2008.09.28 (Sun)
オバマ対マケイン討論会1は、引き分けか

No Clear Winner in US Presidential Debate
カナダ時間の昨夜、オバマvsマケインの第一回討論会がミシシッピであった。テーマは、「外交と安全保障」だったが、今世界中を襲っている米国発の「金融危機」。冷泉彰彦氏によれば、通常、大統領選の討論では、現在進行形の課題を争点にすることはできるだけ避けるというルールがあるそうだけど、今回は「金融危機」という無視できない問題が投票日にまであと1ヶ月ちょっとというタイミングで起こってしまった為、討論会でも、金融危機に40分ほど時間を割いかざるを得なかったということだ。
1 of 11 - Obama / McCain Presidential Debate from Mississippi - 9/26/08
結果は、明確にどちらが勝ったということはなく、普段からオバマとマケインが語っている政策の内容に終始したというのが大方の評価だが、CNNのようにオバマが勝利したと伝えているメディアもある。しかし、よく読んでみると、調査対象者は、民主党支持者の方が多かったということなので、当然の結果と言えよう。
オバマ氏「勝利」が51%、米大統領候補の初のテレビ討論会
ミシシッピ州オックスフォード(CNN) 米大統領選候補の共和党マケイン、民主党オバマ両上院議員が26日に初めて実施したテレビ討論会で、番組を視聴した米国民の51%がオバマ氏が「勝利」したとみなし、マケイン氏に軍配を上げたのは38%だったことが討論会後の全米世論調査で判明した。
討論の内容だが、冷泉彰彦氏が、毎週土曜日に配信される『JMM』メルマガで速報として雑感をうまくまとめて書かれていらっしゃったので、その部分を転載させていただきたい。
(1)金融危機に関してマケインは「共和党が合意を阻害したこと」「自分も含めた規制緩和路線が問題になっていること」などマイナス要因には一切言及せず、ボクシングで言えば「クリンチ」に終始。一方のオバマは民主党の既定路線、つまり「公的資金注入が万人を救済するが、危機の再発を防ぐため必要な規制を導入」という方針からブレずに堂々たる姿勢を維持した。また、具体的になりすぎる発言はオバマは巧妙に避け、冒頭記したような「政策のフリーハンド」を守り通したとも言える。
(2)オバマとしては、この金融危機問題に関してマケインを追い詰めることをしなかった。準備不足だったのか、最終合意に達していない現状では慎重にならざるをえなかったのか、性格的に攻めきれなかったのかは分からない。だが、一気に攻めきるチャンスを逃したのは事実。マケインが「公的資金注入」に賛成なのか反対なのかを追及することもしなかった。
(3)金融危機問題に関しての議論が、財政の話にすり替わり、減税問題、福祉などの「平時の議論」にすり替わっていた。その結果、危機に対する大統領候補の姿勢として「大所高所からの世界観」は分からずじまい。その平時の議論は、全くこれまでの両陣営の主張と寸分変わらず。
(4)オバマの冷静な姿勢、攻撃のかわし方、論点の絞り方などはかなり好感を持って受け止められたのではないか。一方のマケインも、ボイコット騒ぎのドタバタの直後にしては「いつものマケイン」だった。ディベートの全体としては、多少の非難の応酬はあったものの紳士的で、内容的にも情報量があり、両者の相違も良く分かり、過去二回の「ブッシュ=ゴア」や「ブッシュ=ケリー」の討論と比較すると、質は良かった。
(5)ほぼ失言がゼロだったオバマと比較して、マケインは何点か「不規則発言」があった。「危機に際して歳出の凍結をやる」とか「私は米軍による拷問は一切許さない」あるいは「軍事費の使途が不透明、徹底的にメスを入れる」というような発言は、やはり唐突な印象を与える。「マーベリック(一匹狼)」的なキャラクターを売り込もうとしているのかもしれないが、ブッシュ=チェイニーとの根深い確執も感じさせ、それが今回の「700ビリオン注入」におけるブッシュと共和党議員団の分裂という文脈の中で、マケインの共和党内での位置付けが見えないという印象も与えた。
(6)マケインは「オバマの理解は間違っている」と何度も強調し、オバマは「それは違う」とすぐに応酬。その一方で、オバマは「その点ではマケインの見解に同意」するという発言が何回かあった。この応酬は、得点、失点という以前に相互の「キャラ」を印象づける効果の方が大きかったのではないか。
(7)対ロシア政策は二人とも差はない。オバマはイラク戦争は失政で、その代わりにアフガンに増派すべきという見解を変えていない。マケインは名誉あるイラクでの勝利をということで、これも従来通り。イラン、北朝鮮も特に新しい議論はなし。ただ、軍事外交をメインテーマにした部分で「引き分け」という結果は、マケインには苦しいのではないか。
次回の討論は、「ペイリン対バイデン」の1回だけの副大統領候補討論が、来週の10月2日にセットされています。金融危機の中、大統領選という来年以降の政局と、現在進行形のホワイトハウスと議会の綱引きがダブルで走る歴史的な日々が続きます。
下記のCNNニュース(英語)では、アフガニスタン、イラク、イラン、ロシア、中国、貿易、外交について、二人の政策の違いが簡単にわかるように箇条書きで書かれている。
Obama vs. McCain on Foreign Policy: Get the Facts
朝日にも二人の違いがわかりやすい表があったので、それを転載する。

決定打なしの討論会 マケイン氏痛手か 米大統領選(朝日新聞9月28日)
この討論も金融危機の影響でキャンセルされる可能性もあったそうだが、それは何とか回避できたようだ。それにしても、オバマはもう少しマケインを追いつめてもよかったのではないかと思う。ヒラリーだったら、もっとうまく立ち回っていただろう。
あと、今日のメディアで話題になっていたのが、今回の討論でのマケインのオバマを見下した態度だった。例えば、一番上の写真を見てもわかるように、マケインは討論で、終始オバマと目を合わせようとはしなかった。そして、マケインの話し方も、オバマは何も知らないと心の底で思っているのが誰にでもわかるような横柄な口調だった。いくらマケインが「外交と安全保障」について経験と知識を持っているからといって、あそこまでアグレッシブにオバマに対応しなくてもいいのではないかと誰もが思っただろう。それに対して、オバマはとても冷静に対処していた。
大統領選挙前の「オバマ対マケイン」の討論会はあと3回あるが、その前に、10月2日に予定されている「ペイリン対バイデン」の副大統領候補討論が、今からとても楽しみだ。巷では、ペイリンは外交についてあまりにも無知なので、インタビューでもほとんどメディアによる質疑応答はさせないそう。どんな結果になることか。
以前から病状が危ぶまれていたポール・ニューマンが9月26日、癌で亡くなった。83歳だった。
Paul Newman Dies
ポール・ニューマンの映画の中で一番好きな映画、『ザ・スティング』。
THE STING trailer
とても痛快な映画で、何度も見てしまった記憶がある。
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