2007.02.06 (Tue)
県知事選と市長選の結果が意味するもの
北九州市長選では、せっかく安倍内閣総理大臣妻アッキーやナンミョータレントが応援にかけつけたにもかかわらず、自公推薦の候補らを抑えて、無所属の新人で民主党、社民党、国民新党が推薦する北橋健治氏が当選を果たした。又、愛知県知事選では、圧勝といわれていた自公推薦の神田真秋氏が同じく無所属の新人で民主党、社民党、国民新党が推薦する石田芳弘氏にわずかの差で辛勝した。
北九州市長選の開票結果 北九州市長選
当 217,262 北橋 健治 無新〈民〉〈社〉〈国〉
177,675 柴田 高博 無新〈自〉〈公〉
56,873 三輪 俊和 無新〈共〉 (選管確定)
(2007年2月5日2時5分 読売新聞)
愛知県知事選の開票結果 愛知県知事選
当1,424,761 神田 真秋 無現〈自〉〈公〉
1,355,713 石田 芳弘 無新〈民〉〈社〉〈国〉
160,827 阿部 精六 無新〈共〉 (選管確定)
(2007年2月5日2時6分 読売新聞)
いったいこれは何を意味するのだろうか?柳沢本人は愛知県知事選で勝利し、これで首がつながったと喜んでいるようだが、今回の選挙には、柳沢発言が影響し、自公議員は下記の記事を読んでもわかる通り、ヒヤヒヤさせられたに違いない。
愛知・北九州首長選:与党は安堵の一方、動揺も 1勝1敗(毎日新聞 2月5日)
政府・与党に危機感、愛知・北九州1勝1敗で発言続々(読売新聞 2月5日)
自民幹事長 選挙結果は厳しい(NHKニュース)
今、柳沢を辞任させたら、安倍内閣崩壊を招くことになり、それだけは避けたいと思っているだろうが、これだけ2つの選挙に大きな影響を与えた発言を許す安倍内閣は、参院選で苦い思いをしてからでは遅すぎるというのに・・・。今、柳沢を辞任させ、参院選に備えた方がどれだけ将来のためになるかわからないようでは、安倍内閣の無力を世間にアピールするだけだ。
村上龍がプロデュースするJMMのメルマガで冷泉彰彦氏の「世論との対話力」という柳沢発言と関係した面白い記事を読んだので、紹介したい。コピペ禁止だが、JMMのメルマガにリンクされていないので、リンクされしだい、下の記事は削除し、リンクを表示したいと思う。
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■ 『from 911/USAレポート』第288回
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「世論との対話力」
日本では柳沢伯夫厚生労働大臣の「失言」問題が騒ぎになっているようです。海外でも報道されていて「恥ずかしい国」であるという非難もされているようですが、アメリカではそれほどの騒ぎにはなっていません。例えばNYタイムスでも「外信囲み記事」という扱いに過ぎません。
ただ、問題となっている「女性は子供を産む機械」という言葉を英語にすると"baby-baring machine"とか"child-making device"ということになるわけで、「マシーン」とか「デバイス」という「字面(じづら)」は何ともはや刺激的です。そう考えると「余り話題になっていない」こと自体が、日本の男性政治家がこの種の失言をしても「誰も驚かない」という予見があるような気がして何ともイヤな思いがします。
確かに柳沢厚労相は「機械なんて言ってごめんなさいね」という断りを席上では言っていて、その意味では悪気はなかったのかもしれません。少子化の責任を女性だけに押しつけているという反発もあるようですが、百歩譲ってそれも下品なレトリックの一種と思うことも可能かもしれません。ただ発言の主旨として「要するに合計特殊出生率が1.5になればいい」という願望的な数字を言っているだけで、そこに具体的な提案がまるでないことには呆れるばかりです。
これとほぼ時期を同じくして、アメリカではジョー・バイデン上院議員(民主、デラウェア州選出)の失言が話題になりました。バイデン議員は軍事外交畑に通じたベテラン(任期6年の上院で当選6回)で、ざっくばらんな語り口はTVでも有名です。そのバイデン議員は2008年の大統領選挙へ向けて、選挙準備委員会の発足を表明したばかりでしたが、一言の失言で候補としての可能性は風前の灯火になってしまいました。
