2012.06.09 (Sat)
野田総理、米国のためなのに国民生活を守るために再稼動と詭弁
6.8 原発再稼働許すな!首相官邸前抗議行動
野田総理は、まだ福島第一原発事故が収束していないのに、早い時期にいきなり収束宣言をした。今度は、福島の放射能汚染地域では毎日被曝し続ける子供達を避難させることもできず、福島第一原発事故の原因の解明も終わっていないのに、約8割の国民が反対する中、大飯原発再起動宣言をぬけぬけとやってくれた。
いくら思考停止中で、全て官僚のいうなりでも、もし、野田総理に人の心があったなら、国民を絶望のどん底に突き落とすような大飯原発再稼動宣言などできなかっただろう。
突っ込みどころ満載のメタボドジョウの再稼動宣言は、多くのブロガーや国民によってブログやTwitterなどでその矛盾を指摘されている。新聞では唯一、『東京新聞』が、「確証なき安全宣言」「裏打ちなく責任連発 詭弁並べ原発必要性」などと大見出しで批判している。私なりに矛盾を感じたところを書き出してみよう。
まずは、一番矛盾を感じたのが、国民生活を守るために再稼動させるというところ。その意味するところは2つあって、「第1の意味は、次代を担う子どもたちのためにも、福島のような事故は決して起こさないということであります。」って言っても、原発は人間の手で100%コントロールできないものだってこと知らないのかな?現在も毎日被曝している福島の子供も全員避難させられないくせに、子供をダシに使うなと言いたい。
又、いくら、野田が事故は決して起こさないと言っても、原発事故というのはさまざまな要因で起こってしまうものであり、事故を起こさないと宣言することはどんな人間にもできないことなのだ。それに、国会事故調査委員会の解明も終わってないのに、よく言うよ。
「福島を襲ったような地震・津波が起こっても、事故を防止できる対策と体制は整っています。これまでに得られた知見を最大限に生かし、もし万が一すべての電源が失われるような事態においても、炉心損傷に至らないことが確認をされています。」
この部分も多いに問題あり。小出先生が聞いたら、きっと笑い飛ばされるだろう。まず、地震対策も何もしないで、津波の防波堤も完成されていない。福島を襲ったと同等の地震がきたら、一巻の終わりだ。おまけに大飯原発原子炉直下には断層(破砕帯)が走っており、それが動いて地表がずれると、安全上重要な設備を損傷させる恐れがあるというのだ。当然この説は保安院が翌日に否定したが、いまさら保安院の言うことを信じろというほうが無理だ。野田はこの点について言及するのを避けていた。
国民生活を守ることの第2の意味は、「計画停電や電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということであります。」と、停電や電力料金の値上げを挙げて、国民に脅しをかけている。しかし、関西電力も認めているとおり、夏場でも電気は足りているし、使い済み燃料の保管費用や事故が起きたときの被災者への保障などを含めれば、化石燃料の方が原発を稼動させるよりもずっと安く済むのだ。
野田は、「豊かで人間らしい暮らしを送るために、安価で安定した電気の存在は欠かせません。これまで、全体の約3割の電力供給を担ってきた原子力発電を今、止めてしまっては、あるいは止めたままであっては、日本の社会は立ち行きません。」と言ったが、これは大嘘だ。電気代はすでに福島第一原発事故で大幅に値上げされることになっているし、又つぎに事故が起こればさらなる値上げを強いられるだろう。豊かで人間らしい生活なんて原発を稼動させている間は無理なのだ。
「政府は原発再稼動よりも自然エネルギー導入に力を入れよ」というエントリーでも書いたように、日本は、化石燃料からあと一歩進んでドイツのように、太陽光発電をすばやく取り組むべきである。ドイツは、太陽光発電3ヶ月導入で原発10基分相当の電気を供給できたのだから、ドイツよりも太陽光が豊富な日本だったら、太陽光発電やその他の自然エネルギー発電で54基の原発を賄えるだろう。
しかし、怠惰で完全に原子力村に支配されている日本政府は、ドイツのように素早く動けない。おまけにアメリカの属国の日本は、原発を止めてしまうと、アメリカ様への貢物がなくなってしまうので、なんとしても原発を維持したいのだ。日本の原発事業者が濃縮ウランを調達する場合、7割以上を米国から調達しなければならないのだ。米国以外からの濃縮ウランを調達する場合、30%を上限とする制約が課されている。
野田はこのあとすぐに米国に飛び、再稼動のご褒美として、何億円かのキックバックを直接もらうのではないか。
