2008.05.21 (Wed)
映画『靖国』を見ての感想

すでに『靖国』を見た人も多いと思う。Mixiの『映画「靖国」を観よう!』というコミュでもすでに60件以上の感想が寄せられている。
もう観た人!感想欄
私もいろいろな感想を読んだが、中でも『きまぐれな日々』がすばらしい映画評を書かれていたので紹介したい。
『靖国 YASUKUNI』 映画評(上)
『靖国 YASUKUNI』 映画評(下)
実は私も初日にシネ・アミューズで見たんだけど、靖国神社のあり方を再確認させるいい映画だったと思う。『靖国』のオフィシャルサイトで予告を見たときは、なんだかものすごく怖い映画のようだったのであまり見たいとは思わなかった。右翼議員があれだけ難色を見せるということは、多分、百人斬りを再現する場面がたくさん出てきたり、南京虐殺の写真もふんだんに使われてかなり残酷な映画なのではないかという予感がしたからだ。しかし、実際は私の予測を裏切るもので、残酷とは程遠い映画だった。
簡単に言えば、この映画は、現役最後の刀匠、刈谷直治氏が刀を鋳造する工程をところどころに交えながら、8100振りの日本刀が作られたと言われている靖国神社を訪れる人々にカメラを回しつつ、靖国刀がもたらした意味を次第に明らかにしていく映画。そんな映像の中にこの映画に登場する人々の感情がタペストリーのように複雑に編みこまれている。
李監督が10年間の年を費やしてこのドキュメンタリーフィルムを制作したそうだが、執念がなければできることではない。それだけ長い年月を経て続けられた取材だけあって、8月15日という一年で一日の出来事を中心に、たえず靖国神社で起こる大きな問題が浮き彫りにされていた。
いつもは静粛な靖国神社だが、その日だけは過去と未来が入り混じった不思議な空気に包まれる。当時の軍服を着て列をなし戦死者を英霊として弔う者もいれば、境内で星条旗を掲げ、小泉首相を支持しますなどと訳のわからないことを言うアメリカ人もいる。社務所を訪れて抗議の声を上げる韓国や台湾の遺族たちもいる。
靖国神社の公式サイトを見てみると、5月1日付けで二次通知書が映画作成者や監督宛てに送付されており、撮影許可をめぐっていまだにもめているようだ。
映画「靖国」に関する再通知について(5月1日)
映画「靖国」に関する回答について(4月25日)
映画制作会社の弁護士ら(杉浦ひとみ氏も含む)からの回答を受けて、靖国が特に問題としているのは、この映画の中でのクライマックスと思われる部分で神社の社務所で職員から止められても李監督がカメラを回し続けたシーンだ。
このシーンでは、合祀解除を求める浄土真宗の僧侶・菅原龍憲氏と台湾原住民(タイヤル族)女性の高金素梅(民族名チワス・アリ)氏が感情的に訴えるのだが、特に日本軍のために戦って戦死した父親を勝手に靖国に祀られたことを感情的に訴える高金素梅氏の姿と同時に彼女の切なる声を、迫力のある大阪弁に的確に翻訳していた男性が印象的だった。その感情的な訴えの後に僧侶だった父親までも戦争に駆り出されたことを静かに語る菅原龍憲氏はとても対照的であり、心を揺さぶられた。
この場面は『靖国 YASUKUNI』 映画評(下)にも詳しく書かれているので参考にして欲しい。
上述の『きまぐれな日々』のエントリーで『靖国』のエンディングに用いられた「悲歌のシンフォニー」の作曲家グレツキがホロコーストが行われたアウシュヴィッツの近くで生まれ、この曲が死者の魂を鎮めるレクイエムだったことを知る。ベルリンでこの映画が好評だったのもうなずける。
「悲歌のシンフォニー」
お母さま、どうか泣かないでください。
天のいと清らかな女王さま、
どうかわたしをいつも助けてくださるよう。
アヴェ・マリア。
[ナチス・ドイツ秘密警察の本部があったザコパネの「パレス」で、第3独房の第3壁に刻み込まれた祈り。その下に、ヘレナ・ヴァンダ・ブワジュシャクヴナの署名があり、18歳、1944年9月25日より投獄される、と書かれている]
(歌詞対訳:沼野充義)
『きまぐれな日々』より転載
Gorecki Symphony of Sorrowful Songs Rebecca Evans
稲田朋美の天皇の靖国参拝を求める演説の後、君が代を歌っているときに小泉首相の靖国訪問反対を訴える青年が乱入したとき、右翼らしき人物が何度も「中国へ帰れ!」と怒鳴るシーンがあった。その青年は中国人とは限らなかった。日本人に「中国へ帰れ!」と言われても別に何も感じないが、当然その声は中国人である李監督にはとても暴力的な言葉として響いたに違いない。李監督が、このような日本の反中国感情を踏まえた上でこの映画を制作した目的は単に『靖国』の真の姿を暴くことだけではなかったはずだ。
最後にはグレツキの「悲歌のシンフォニー」をアジアのホロコーストと呼ばれる南京大虐殺で亡くなられた方々と徴兵されて戦死した日中兵士、ホロコーストで殺された人々など、戦争の被害者に捧げる意味でエンディングに使ったのだろうが、この曲がエンディングに流れた途端安らかな気持ちになった。
李監督が言いたかったのは、日本による中国侵略をいつまでも怨んでいても何にも生まれない。これからは、お互いをよく知った上で過去の悪は許し合い、いいところは褒めあって仲良くやっていこうじゃないか。もう決して戦争だけはよそう。ということだったのではないだろうか。李監督の懐の深さが感じられる映画だった。
映画が終わった後、ぴあの出口調査に協力させられた。私はこの映画の評価を点数で表すと、全体的な評価は80点と答えたんだけど、ネットで見ると平均点が83.7点ということで、ほとんどの人がこの映画を評価していたのではないかと思う。
ぴあ映画満足度ランキング
この映画構成などはすばらしかったと思うけど、映像のブレや音声が聞き取りにくかったことなどがマイナス点となったのでは?もっともドキュメンタリーではどんな映画にもつきものの弱点なんだろうけども。
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