こともあろうに、民主党内で候補指名を争うことになるバラク・オバマ議員に対する不用意な発言をしてしまったのです。「彼は指名はムリだろう。上院に当選したばかりで、まだ経験はない。そんな実力があるとは思えないね」というのもなかなか挑戦的ですが、この部分はそれほど問題になっていません。
問題になったのは「彼は黒人大統領候補としては初めての本流だね。理路整然としているし、切れるし、カッコイイし、クリーンだし……何だか(子供向けの偉人伝的な)読み物(ストーリー・ブック)みたいな話だね」という部分でした。
何が問題になったのでしょう。この中では特に「クリーン」という部分です。つまり、オバマ候補を「初めての本格黒人候補」と言うことは、過去の黒人候補たちをバカにしたということになるのです。とりわけオバマ候補が「クリーン」と言ってしまっては、過去の候補が「クリーンでない」という含意があると言われても仕方がありません。
オバマ陣営は早速声明を出して「私としてはバイデン議員に怒りは感じないが、ジェシー・ジャクソン師やアル・シャープトン師などの先輩候補は、それぞれに真剣な政策を掲げて立候補したのであって、彼等のことを侮辱するのは許せない」としています。
ジャクソン師やシャープトン師というのは、それぞれ黒人の市民運動家で、大統領候補には何度も挑戦していますが、予備選では大きな票は取れずに最終的には有力候補にはなっていません。ですが、彼等の努力があったからこそ、民主党としては真剣に黒人票と向き合ってきたとも言えるし、現在オバマという「本格候補」を出すに至ったのは事実です。その「先人」を侮辱するというのは、人種差別的と言われても仕方がないでしょう。
中には異論もあり、CNNでは(チョイ悪という感じで売っている)キャスターのグレン・ベックなどは「白人候補の場合は、極右でKKK支持などという人は、それこそクリーンじゃないとして非難されても誰も文句を言わないのに、黒人の悪口を言ったら叩かれるというのはダブル・スタンダード」と言っていましたが、同僚のポーラ・ゼーンからは「冗談じゃありません」と一蹴されていました。
どうやらこれで本当にバイデン候補の選挙戦は「数日で終わり」になりそうな雲行きです。では、柳沢大臣にしても、バイデン議員にしても何が悪かったのでしょうか。それは緊張感のなさということに尽きると思います。世論というのは移ろいやすいものです。また時には感情的にもなります。その一方で、多様性もあって、感情も理念も一筋縄ではいかない複雑な様相を取って現れるものだと思います。
政治というのは、そうした世論と対話をするのが仕事で、その世論との対話に真剣さを欠く人間は政治に携わるための基本的な能力に欠けると言わざるを得ません。その「真剣さ」というのは具体的にどういうことを言うのでしょう。そうした問題を扱った映画が英国で制作され、それがアメリカのアカデミー賞の作品賞候補になっているというのは興味深い現象です。
タイトルは『ザ・クイーン』で、エリザベス女王を演じたヘレン・ミレンがアカデミーの主演女優賞候補にも入っており、地味な政治ドラマながら42ミリオンというヒットになっている作品です。内容はダイアナ妃の事故死の直後、世論の追悼のモメンタムがどんどん走り出す中での王宮の内情を描いています。あくまで公式の弔意表明を拒んだエリザベス女王に対して就任早々のトニー・ブレア首相が必死の説得をする一方、女王は伝統の守護者として言うことをきかない、ドラマはそこから始まります。
これは史実ですからストーリーを申し上げても構わないと思いますが、最終的にはバッキンガム宮殿に半旗が掲げられ、女王自身も追悼のTVメッセージを行うことになります。その妥協が成立するまでの心理ドラマが実に巧妙に描かれていて、なかなかの評判です。
ブレア首相を演じたマイケル・シーンという役者も本人にソックリで、しかも話し方も似ているので何ともリアルなのですが、実際に女王と首相の間で行われた会話は想像するしかないわけで、この作品はドキュメンタリーとは言えないでしょう。あくまで「こういうことだったのではないか」というファンタジー的なフィクションとして見るのが良いのだと思います。
ブレア夫人を演じたヘレン・マクロリーという人は外見はそれほどソックリではないのですが、キャラクター的には「たぶんそうだったのでは」と思わせるような演出がされているのも興味深い点です。就任早々の、しかも久々の労働党政権を奪還した夫妻は、女王に「親任」されること自体がそもそも不愉快だという風に描かれています。「私の首相に任命します」という「儀礼的なセリフ」にも表情としてはカチンと来る、そんな演出なのです。