野田が「国民生活を守るために原発を再起動させる」と言ったこととは裏腹に、日本政府は、米国や原子力村の利益やその恩恵を受けている人だけを守るために、日本国民の生活を卑しめようとしている。万一事故が起きれば、自分たちはいつでも海外に逃げられるが、一般の国民はそうはいかないのだ。
政治家は選挙で落選させることができるが、その政治家を操る官僚は国民の力ではクビにできない。今の米国と原子力村に支配されきった官僚の総取り替えを望みたいが、それには時間がかかるだろう。やはり、次の選挙で日本に原発を54基も作った自民党とそれを止められなかった民主党を落として、霞ヶ関改革を本当に実行できる政党の政治家を選ぶこと(もし、そんな政治家が本当にいれば)。原発を止めるために私たちにできることはそのくらいしかない。
『OurPlanet-tv』野田首相の再稼動宣言に4000人が抗議
投稿者: ourplanet 投稿日時: 金, 06/08/2012 - 16:35
野田佳彦首相は8日、首相官邸で記者会見を開き、関西電力大飯原発3・4号機について、「国民生活を守る責務がある。再起動すべき」と明言した。
野田首相が、記者会見を行う午後6時には、大飯原発再稼動に反対する市民が次々と官邸前にかけつけて、約4000人(主催者発表)が集まり、「再稼動するな!」と抗議行動を行った。
野田首相は、会見で「国民の生活を守るために、大飯発電所3、4号機を再起動すべきというのが私の判断であります。夏場限定の再稼働では、国民の生活は守れません。」と、再稼動は夏季限定ではない考えを示した。
会見が終了すると、官邸前の抗議は大きくなり「絶対にゆるさない」と抗議の声があがった。
首相官邸前での抗議行動の参加は2回目という大和田亜紀さんは、「再稼動ありきで、原発以外で電気を得ることを考えていない。全く納得できない」と訴え、多くの人の反対の声に耳を傾けていないと批判した。
鎌倉からかけつけたという奥野節子さん(67歳)は、野田首相の再稼動宣言について、「責任という言葉を使うならば、まずは福島の人たちを誠実に対処してもらいたい。高い線量で暮らさざる得ないように追い込まれている」と東京電力福島原発事故被害に対しての政府の対応を批判し、まだ解決していないと訴えた。
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2011.04.28 (Thu)
続・チェルノブイリ原発事故の死者数は100万人
それでは、昨日のエントリーからの続き:
次は環境クローズアップ「チェルノブイリ・百万人の犠牲者」です
ようこそ。司会のカール・グロスマンです。2011年4月26日はチェルノブイリの事故よりまる25年になります。その一方、世界中の原子力業界は再興を図っています。この重要な本が出版されました。「チェルノブイリ~大惨事の環境と人々へのその後の影響」について取り上げていきます。
この本は公開された医学的データに基づき、事件の起きた1986年から2004年までに98万5千人が亡くなったとしています。そしてその死者数はさらに増え続けています。スタジオにはジャネット・シェルマン博士をお迎えしています。ジャネット博士はこの本の寄稿者であります。共著はベラルーシのアレクシー・ヤブロコフ博士、バシリー・ネステレンコ博士とアレクシー・ネステレンコ博士です。
カール・グロスマン:ようこそジャネットさん。 チェルノブイリ原発事故の死者は100万人ということですが 死因は何でしょう?
ジャネット・シェルマン博士:癌、心臓病、脳障害や甲状腺ガンなど死因はさまざまでした。何より多くの子供達が死にました。胎内死亡、又は生後の先天性障害です。
カール・グロスマン:科学者たちが98万5千という死者数を特定した方法は?
ジャネット・シェルマン博士:これは公開されている医学的データを基にしています。
カール・グロスマン:原子力を規制・奨励する国際機関である国際原子力機関(IAEA)はチェルノブイリの死者数を約4千人とホームページで発表しています。これは本に発表されている98万5千人と大きく異なるのはなぜでしょう?
ジャネット・シェルマン博士:IAEAが発表したチェルノブイリフォーラムという調査書は350の論文に基づき英文で公開されている資料でしたが、ヤブロコフ博士とネステレンコ博士たちは5千以上の論文を基にしています。それは英文の論文に限りませんでした。また実際に現場にいた人達の声を基にしています。現場にいたのは医師、科学者、獣医師、保健師など地域の人々の病状を見ていた人たちです。
カール・グロスマン:この本によりますと、世界保健機構(WHO)でさえチェルノブイリの真実を語っていないと批判していますね。WHOはIAEAと協定を結んでおり発表することができないとのことですが、それについて説明していただけますか?
