう。ご無事にお帰りになったでしょうか。それともとうとうお帰えりにならなかったでしょうか。また、空襲で、家やうちの人を、失(亡)くされた人も多いでしょう。今やっと戦争は終わりました。二度とこんな恐ろしい、悲しい思いをしたくないと思いませんか。こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。何もありません。ただ、恐ろしい、悲しいことが、たくさん起こっただけではありませんか。戦争は人間を滅ぼすことです。世の中のよいものを壊すことです。だから、今度の戦争をしかけた国には、大きな責任があると言わなければなりません。この前の世界戦争のあとでも、もう戦争は二度とやるまいと、多くの国々ではいろいろ考えましたが、またこんな大戦争を起こしてしまったのは、まことに残念なことではありませんか。
そこで今度の憲法では、日本の国が、決して二度と戦争をしないように、二つのことを決めました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものは、一切持たないということです。これから先日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは、「捨ててしまう」ということです。しかしみなさんは、決して心細く思うことはありません。日本は正しいことを、他の国より先に行ったのです。世の中に、正しいことぐらい強いものはありません。
もう一つは、よその国と争いごとが起こったとき、決して戦争によって、相手を負かして、自分の言い分を通そうとしないということを決めたのです。おだやかに相談をして、決まりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけることは、結局、自分の国を滅ぼすようなはめになるからです。また、戦争とまでゆかずとも、国の力で、相手を脅すようなことは、一切しないことに決めたのです。これを戦争の放棄というのです。そうしてよその国と仲良くして、世界中の国が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の国は、栄えてゆけるのです。
みなさん、あのおそろしい戦争が、二度と起こらないように、また戦争を二度と起こさないようにいたしましょう。
「あたらしい憲法のはなし」(日本国憲法・自民党改憲草案の分析と批判)
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