2011.12.18 (Sun)
ドジョウは「冷温停止宣言」よりも「脳内停止宣言」をするべきだった
NHK「冷温停止宣言」野田首相記者会見中継を打ち切られた部分
フリージャーナリスト神保哲生が指名された直後、NHKは中継を打ち切りスタジオでの解説を始めた。その放送されなかった部分を字幕付きで編集しました。
NHKで中継を打ち切られても、総理官邸HP「野田内閣総理大臣記者会見」(平成23年12月16日)には、記載されていたので、神保記者とドジョウの質疑応答の部分を転載しよう。
まず、ドジョウは冒頭発言で、「冷温停止宣言」する理由を次のように述べた。
原発それ自体につきましては、専門家による緻密な検証作業を経まして、安定して冷却水が循環し、原子炉の底の部分と格納容器内の温度が100℃以下に保たれており、万一何らかのトラブルが生じても敷地外の放射線量が十分低く保たれる、といった点が技術的に確認をされました。
これに対して、神保氏が質問した。
(内閣広報官)
それでは、次の方。
それでは神保さん、どうぞ。
(記者)
ビデオニュースの神保です。総理、春に作成したロードマップの定義に則って、このたび冷温停止状態ということを宣言されるということですが、その春の段階では、まだ東京電力も統合本部も原子炉がメルトダウン、およびメルトスルーしているということは認めておりませんでした。つまり、その段階では原子炉の中に、圧力容器の中に核燃料が入っているということを前提としていた定義が、そこで言う冷温停止だったわけですね。
その後、メルトダウンが起き、メルトスルーが起きているということまで認めていて、今現在、圧力容器の中には核燃料がほとんど入っていない、あるいは全く入っていない可能性すら言われている時に、圧力容器の底部の温度が100℃以下になったので冷温停止という定義は、非常に違和感を持つ方も多いと思うのですが、それは総理どう考えているか。
あるいは、外に出た燃料がどのような状態になっているかは実は誰にも分かっていない、ということが分かっている。にもかかわらず、今ここで冷温停止あるいは収束宣言というのをされるのは何故か拙速のような印象を受けるんですが、何故いま、あえてここで収束宣言など、出た燃料がどうなっているのか分からない状態でなぜ収束宣言をされるのか。その辺のお考えをお願いします。
(野田総理)
圧力容器の底部、いわゆる底の部分の温度だけではなくて、格納容器全体の温度もそれぞれいろんな場所を測りながら出している結論で、圧力容器底部も勿論でありますけれども、格納容器全体も冷温の状態になっている。100℃以下になっている。しかもそれが安定的であるということを確認したことが今回のステップ2になっていて、別に圧力容器底部だけの話では、元々ロードマップにも書いてもございませんので、格納容器の全体の話も含めてそういう判断をしたということでございます。
(内閣広報官)
それでは、次の方どうぞ。次の方どうぞ。
では村尾さんどうぞ。
(記者)
燃料棒のこと答えてないですよ。
(内閣広報官)
すいません。円滑な進捗にご協力願えますか。それでは、村尾さんどうぞ。
(記者)
燃料棒答えてないよ。
(内閣広報官)
いいです。
ドジョウの答えになっていない答えのあと、燃料棒のことを言及している「記者」というのは、上杉氏らしい。この後、読売の記者が質問するが、神保記者の質問に対するドジョウの答えが全く答えになっていないにもかかわらず、内閣広報官は、次の質問に移ろうとしていることからしても、この会見は前もってお膳立てされたやらせ会見だということがわかる。大手メディアの記者の質問を見るとどれも事前に打ち合わせしたような当たり障りのない質問ばかり。中には原発事故とは全く関係ないTPPについての質問をして時間を稼ぐ日本テレビの記者までいた。ドジョウは、肝心な質問には答えず、こんなやらせ会見をしていったい何の意味があるのだろうか。
原子炉の圧力容器の溶融デブリとよばれる溶融した燃料は、メルトダウン後、メルトスルーして圧力容器から抜け落ちた。東電や政府は、それでもまだ燃料は格納容器内にとどまっているとしているが、専門家の間では、すでに格納容器の底に穴を開けて、その基盤となっているコンクリートを侵食しているとする意見が多い。
