2009.05.22 (Fri)
日本のゆかいな新型インフルエンザ対策

<新型インフル>機内検疫中止など対処方針緩和 政府
(毎日新聞 - 05月22日 09:12)
検疫について「運用指針」は、メキシコ、米国、カナダからの航空機を対象に実施している機内検疫を、明らかに発症者がいる場合を除いて原則中止するとした。空港で患者を確認した場合でも、濃厚接触者の停留は行わず外出自粛などを要請するにとどめる。
らすかる母さんが紹介してくださった感染症疫学が専門の厚労省検疫官でいらっしゃる木村盛世氏も政府の無能対策を鋭く批判をされている。
今の政府がやるべきこと
国内の新型インフルエンザ対策の一番の功労者は、神戸の開業医の先生でしょう。
「何かおかしい、新型インフルエンザかも?」としてPCR検査を決めなければ、今頃まだ「検疫オンリー」「検疫は最強」の大本営発表が繰り返されていたことでしょう。
それにしても患者を見つけてから何の対策もとっていない日本政府の対応は無様です。なぜ学校閉鎖・隔離などの意味のない政策を続けるのか?
患者の接触追跡など無意味です。そもそも風邪の広がりと変わらない病気の感染元追跡をしたところで何の易があるのでしょうか?
サーベイランスなど日本の感染症対策の土台を考えれば手を出す話ではありません。日本は感染症対策途上国なのですから、イギリスやアメリカのプロセスをまねること自体間違っています。
サーベイランスなどの疫学調査はCDCやWHOを要請すべきです。到底日本でまかなえる問題ではありません。
「今回は弱毒」で「うがい手洗いと規則正しい生活を励行」し、「熱が出てもむやみに病院に行かない」「咳をするときは口を押さえる」ことを徹底的に政府広告として流すのが先決でしょう。
日本でできる範囲は現状ではこの程度であり、現時点での最大限の努力をすべきでしょう。国民を欺くべきではありません。政府が生んだパニックを広げるだけです。
2009年5月19日
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不思議なのは、厚生労働省にこんなに有能な感染症疫学が専門の厚労省検疫官がいらっしゃるのに、政府はどうして、彼女の意見に耳を傾けなかったのかということだ。彼女の意見を聞いておけば、機内検疫のような馬鹿げたパフォーマンスをして税金の無駄遣いをすることもなかっただろうに。まさか、女性だから彼女の意見を軽視したなんてことはないと思うけど、こんなところにも、感染病を利用して政治的パフォーマンスを繰り広げた政府と官僚の癒着がよく現れている。
植草さんも下記のエントリーで、厚労省の過剰反応や麻生がテレビCMにまで出演していることが、社会の過剰反応を生み出す原因となっていることを指摘されている。
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2009.05.04 (Mon)
「インフルエンザA型(H1N1)」世界事情
『WHO』の日本語のサイトは、英語のサイトの情報を素早く反映していないので、2,3日遅れの情報が記載されている。このサイトの運営は、厚生労働省でやっていると思うんだけど、要らぬ偽情報ばかり流してないで、こういったサイトをいち早く更新することこそ、厚生労働省の役目だろうが。
英語の『WHO』のサイトより、海外の最新ニュースを和訳してお届けしよう。
2009年5月3日 -- 5月3日午前6時(GMT)までに、17カ国で公式にインフルエンザA型(H1N1)の787件の感染が報告された。
メキシコでは、19人死亡、506件の感染が確認された。過去48時間で感染件数が増えたのは、過去に採取されたウィルスのテストが行われているため。米国では、1人が死亡、160件の研究所が人に感染したことを確認したと政府が伝えている。
下記の国で死者は出ていないが、研究所が感染を確認した。( )内は感染者数。
オーストリア(1)、カナダ(85)、香港(1)、コスタリカ(1)、デンマーク(1)、フランス(2)、ドイツ(8)、アイルランド(1)、イスラエル(3)、イタリア(1)、オランダ(1)、ニュージーランド(4)、韓国(1)、スペイン(40)、スイス(1)、英国(15)
WHOは、一般客の旅行を制限したり、国境を閉鎖しないよう助言する。病人は、海外旅行を延期し、海外旅行後に感染が認められた人は、政府の指導により医師の指示を仰ぐことが求められる。
カナダの保健当局は2日、アルバータ州の養豚場で、豚がインフルエンザA型(H1N1)に感染したことを確認した。感染源は、メキシコから最近カナダに帰国し、インフルエンザに感染したような症状を見せていた農業労働者とみられる。その労働者は、メキシコで豚と接触があった。豚はすでに全頭が回復しており、人から豚に感染したウィルスが豚の体内で受け継がれる可能性はない。
また、よく調理された豚肉や豚肉製品からインフルエンザA型(H1N1)のウィルスが感染する危険性は全くない。
手を洗う際は、石鹸で丹念に洗い、もし、インフルエンザのような症状にかかったら、必ず医師の診察を受けること。

画像:「仲良しネコとミニブタ」より
一方、豚を食べないイスラム教徒が多く住むエジプトでは、政府がインフルエンザA型(H1N1)を理由に豚を一匹残らず処分しようとして、これに反発した養豚業者が治安部隊と衝突して負傷するという事件も起きている。
豚全頭処分のエジプト…業者が治安部隊と衝突、投石で抵抗
(読売新聞 - 05月04日 00:56)
【カイロ=福島利之】新型インフルエンザの感染予防策として、政府が飼育されている豚の全頭処分を決めたエジプトで3日、処分に反発する養豚業者と治安部隊が衝突し、国営テレビによると、12人が負傷した。
養豚業者が密集する首都カイロ西部マンシーヤ・ナセル地区では、政府の役人が豚を無理やり処分場に運ぼうとしたところ、業者が石を投げて抵抗。治安部隊がゴム弾を発砲した。
同国は豚肉を食べないイスラム教徒がほとんどだが、同地区は豚を飼育しているキリスト教一派のコプト教徒が住むスラム。ナハル・サミールさん(30)は「豚なしでどうやって生計を立てればいいのか。徹底的に戦う」とまくし立てた。
ここまでくると、インフルエンザA型(H1N1)が、エジプト政府によって、インフルエンザの感染を防ぐためというよりも、もともと豚嫌いなイスラム教徒が豚を飼育して生計を立てていたキリスト教徒を貶めるために利用されたって感が強いね。この争いが大きく発展しないことを願う。
カナダではこのところほとんどインフルエンザA型(H1N1)についてニュースで伝えることもないけれども、メキシコの隣国であるアメリカでさえ日本のようにむやみやたらに騒いでいない。冷泉彰彦氏がJMMのメルマガで「オバマと新インフルエンザ」と題し、米国での新インフルエンザの状況を詳しく伝えてくださっており、日本の対応については違和感を述べている。
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