2011.12.28 (Wed)
外国人1万人の無料招待中止

12月15日は学部のクリスマス・パーティだった。そして、19日は、日本語の中間テストの日だった。今年はカタカナをひらがなの前に教えてみたら、カタカナの覚えがよかった。そして、カタカナとひらがなのどっちが好きか聞いてみたら、カタカナと答える生徒の方がだんぜん多かった。
でも、今まで、ひらがなを先に教えていたときは、生徒は、ひらがなを覚えるのに精一杯で、カタカナを覚えるのに苦労していた。そして、どちらが好きかと聞くと、ひらがなと答える生徒がほとんどを占めていた。かなも教える順序によって、好き嫌いがかわったり、覚えやすさが変わったりするのは、面白い。
やっと昨日、テストの採点がほとんど終わったところだが、カタカナを教えた直後はカタカナを覚えていたけれども、ひらがなを教えた後は、カタカナを忘れてしまった生徒も多かったことがわかった。やはり、授業で読むだけだと、短期メモリーには一時留まっていたけれども、練習しなかったので、長期メモリーに移行できずに、3ヵ月後には、忘れてしまったということになる。やはり、日頃からクイズなどを作って宿題として提出させていたが、それだけでは十分でなく、もっと練習が必要だったようだ。
しかし、海外に暮らしていると、ひらがなやカタカナを練習しようという動機づけが低い。日常生活で使わないし、英語は26文字覚えれば全てなのに、日本語は、ひらがなが46文字、カタカナが46文字の他に何百という漢字も覚えなくてはならず、カナダ人のような英語のネイティヴ・スピーカーにとってはかなりの負担になっている。
航空運賃無料でも危なくて日本には行きたくないという人もというエントリーで紹介した日本の観光庁が「外国人1万人を日本へ無料で招待するかもしれない」というニュースは、私が日本語のクラスで紹介する前に生徒はすでに知っていた。
「ぜひ応募したいのだが、どこに応募したらいいのか。」とまじめに詳細をたずねてくる生徒や、興味があって、Facebookのウォールに書き込んだ元生徒もいた。ただ、観光庁は、予算が認められたらという前提だったので、まだこの企画が実現するかどうかわからないので、もう少し待ったほうがいいとだけアドヴァイスしておいた。
実際、外国人1万人を日本へ無料で招待するという観光庁の企画は、予算が認めれなかったという理由で中止になるそうだ。私は、今、まだ原発事故が収束していない日本に行くのはとても危険なので、この計画がおじゃんになればいいなと思っていたのだが、実際、そうなってくれてほっとした。
でも、生徒たちは目の色を変えて、行きたがっていたので、さぞがっかりすることだろう。私にとっても、生徒が無料で日本に行けたら、生徒の日本語に対する興味も増すだろうし、今まで以上に日本語を熱心に勉強する動機づけにもなるので、これが原発事故前だったら、大賛成の企画だった。しかし、原発事故から一年後という時期的に安全性が保障されないときに、日本に行くのは、生徒の健康にかかわる危険性を秘めた旅行となるので、反対だった。
ところで、この和訳を載せたウォール・ストリート・ジャーナルの記事の最後の部分がちょっとおかしい。
一方、日本政府観光局のロンドン支部のコメントに、少しは慰められる人がいるかもしれない。同支部の広報担当者、カイル・クラーク氏は「世界中で数千人ががっかりすることは承知している。ただ、津波で破壊された都市、町、村がなお復興資金を必要としているときに無料航空券を提供することが、日本政府にどれだけ無神経に映ったか、ということをご理解いただきたい」と書いている。
「被災者支援のために世界中から寄せられた義援金が、無料航空券の提供に使われると思われたくない」
英文はこうなっている。
The London-based arm of the Japan National Tourism Organization put the turn of events in a context that might soften the blow for some: “We realize that this announcement is going to disappoint thousands of people around the world, but we hope people will understand how insensitive it would appear for the Japanese government to give people free to Japan when the cities, towns and villages devastated by the tsunami are still in desperate need of funding for reconstruction,” wrote Kylie Clark, head of PR and marketing at the Japan National Tourism Organization in London.
“We also would not want people thinking that the generous donations given from around the world to aid those affected by the disaster was being spent on giving people free .”
まずは、soften the blowというのは、「ショックを和らげる」という意味であって、「慰める」というのとは違うだろう。
次に、thousands of peopleを数千人と約しているが、これは、多くの人々としたほうがいいだろう。世界中から1万人以上の人の応募を期待しているのに、たったの数千人しかがっかりしないというのは、おかしな話だ。
さらに、「津波で破壊された都市、町、村がなお復興資金を必要としているときに無料航空券を提供することが、日本政府にどれだけ無神経に映ったか、ということをご理解いただきたい」というのもおかしな訳だ。だいたい、被災者を避難させずに放置しておきながら、海外の人を日本へ無料するという無神経なことをしたのは、日本政府である。日本政府に無神経に映るのではなく、日本政府が無神経に映るのだ。ここは、「津波で破壊された都市、町、村がなお復興資金を必要としているときに、無料航空券を提供したら、日本政府がどれだけ無神経に映るかということをご理解いただきたい」とするべきであろう。
今日は、テストの採点モードらしい。
この記事を読むと、観光庁の催しやニュースに興味のある人は、Visit Japan Internationalのファンになると、最新情報が手に入るということなので、この記事を読んでショックを受けると思われる私の生徒に、このページの「Like」ボタンを押すように言っておこうと思う。
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