それどころか、溶融デブリがメルトアウトして、鉄筋コンクリートシールドと基礎地盤の泥岩を突き抜けて200m下の砂岩層に到達しているのではないかと推測する意見もある。こうなると、デブリの位置が深すぎて地下ダムも効果が無いらしい。それを知っているから、政府は地下ダムを作ろうとしなかったのではないか。溶融デブリが地下水と接触するとかなり深刻な汚染が拡大する。というかすでにしているかもしれないのだ。
燃料が200メートル下の岩層に到着しているとしたら、格納容器内の温度が下がるのは当前だ。国民はみんんな溶融デブリが格納容器の外にあるということを知っているので、ドジョウの「冷温停止宣言」をまともにとる人はほとんどいなかっただろう。官房機密費をもらっている大手新聞を除く地方紙の社説でも、さんざん言われている。今回、官僚のパペットのドジョウは、「冷温停止宣言」ではなく「脳内停止宣言」をするべきだったのではないかと思う。
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2011.12.16 (Fri)
「冷温停止宣言」に疑問 by 『ニューヨーク・タイムズ』
【原発】次は難題「廃炉」きょう冷温停止宣言(11/12/16)
福島第一原発の事故で、政府は16日、「冷温停止状態」の達成を宣言します。課題は、30年以上かかるとされる「廃炉」に移ります。
政府は、圧力容器の底の温度が100度以下であることや放射性物質の放出が抑えられていることから、冷温停止状態の条件を満たしたと判断しました。野田総理大臣が16日夜に記者会見で達成を宣言します。これで事故収束に向けた工程表の「ステップ2」が終了することになり、今後の作業は圧力容器の下に溶け落ちた燃料の回収という未知への領域に移ります。終了までに30年以上かかるとみられるほか、福島第一原発では今月に入ってからも汚染水漏れなど新たなトラブルが起きていて、事故収束に向けた課題は山積しています。
文:【原発】次は難題「廃炉」 きょう冷温停止宣言(12/16 11:50)より
先日も「広域にわたる放射能除染に対して日本が賛成派と反対派に分裂」という記事を書いた『ニューヨーク・タイムズ』のマーティン・ファクラー記者が、今度は、「日本の冷温停止宣言に対する大きな疑問」という記事で、野田首相の「冷温停止宣言」に対して、その裏に隠された日本政府の思惑を推測しながら、専門家による危惧を暴露している。
京都大学の小出教授もラジオの電話インタビューで何度も指摘しているように、冷温停止とは技術用語で、通常は壊れていない原子炉で炉心が安全に安定している状態のときに使われる。ところが、福島第一原発の今の状況は、決して安定した状態ではない。それどころか、特に4号機は、不安定な状態で、余震などで崩壊した場合、東京や横浜を閉鎖しなければならない緊急事態につながると言われている。
専門家は、政府が予想されるように冷温停止を宣言するとすれば、それは原発の冷却システムを年内に復旧するという約束を守ろうとする政府の努力を反映しているだけで、真の原発の状態を表したものではないと言う。彼らが恐れるのは、日本政府は、国民をなだめるために今回の「冷温停止宣言」で計画通り事故の収束が行われていることを発表したのであり、その目的は、原子炉の安全性を脅かす数々の危険から国民の注意をそらすことにあるのではないかということだ。
その危険の一つに東電が事故後に応急措置として急いで構築した新しい冷却システムが3月11日のマグニチュード9の地震の余震で損傷する可能性があることを多くの地震学者があげている。
冷温停止という言葉自体、壊れた原子炉が安定しているかのような印象を与えかねないが、実際は、壊れた原子炉の燃料炉心がメルトダウンしただけでなく、圧力容器を溶融貫通して圧力容器の外側の格納容器のコンクリート製の構造物の床を侵食している状態であるというのが、専門家の意見だ。
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