ジャネット・シェルマン博士:1959年に結ばれた協定は、それ以来変わっていません。一方がもう一方の承諾を得ることなしに調査書を発表することを禁じています。WHOはIAEAの許可なしには調査書を発表できないのです。
カール・グロスマン:IAEAは世界中の原子力の規制だけではなく原子力の促進を行う機関でもありますからね。当然、WHOに「原子力は健康に有害だ」と言われては困るわけです。
また、ピース・フィロソフィー・センター(カナダ・バンクーバー)のサイトによると、IPPNW(核戦争防止国際医師会議-1985年ノーベル平和賞受賞。日本支部サイトはhttp://www.hiroshima.med.or.jp/ippnw/)のドイツ支部がまとめたチェルノブイリ原発事故25年の研究調査報告が4月8日に発表され、IAEAやWHOの「公式研究」のデータは「信頼性が欠如」したものだと論じているそうだ。
Peace Philosophy Center ピース・フィロソフィー・センター
Sunday, April 17, 2011
IPPNW「チェルノブイリ健康被害」新報告と、首相官邸資料「チェルノブイリ事故との比較」との驚くべき相違
(4月22日更新。「WHO と IAEAにより発表された公式データの信頼性欠如に関する注記事項」和訳を追加しました。重要なコメントが来ておりますのでこの投稿の最後のコメント欄もご覧ください。また、官邸資料も差し替えられておりますので新版を旧版の下に転載します。)
IPPNW(核戦争防止国際医師会議-1985年ノーベル平和賞受賞。日本支部サイトはhttp://www.hiroshima.med.or.jp/ippnw/)のドイツ支部がまとめたチェルノブイリ原発事故25年の研究調査報告が4月8日に発表されました。IAEAやWHOの「公式研究」のデータは「信頼性が欠如」したものだと論じています。英語サイトはここです。http://www.chernobylcongress.org/
レポートのリンクはここです。http://www.chernobylcongress.org/fileadmin/user_upload/pdfs/chernob_report_2011_en_web.pdf
Executive Summary (5-8ページ)を以下に翻訳しました。
論文要旨
「原子力産業はチェルノブイリ並みの破局を毎年繰り返す恐れがある」
ハンス・ブリックス(1986年、IAEA国際原子力機関当時事務局長)
この論文はチェルノブイリの惨事にもたらされた健康被害で妥当と思われる指摘を含んでいる研究論文を評価しています。この論文の著者たちは、方法論的に正確であり、理解可能な分析を選ぶことに重点を置きました。すでに述べた方法論的な困難があるので、この論文の目的は、明らかに間違っているIAEAの統計と対比して「正しい」統計を示すことではありません。「正しい」統計など見つけるのは無理だからです。これらの研究結果は、私たちがチェルノブイリの健康被害を論じるときに、どれぐらい幅広く多様な健康被害を扱わなければいけないかという指標を提供することしかできないのです。
チェルノブイリの惨事により特に放射線に被ばくした集団は、
a.事故後除染に関わった人たち(除染作業労働者liquidators, 「リクビダートル」と呼ばれる)83万人(ヤブロコフ、2010年)
b.30キロ圏と他地域で高度な汚染があった場所から避難した人たち 35万4千人(ヤブロコフ、2010年)
c.ロシア、ベラルーシ、ウクライナの高放射線地域の人々 830万人(ヤブロコフ、2010年)
d.ヨーロッパ全土の比較的低度の被ばくをした人たち 6億人(フェアリー、2007年)
チェルノブイリによる追加被ばくの結果として予想される病気、健康被害として
a.ガン。ただし、多くのガンは25-30年の潜伏期があることを注記しなければいけない。今のところ、甲状腺ガン、乳ガン、脳腫瘍しか見られていない。しかし除染作業労働者たちは他のさまざまな臓器にもガンを発生させている:前立腺ガン、胃がん、血液のガン、甲状腺ガン。
b.先天性異常:奇形、死産、子どもの数の減少。
c.癌性でない病気。多くの臓器が影響を受ける:脳障害、老化の加速、心理的障害。
研究結果要旨
1. 低レベル放射線(0~500 mSv)の影響は体系的に監視、調査された。特に、遺伝的影響はチェルノブイリ以前には不明確であった。この研究は、細胞ならびに細胞内の分子構造に関する研究によって補強されている。にもかかわらず、ICRPは100 mSv を胎児の奇形をおこす限界線量として規定し続けている。この主張は多くの研究で無効性が明らかになっている。
2.遺伝子の不安定性や巻き添え効果(放射線に直接影響されていない細胞の遺伝子の変化)などの予期せぬ影響が見いだされた。
3. 放射線レベルが低いほど、癌の急激な増加が起きる前の潜伏期間が長くなる(2000年までにPierce と Prestonにより放射線影響研究所RERF 研究の中で確認された)。
4. 遺伝子の不安定性は遺伝子により受け継がれ、世代を経るごとにねずみ算式に増加してゆく。除染作業労働者と放射線被ばくのない女性の間に生まれた子どもたちの染色体異常を示す多くの研究結果が、被害を受けた3つ全ての共和国の研究センター(モスクワ、ミンスク、キエフ)で入手できる。蓄積効果の最初の兆候は、被曝した親から生まれた子供に発生する甲状腺癌であろう。しかしながら、これはまだ確実とはいえない。