それが、ストーリーが進むにつれて、ブレアは女王の「頑固なまでの保守主義」にある激しい決意を見て不思議な尊敬心を抱くに至る、その心理の動きが映画のヨコ糸であり、女王は女王で世論の動向に驚きながら最終的には「このままでは君主制への不信任が暴走する」という懸念から妥協に至るのです。これがタテ糸で、きれいに整理してしまえば、君主と首相が必死に向き合うことで政体として世論と向いあうこと
が出来た、それが映画のテーマになっていると言えるでしょう。
エリザベスという人は、第二次大戦中は従軍の技術者として軍事車両の修理を担当していたそうで、自動車の運転には相当な自信があるのは事実だそうです。これを反映して、映画の中の女王も、ダイアナ騒動から孫の二王子を守るために御料地にこもって狩猟を続けたり、一人でランド・ローバーで荒れ地を走るというようなシーンがあります。
やがて女王はムリに浅い川の流れを突っ切ろうとすると、クルマはスタックして立ち往生してしまいます。女王がスッと下車してシャシーの下を覗き込むとシャフトが折れているのです。「あらあら困ったわ」とすぐに携帯で侍従に助けを求めるのですが、その女王の視線にふっと見事な角を生やした鹿が勇姿を現します。その時、二王子でしょうか、狩人の近づく気配がすると、女王は鹿に「お逃げなさい」という目配
せをするのです。
その鹿の運命については映画をご覧いただくとして、堂々とした姿を誇りながらハンターに追われている鹿というのは女王に取っての君主制の運命を暗示しているのだと思います。また荒野を走り続けて故障したローバーは女王自身なのかもしれません。こうしたシーンは勿論フィクションでしょうが、人物の描写として非常に成功していると思います。
またブレアから「女王陛下はどうしてそこまで頑固でいらっしゃるのですか。それは余りにも若くして即位されたからですか」というセリフがあり、女王が「そうかもしれませんね」という反応を示す部分なども、英国の保守的な人々の女王に対する愛着が出ているように思われます。エリザベスという人は元来は王位継承の可能性は低かったのですが、伯父であるエドワード8世が「王冠をかけた恋」のために退位して父ジョージ六世が即位するというハプニング、更にその父の早世によって27歳で即位しているからです。
それにしても、英国王室の内情を描いた映画がこれほどまでにアメリカでヒットするというのは、どう説明したら良いのでしょう。作品自体が良くできているということも勿論あります。また君主制を捨てて出発したアメリカの人にとって、自国にはない制度だからこそ、君主制に関心があるということもあるのでしょう(その意味で、アメリカ人は日本の皇室にも興味を示す人が多いのです)。
ですが、この映画の中のエリザベスとブレアという人物が示す、世論に対する真剣な姿勢というものは、ファンタジーにしても人々の琴線に触れるものがあるのでしょう。この映画の描いているドラマがどこまで「事実」であるかは全く分かりません。ですが、君主制に賛成の人にも、反対の人にも映画のテーマについては伝わるものがあるのだと思います。
公選で選ばれた元首と、世襲君主の大きな違いは、世襲君主は終身制で任期がないという点です。勿論、絶対王政の時代にはそれゆえに無謀な政治も行われたのですが、現代のようにメディアを通じた世論が発達した時代では、世襲君主は在位している限り世論の支持を失うわけには行きません。そのギリギリの状況から来る真剣さというものは、実は公選で選ばれた代議員や元首にも必要なのではないでしょうか。
世論への真剣さということでは、一連の「タウン・ミーティング」の問題も同じでしょう。ある政策に対して予想される反論を取り上げて、反論を誠実に受け止めつつ政策の正しいことを主張し、理解を求める、その姿勢が欠落して「ただやればいい」というのもお粗末ですし、そもそも世論の理解というのは国会での与野党による賛否両論の応酬の際に、それぞれが世論を背負って真剣勝負を繰り広げる中で進むのが本
当でしょう。
その意味で、柳沢大臣やバイデン議員は明らかに真剣さを欠いていたと言わざるを得ないと思います。ところで、今回の件でポイントを稼いだと思われるオバマ候補ですが、2日の金曜日にはNYタイムスに「母親が白人で父親がケニア人のオバマ氏は、最終的には黒人票を取れないとの調査結果」という「アンチ・オバマ」の記事を載せられてしまっています。