5. 癌以外の疾患の発症が増加していることが見出された。それは主に心臓血管系と胃の疾患であり、神経・精神疾患の症例は低線量被曝の身体的影響であることが見いだされた。後者は主として除染作業労働者とその子供たちの研究において見いだされた。
6.ロシア当局の調査によると、除染作業労働者のうち90%は病気になっている。すなわち、少なくとも74万人が重い病気にかかっている。彼らは老化が早く、平均より多くの数々のガン、白血病、身体上、そして神経・精神的な病気を患っている。多くの人が白内障になった。潜伏期間が長いため、今後、ガンの発生率が高くなると予想される。
7.独立した研究によると、11万2千人から12万5千人の除染作業労働者が2005年までに死亡している。
8.現存する(複数の)調査によると、チェルノブイリによる乳児の死亡は約5千である。
9. 遺伝的および催奇形障害(奇形の発生)も、直接の被害を受けた3国にとどまらずヨーロッパ諸国でも著しく増加した。バイエルン州だけでも、チェルノブイリ後になって先天的奇形が1000から3000人増加したことが見出された。恐らく、ヨーロッパで1万人以上の重篤な奇形が放射能によって起こされた可能性がある。チェルノブイリ事故の結果として西ヨーロッパで10万から20万件の流産があったとIAEAが結論づけているが、報告に上らない症例の推定数はさらに多い。
10.UNSCEAR(国連原子放射線影響科学委員会)によると、チェルノブイリ近辺で1万2千人から8万3千人の子どもが先天奇形を持って生れており、世界全体では3万人から20万7千人の遺伝子障害を持った子が生まれている。予測される被害全体のうち10%のみが、被ばく一世代目に見られる。
11.チェルノブイリ事故後、ヨーロッパで死産や奇形が増えただけでなく、女児と男児の胎芽の比率が変わってきている。1986年以降、生まれてくる女子の数が男子に比べ有為的に少ない。
Kristina Voigt とHagen Scherbの論文によると、1968以降の統計で、チェルノブイリ以降、ヨーロッパで生まれて来る子どもの数が予測に比べて80万人も少ない。この論文では全ての国を対象にしていなかったため、 チェルノブイリ以降「生まれてこなかった」子どもの数は約100万人と、Scherb は予測している。大気圏核実験後もこのような影響が見られた。
12.ベラルーシだけでも、事故以降1万2千人以上が甲状腺ガンを患っている(Pavel Bespalchuck, 2007)。WHOの予測では、ベラルーシのゴメリ地域だけで、5万人の子どもたちが生存中に甲状腺ガンを患うであろうということである。全部の年齢集団を合わせたら、ゴメリ地域だけで10万の甲状腺ガンという計算になる。
13. ベラルーシとウクライナで調査された甲状腺癌の症例に基づいて、Malko (2007)は将来の発症数を推定し、これに放射線の因子を加算した。彼の計算では1986年から2056年までの間に92,627人が甲状腺癌になる。この計算は除染作業労働者の甲状腺癌を含んでいない。
14.チェルノブイリ以降、1976年から2006年までの推移の中で、チェルノブイリ以降、スエーデン、フィンランド、ノルウェイの新生児死亡率は15.8%増加している。Alfred Korblein の計算では、1987年から1992年の間に、新生児死亡は1209人増加している(95%信頼区間:875人から1556人)。
15. ドイツでは、チェルノブイリ事故直後の9ヶ月間に、新生児の染色体異常であるトリソミー21(ダウン症候群)に著しい増加があったことを科学者たちは見出した。この傾向は特に西ベルリンと南ドイツで顕著であった。
16.Orlov と Shaversky は、ウクライナの3歳以下の子どもたちの間で、脳腫瘍が188例見られたと報告した。チェルノブイリ以前(1981から1985)では9例だった―1年平均にしてみてると2例にもならない。1986年から2002年の間に179人が脳腫瘍の診断を受けている-1年平均で10人以上である。
17. 南ドイツのより強く汚染された地域では、神経芽細胞腫と呼ばれる非常にまれな型の腫瘍を発症した子供の特異な集団が見出された。
18. ウクライナのチェルノブイリ省によって発表された論文は、各種疾患症例の何倍もの増加を記録した。1987年から1992年で、内分泌系の疾患は25倍、神経系6倍、循環器系44倍、消化器60倍、皮膚および皮下50倍、筋骨格系および精神的変調53倍であった。避難者の内健康な人の数は1987年から1996年の間に59%から18%にまで低下した。汚染地域の集団では52%から21%に、そして特に悲惨なのは、高レベルの放射線に曝された親から生まれた子供たちで、チェルノブイリ事故からの放射性降下物の直接の影響は受けていないにもかかわらず、健康な子供の比率は81%だったものが1996年には30%に低下した。
19.数年間、タイプ1糖尿病(インシュリンに依存する糖尿病)が子どもと青年層に急激に増えた。
20.白血病やガンといった目立つ症例よりも、癌性ではない疾病数がはるかに上回っている。
チェルノブイリ地域における被災者全体の健康状態の変化の全貌は、残念ながら現在に至るまで確実に総括されていない。北半球の全住民にとってこの惨事が何であったのか総括されていないことはいうまでもない。この論文で言及した数値は、一面では恐ろしく高く、別の面ではかなり低く見えるかも知れない。しかしここに集められた研究のほぼ全てが比較的少人数の集団を対象にしたものであったことを考慮しなければならない。発症率にほんのわずかな変化があったとしても、より多人数の集団に当てはめた場合、それは広範囲に及ぶ深刻な健康被害の前兆であるかも知れない。
結論
大規模で独立した長期にわたる研究がなされていないので現在の状況の全体像を示すことはできないが、いくつかの傾向を指摘することができる。高い放射線レベルに曝されたリクビダートルのような人々の間では、高い死亡率とほぼ100 %の罹患率が見られる。原子炉の事故から25年後になって、癌その他の疾患が、長い潜伏期間のせいで、事故直後には想像もできなかった規模で発生した。
癌以外の疾病の発症数は、以前に想像されていたよりもずっと劇的なものである。除染作業労働者の早期の老化のような「新しい」症状は、研究では未だに答えを出すことができない疑問を呈している。
2050年までに、さらに何千もの患者がチェルノブイリ原子力事故の影響として診断されることだろう。原因と、顕在化した身体症状との間には長い時間差があるので、油断はできない。チェルノブイリは終わっていない。
特に悲惨なのは、死産したり、幼くして死んだり、奇形や遺伝病を持って生まれたり、通常ならば決して発症することのない病気を抱えながら生きることを余儀なくされた、何千人もの子供たちの運命である。
チェルノブイリによって起こされた遺伝的欠陥は全世界を今後長期間にわたり苦しめ続けるだろう。多くの影響は、二世・三世の世代にならないと明らかにならないだろう。
健康被害の程度は未だに明らかではないとしても、福島の原子力事故によってもたらされる苦難は、同等の規模であり、将来的にも同様の展開となることは予測できる。
(翻訳 酒井泰幸、乗松聡子)
WHO と IAEAにより発表された公式データの信頼性欠如に関する注記事項 (報告8ページ)
国際原子力機関(IAEA)と世界保健機関(WHO)により2005年9月に組織された「国連チェルノブイリ・フォーラム」 において、発表されたチェルノブイリの影響に関する研究結果は、きわめて首尾一貫性の無いものだった。たとえば、WHO と IAEAの報道発表は、最も深刻な影響を受ける集団では、癌と白血病により今後最大4000人が死亡する可能性があるとしている。しかしながら、この論文の根拠としたWHO の報告では、実際の死者数を8,930としている。これら死者数はどの新聞記事にも取り上げられることはなかった。WHO 報告書の引用元を調べると、癌と白血病による死者数の増加として1万~2万5千人という数字に行き当たる。
これが本当ならば、IAEAと WHOの公式声明はデータを改ざんしていると合理的に結論づけることができる。IAEAと WHOによるチェルノブイリの影響に関する説明は実際に起こっていることとはほとんど無関係である。
チェルノブイリ・フォーラム もまた、「原子放射線による影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)でさえも旧ソ連以外のヨーロッパ地域での合計線量(放射線障害の一般的尺度)はチェルノブイリ地域での対応するデータよりも高いと推定したことを考慮に入れていない。核惨事からの合計線量は、その53%がヨーロッパに、36% がソ連の被災地域に、8% がアジアに、2 %がアフリカに、0.3%がアメリカに、それぞれ飛散し分布した。
S. Pflugbeil は、報道発表と、WHO 報告書、その引用元(Cardis ら)の間に不一致があったことを、2005年に既に指摘した。現在まで、チェルノブイリ ・フォーラムと、IAEA、WHO のいずれも、自らの団体の分析結果が、癌 と 白血病による死者数が公式発表した数より2~5倍も多くなる可能性があるなどとは、一般に知らせるべきではないと考えている,
およそ5年が過ぎて2011年になっても、どの 国連機関もこれらの数値を訂正していない。チェルノブイリの健康被害に関する最新の UNSCEAR 出版物は、チェルノブイリの影響に関して被害を受けた3カ国で発表された多数の研究結果をどれ一つ反映していない。小児と若年者の甲状腺 癌、除染作業労働者の白血病と白内障が6,000 例あったことだけが、最新情報として報道発表に唯一追加された数字である。そして、2011年に UNSCEAR 委員会は以下のように宣言した。「以前の UNSCEAR 報告書も含む過去20年の研究を元に、チェルノブイリ 事故の影響で深刻な健康リスクが発生することを大多数の人々が恐れる理由は何もないと、UNSCEARは結論づけた。唯一の例外が、小児期あるいは若年期に放射性ヨウ素に被曝した人々と、高い線量の放射線に被曝した結果より高い放射線起因のリスクを算定しなければならない除染作業労働者である。」(翻訳 酒井泰幸)
次に、首相官邸のホームページにあった「チェルノブイリ事故との比較」を見てください(下に引用)。これによると、チェルノブイリ事故で放射線が原因で亡くなったとされる数は、28名の作業員と、小児甲状腺ガンで15名だけ、合計43名のみです。この人たちと、6000人の小児甲状腺ガン以外は放射線被害はなし、としています。官邸資料が言う「20年目のWHO,IAEAなど8つの国際機関と被害を受けた3共和国の合同発表」とは、「チェルノブイリフォーラム」のことです。対象集団が60万人しかなく、過小評価と批判されるこの報告でさえ、「放射線被ばくにともなう死者の数は、将来ガンで亡くなる人を含めて4000人である」と言っているのです。この報告に準拠していることになっているこの官邸の資料はそれに触れていません。そしてこの「フォーラム」報告自体が、それが準拠しているWHOの報告の内容と矛盾しているというのが上記のWHO,IAEA公式データ「信頼性欠如」の注記で指摘されています。