タイミングも含めて意図的な記事としか思えませんが、いずれにしても大統領選へ向けての候補者選びというのは、こうした「批判」も含めてあらゆる試練に耐えて、世論との対話力が試されるプロセスだと言えるでしょう。そのプロセスを通じて、時には「大化け」する候補も出てくる、この辺りに大統領選の意義があるとも言えます。
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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わったか』『メジャーリーグの愛され方』。訳書に『チャター』がある。
最新刊『「関係の空気」「場の空気」』(講談社現代新書)
カナダでも話題になっている『ザ・クイーン』という映画については、又折を見て紹介したいと思う。
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2007.02.04 (Sun)
今日は愛知県知事選と北九州市長選の投票日
北九州市長選では、『きっこの日記』「北九州市長選」によると、つんくや元モーニング娘たち、ナンミョーの三流タレントが自公推薦の柴田高博氏(57)を激励しているそうだ。

↑柴田高博氏を応援するアッキー
Asahi.com「東ショック」北九州、愛知で各党模索(2007年01月28日)より
又、アッキー大ウケ初応援、参院選のカオ?(nikkansports.com 1月29日 )によると、ファースト・レイディの安倍昭恵も柴田高博氏の応援にかけつけて、またもや選挙とは関係のないおのろけ話を披露。これじゃ、柴田高博氏には気の毒だけど、勝ち目ないね。
現地選挙情報はやはり現地のブログが詳しい。
愛知県小牧市の『こまき 耳より情報』
北九州の『FEMINEM-blog』
今晩の結果が楽しみだ。果たしてこの結果は柳沢厚生労働大臣の進退に影響を及ぼすのだろうか。
アンケートはてなでちょっぴり面白い結果を見つけたので、紹介しよう。
愛知県知事選・北九州市長選に負けると厚生労働大臣が切腹する?
愛知県知事選・北九州市長選に勝てば、大臣の失言は不問になる?
一勝一負なら、柳沢厚労相の進退は、どうなるのでしょうか?
という質問で、答えの選択項目が下記のようにたくさんあるのだが、一番多かったのが、「知事選に負け、市長選に負け、大臣は辞任する。」で49%だった。参加者が100名と少ないので、これが国民全体の意見を反映するものかと言われるとその確率は低いのだが・・・。
知事選に勝ち、市長選に勝ち、大臣は続投する。 17
知事選に勝ち、市長選に負け、大臣は続投する。 7
知事選に負け、市長選に勝ち、大臣は続投する。 2
知事選に負け、市長選に負け、大臣は続投する。 4
知事選に勝ち、市長選に勝ち、大臣は辞任する。 9
知事選に勝ち、市長選に負け、大臣は辞任する。 7
知事選に負け、市長選に勝ち、大臣は辞任する。 5
知事選に負け、市長選に負け、大臣は辞任する。 49
他の新聞のアンケートでも確か70%以上の国民が柳沢二辞任して欲しいと思っているというのを読んだ。2日の毎日新聞によると、自民党の47都道府県連の三役らによるアンケート調査でも3割が「辞職すべきだ」と答えている。ところがどっこい柳沢本人は、全く辞任する気はないようだ。
<柳沢厚労相>辞任否定「まったく念頭にない」(毎日新聞 2月2日)
柳沢伯夫厚生労働相は2日、愛知県知事選や北九州市長選後、参院での06年度補正予算案成立後に辞任する可能性について「まったく念頭にない」と記者団に述べ、否定した。柳沢厚労相は両選挙投票終了後の4日夜、東京都内で記者団の質問に対応する。選挙結果を受けて進退問題などについての考えを表明するとみられる。
本人にその気がなくても、世論で辞任させることはできる。柳沢が辞任すれば、安倍内閣からは本間正明前政府税制調査会長、佐田玄一郎行政改革担当相と相次いで3名も辞任することになり、それこそ安倍内閣崩壊寸前となるだろう。そうすれば、安倍の任命責任が問われ、安倍も辞任に追い込みやすくなる。その意思表示をできるのが、今日の選挙だ。さて、愛知県と北九州の人々はどのような意思表示をするのだろうか。
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