2006年のWHO報告では死者は9千件(対象集団は740万人)、IARC(国際ガン研究機関)論文では1万6千件(対象集団はヨーロッパ全域5.7億人)と報告されています。(参照:京大・今中哲二論文「チェルノブイリ事故による死者の数」)他にも多数公的・民間機関の研究結果はありますが、ここでは、数ある研究の中でも被害を低く見積もっているといわれる公的機関の研究結果の重要部分でさえ、官邸資料は無視しているということを強調しておきます。また、この官邸資料は英語に翻訳して、国際社会に対し「これが日本の見解である」と発表する予定があるのかを問いたいです。
また、このサイトの「原発問題ビデオ集」(このページの上部からリンク)と、「必見 チェルノブイリ被害」で、チェルノブイリ関連のビデオ(日本語字幕つき)を紹介しているのでご覧ください。
PeacePhilosopher
フェースブック: Peace Philosophy Centre
ツイッター: PeacePhilosophy
以下、官邸ホームページより。(4月23日追記:当初掲載されたものと、その後、脚注をつけて差し替えられたもの両方を引用します。)
チェルノブイリ事故との比較
http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g3.html
平成23年4月15日
チェルノブイリ事故の健康に対する影響は、20年目にWHO, IAEAなど8つの国際機関と被害を受けた3共和国が合同で発表し、25年目の今年は国連科学委員会がまとめを発表した。これらの国際機関の発表と福島原発事故を比較する。
原発内で被ばくした方
*チェルノブイリでは、134名の急性放射線傷害が確認され、3週間以内に28名が亡くなっている。その後現在までに19名が亡くなっているが、放射線被ばくとの関係は認められない。
*福島では、原発作業者に急性放射線傷害はゼロ、あるいは、足の皮膚障害が1名。
事故後、清掃作業に従事した方
*チェルノブイリでは、24万人の被ばく線量は平均100ミリシーベルトで、健康に影響はなかった。
*福島では、この部分はまだ該当者なし。
周辺住民
*チェルノブイリでは、高線量汚染地の27万人は50ミリシーベルト以上、低線量汚染地の500万人は10~20ミリシーベルトの被ばく線量と計算されているが、健康には影響は認められない。例外は小児の甲状腺がんで、汚染された牛乳を無制限に飲用した子供の中で6000人が手術を受け、現在までに15名が亡くなっている。福島の牛乳に関しては、暫定基準300(乳児は100)ベクレル/キログラムを守って、100ベクレル/キログラムを超える牛乳は流通していないので、問題ない。
*福島の周辺住民の現在の被ばく線量は、20ミリシーベルト以下になっているので、放射線の影響は起こらない。
一般論としてIAEAは、「レベル7の放射能漏出があると、広範囲で確率的影響(発がん)のリスクが高まり、確定的影響(身体的障害)も起こり得る」としているが、各論を具体的に検証してみると、上記の通りで福島とチェルノブイリの差異は明らかである。
長瀧重信 長崎大学名誉教授
(元(財)放射線影響研究所理事長、国際被ばく医療協会名誉会長)
佐々木康人(社)日本アイソトープ協会 常務理事
(前 放射線医学総合研究所 理事長)
(4月23日追記:いつ更新されたか不明ですが上記官邸資料が差し替えられています。更新版を下に貼り付けます)
チェルノブイリ事故との比較
平成23年4月15日
チェルノブイリ事故の健康に対する影響は、20年目にWHO, IAEAなど8つの国際機関と被害を受けた3共和国が合同で発表(注1)し、25年目の今年は国連科学委員会がまとめを発表(注2)した。これらの国際機関の発表と福島原発事故を比較する。
原発内で被ばくした方
*チェルノブイリでは、134名の急性放射線障害が確認され、3週間以内に28名が亡くなっている。その後現在までに19名が亡くなっているが、放射線被ばくとの関係は認められない。
*福島では、原発作業者に急性放射線障害はゼロ(注3)。
事故後、清掃作業に従事した方
*チェルノブイリでは、24万人の被ばく線量は平均100ミリシーベルトで、健康に影響はなかった。
*福島では、この部分はまだ該当者なし。
周辺住民
*チェルノブイリでは、高線量汚染地の27万人は50ミリシーベルト以上、低線量汚染地の500万人は10~20ミリシーベルトの被ばく線量と計算されているが、健康には影響は認められない。例外は小児の甲状腺がんで、汚染された牛乳を無制限に飲用した子供の中で6000人が手術を受け、現在までに15名が亡くなっている。福島の牛乳に関しては、暫定基準300(乳児は100)ベクレル/キログラムを守って、100ベクレル/キログラムを超える牛乳は流通していないので、問題ない。
*福島の周辺住民の現在の被ばく線量は、20ミリシーベルト以下になっているので、放射線の影響は起こらない。
一般論としてIAEAは、「レベル7の放射能漏出があると、広範囲で確率的影響(発がん)のリスクが高まり、確定的影響(身体的障害)も起こり得る」としているが、各論を具体的に検証してみると、上記の通りで福島とチェルノブイリの差異は明らかである。
長瀧 重信 長崎大学名誉教授
(元(財)放射線影響研究所理事長、国際被ばく医療協会名誉会長)
佐々木 康人 (社)日本アイソトープ協会 常務理事
(前 放射線医学総合研究所 理事長)
東日本大震災への対応 ~首相官邸災害対策ページ~
チェルノブイリ事故との比較に4月20日に追加された原典
原典は以下の通り。
[注1]. Health effect of the Chernobyl accident : an overview Fact sheet303 April 2006 (2006年公表)
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs303/en/index.html
[注2]. United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation, SOURCES AND EFFECTS OF IONIZING RADIATION UNSCEAR 2008 Report: Sources, Report to the General Assembly Scientific Annexes VOLUMEⅡ Scientific Annex D HEALTH EFFECTS DUE TO RADIATION FROM THE CHERNOBYL ACCIDENT Ⅶ. GENERAL CONCLUSIONS (2008年原題/2011年公表) P64~
http://www.unscear.org/docs/reports/2008/11-80076_Report_2008_Annex_D.pdf
[注3]. (独)放射線医学総合研究所プレスリリース「3月24日に被ばくした作業員が経過観察で放医研を受診」2011.4.11
http://www.nirs.go.jp/data/pdf/110411.pdf
Health effects of the Chernobyl accident: an overview
Fact sheet N° 303
April 2006
Mortality
According to UNSCEAR (2000), 134 liquidators received radiation doses high enough to be diagnosed with acute radiation sickness (ARS). Among them, 28 persons died in 1986 due to ARS. Other liquidators have since died but their deaths could not necessarily be attributed to radiation exposure.
An increased number of cancer deaths can be expected during the lifetime of persons exposed to radiation from the accident. Since it is currently impossible to determine which individual cancers were caused by radiation, the number of such deaths can only be estimated statistically using information and projections from the studies of atomic bomb survivors and other highly exposed populations. It should be noted that the atomic bomb survivors received high radiation doses in a short time period, while Chernobyl caused low doses over a long time. This and other factors, such as trying to estimate doses people received some time after the accident, as well as differences in lifestyle and nutrition, cause very large uncertainties when making projections about future cancer deaths. In addition, a significant non-radiation related reduction in the average lifespan in the three countries over the past 15 years caused by overuse of alcohol and tobacco, and reduced health care, have significantly increased the difficulties in detecting any effect of radiation on cancer mortality.
Although there is controversy about the magnitude of the cancer risk from exposure to low doses of radiation, the US National Academy of Sciences BEIR VII Committee, published in 2006, a comprehensive review of the scientific evidence, and concluded that the risk seems to continue in a linear fashion at lower doses without a threshold (this is called the “linear no-threshold” or LNT model). However, there are uncertainties concerning the magnitude of the effect, particularly at doses much lower than about 100 mSv.
The Expert Group concluded that there may be up to 4 000 additional cancer deaths among the three highest exposed groups over their lifetime (240 000 liquidators; 116 000 evacuees and the 270 000 residents of the SCZs). Since more than 120 000 people in these three groups may eventually die of cancer, the additional cancer deaths from radiation exposure correspond to 3-4% above the normal incidence of cancers from all causes.
Projections concerning cancer deaths among the five million residents of areas with radioactive caesium deposition of 37 kBq/m2 in Belarus, the Russian Federation and Ukraine are much less certain because they are exposed to doses slightly above natural background radiation levels. Predictions, generally based on the LNT model, suggest that up to 5 000 additional cancer deaths may occur in this population from radiation exposure, or about 0.6% of the cancer deaths expected in this population due to other causes. Again, these numbers only provide an indication of the likely impact of the accident because of the important uncertainties listed above.
Chernobyl may also cause cancers in Europe outside Belarus, the Russian Federation and Ukraine. However, according to UNSCEAR, the average dose to these populations is much lower and so the relative increase in cancer deaths is expected to be much smaller. Predicted estimates are very uncertain and it is very unlikely that any increase in these countries will be detectable using national cancer statistics .3
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2011.04.27 (Wed)
チェルノブイリ原発事故の死者数は100万人
「菅内閣は人殺し内閣か!」というエントリーでも書いた通り、菅内閣は、首相官邸災害対策ページに御用学者の意見だけを載せ、今回の福島第一原発事故を過小評価して国民を騙そうとしている。
その後、このレポートに批判が殺到したのだろう。総理官邸のウェブサイトは、御用学者の長瀧重信・長崎大学名誉教授と天下り団体の常務理事佐々木康人の連名で書かれた限りなく怪しいレポートにソース元を追加したが、それがかえってそのレポートが嘘だったことを証明してしまった。
原発内で被ばくした方
*チェルノブイリでは、134名の急性放射線障害が確認され、3週間以内に28名が亡くなっている。その後現在までに19名が亡くなっているが、放射線被ばくとの関係は認められない。
*福島では、原発作業者に急性放射線障害はゼロ(注3)。
という部分は、世界保健機構(WHO)の下記の英文から引用されたと思われる。
According to UNSCEAR (2000), 134 liquidators received radiation doses high enough to be diagnosed with acute radiation sickness (ARS). Among them, 28 persons died in 1986 due to ARS. Other liquidators have since died but their deaths could not necessarily be attributed to radiation exposure.
WHOの英文は、清掃作業担当者だけについて書かれたものであり、そのときに原子炉にいた人々や近隣の人々については全くふれていない。それにもかかわらず、公邸が示した御用学者の文章では、まるで全ての犠牲者について書かれているかのような錯覚を読者に与える。又、134名の清掃作業担当者のうち、28名は急性放射線障害で亡くなられたというのは事実だが、「その後現在までに19名が亡くなっている」の19名というのはどこから出てきた数字なのか。WHOの原文では、清掃作業担当者はその後全員亡くなられたと書かれている。
さらに、下のインタビューによると、チェルノブイリ原発で亡くなられた人の数は、1986年から2004年までに98万5千人にのぼったそうだ。一方の原子力を規制・奨励する国際機関である国際原子力機関(IAEA)でさえもチェルノブイリの死者数を約4千人とホームページで発表している。このように死者の数が大きく異なるのは、IAEAが発表したチェルノブイリフォーラムという調査書は350の論文に基づき英文で公開されている資料だったが、ヤブロコフ博士とネステレンコ博士たちは5千以上の論文を基にしており、英文の論文だけではなく、他言語の論文も含まれていた。また、実際に現場にいた医師、科学者、獣医師、保健師など地域の人々の病状を見ていた人たちの声を基にしているという。
1959年に結ばれた協定によってWHOはIAEAの許可なしには調査書を発表できないことになっているため、世界保健機構(WHO)でさえチェルノブイリの真実を語っていないそうだ。下のインタビューが見られる『Universal Subtitles』というサイトでは、各言語に字幕が訳されており、もちろん、日本語字幕もある。ボランティアの翻訳者が募集されているので、興味のある方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがだろうか。
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