2007.02.09 (Fri)
柳沢発言の批判は単に揚げ足取りをしているわけではない
そして、『きっこの日記』「差別用語もTPO」にもあった通り、その発言をいつどこでどんな機会にしたかということがとても重要になってくるのであり、厚生労働大臣の立場でありながら、国民の経済状況や周りの環境が悪化して、子供を産みたくても産めない人が増えている時に、こういった女性に産めよ増やせよ的な戦前の日本の人口政策のようなことをぬけぬけとみんなが見ている記者会見で発言したのだから、女性を侮辱しているととられてもしょうがないし、辞任を要求されて当然だ。
又、これから厚生労働大臣として少子化政策を展開しようとする柳沢氏の発言と単なる一議員としての菅氏の発言とでは国民に与える影響が違うし、重さも違う。個人的には、菅氏の「(愛知や東京は)子どもを産む生産性が最も低い」という発言は「出生率が低い」ということを柳沢発言を受けて、冗談で言ったものではないかと私は推測していたのだが、匿名の方のコメントによると、実際は菅氏の発言の方がカメムシ大臣の発言よりも早かったようなので、カメムシ発言を受けての発言ということはなかったようである。でも、「生産性」という言葉に女性に対する侮辱は全く感じられないのだが、みなさまはどうだろうか。きっと「出生率」という言葉がでてこなくて「生産性」と言ってしまっただけだろう。特に悪意あっての発言ではなく、全く問題ないと思うが・・・。柳沢発言を批判することを揚げ足取りと言っている人がこんな指摘をする方こそ、揚げ足取りをしているのではないか。
『低気温のエクスタシーbyはなゆー』で知った日本女性学会の声明はかなり説得力がある。柳沢発言の批判が、単に「言葉の揚げ足取りをしている」のかどうか是非一つ一つの言葉をかみしめながら読んでいただきたい。
《声明》柳沢厚労相の発言に対する日本女性学会の意見書
日本女性学会第14期幹事会および会員有志では、さきの柳沢厚生労働大臣発言に関する意見書を発していくことにしましたので、会員の皆さんにお伝えします。
多くの人に、この意見書を伝えていただけますよう、よろしくお願いします。
日本女性学会第14期幹事会および会員有志
日本女性学会による、柳澤大臣発言に関する意見書
2007年2月2日
本女性学会第14期幹事会および会員有志
柳澤伯夫厚生労働大臣が2007年1月27日、松江市で開かれた集会で、女性を子どもを産む機械に例え、「一人頭で頑張ってもらうしかない」と発言をしていたことが明らかになりました。
これは、子育て支援を司る行政の長としてまことに不適切であり、即刻辞任されるよう強く求めます。
大臣の発言には、以下のような問題があると、私たちは考えます。
第一に、人間をモノにたとえることは、人権感覚の欠如と言えます。
第二に、女性を産む機械(産む道具)としてみることは、女性蔑視・女性差別の発想だと言えます。また、この観点は、優生学的見地に容易につながる危険性をもっているという意味でも問題です。
第三に、女性(人)が子どもを産むように、国(国家権力、政治家)が求めてもよいというのは、誤った認識です。産む・産まないの決定は、個々の女性(当事者各人)の権利であるという認識(リプロダクティブ・ヘルス・ライツ理解)が欠如しています。リプロダクティブ・ヘルス・ライツの考え方は、カップル及び個人が子どもを産むか産まないか、産むならいつ、何人産むかなどを自分で決めることができること、そのための情報と手段を得ることができること、強制や暴力を受けることなく、生殖に関する決定を行えること、安全な妊娠と出産ができること、健康の面から中絶への依存を減らすと同時に、望まない妊娠をした女性には、信頼できる情報と思いやりのあるカウンセリングを保障し、安全な中絶を受ける権利を保障すること、などを含んでいます。
第四に、子どもを多く産む女性(カップル)には価値がある(よいことだ)、産まない女性の価値は低いという、人の生き方に優劣をつけるのは、間違った考え方です。産みたくない人、産みたくても産めない人、不妊治療で苦しんでいる人、産み終わって今後産まない人、子どもをもっていない男性、トランスジェンダーや同性愛者など性的マイノリティの人々など、多様な人々がいます。どの生き方も、平等に尊重されるべきですが、柳澤発言は、子どもを多く産む女性(カップル)以外を、心理的に追い詰め、差別する結果をもたらします。
第五に、少子化対策を、労働環境や社会保障の制度改善として総合的に捉えず、女性の責任の問題(女性各人の結婚の有無や出産数の問題)と捉えることは、誤った認識です。子どもを育てることは、社会全体の責任にかかわることであって、私的・個別的な家族の責任としてだけ捉えてはなりません。
第六に、「産む(産まれる)」という「生命に関する問題」を、経済や制度維持のための問題(数の問題)に置き換えることは、生命の尊厳に対する危険な発想といえます。もちろん、出産を経済、数の問題としてとらえることが、社会政策を考える上で必要になる場合はありえます。しかし、社会政策はあくまで人権擁護の上のものでなくてはならず、生命の尊厳への繊細な感性を忘れて、出産を国家や経済や社会保障制度維持のための従属的なものとみなすことは、本末転倒した、人権侵害的な、かつ生命に対する傲慢な姿勢です。
以上六点すべてに関わることですが、戦前の「産めよ、増やせよ」の政策が「国家のために兵士となり死んでいく男/それを支える女」を求め、産児調節を危険思想としたことからも、私たちは個人の権利である生殖に国家が介入することに大きな危惧の念を抱いています。
柳澤大臣の発言にみられる考え方は、安倍首相の「子どもは国の宝」「日本の未来を背負う子ども」「家族・結婚のすばらしさ」などの言葉とも呼応するものであり、現政権の国民に対する見方を端的に表しているものと言えます。2001年の石原慎太郎「ババア」発言、2002年の森喜朗「子どもをたくさん生んだ女性は将来、国がご苦労様といって、たくさん年金をもらうのが本来の福祉のありかただ。・・・子どもを生まない女性は、好きなことをして人生を謳歌しているのだから、年をとって税金で面倒をみてもらうのはおかしい」発言も同じ視点でした。
産めない女性に価値はないとしているのです。少子化対策が、国のための子どもを産ませる政策となる懸念を強く抱かざるを得ません。
小泉政権に引き続いて、現安倍政権も、長時間労働や格差、非正規雇用差別を根本的に改善しようとせず(パート法改正案はまったくの骨抜きになっている)、障害者自立支援法や母子家庭への児童扶養手当減額、生活保護の母子加算3年後の廃止などによる、障がい者や母子家庭いじめをすすめ、格差はあっていいと強弁し、経済成長重視の新自由主義的優勝劣敗政策をとり続けています。ここを見直さずに、女性に子どもを産めと言うことこそ問題なのです。したがって、今回の発言は、厚生労働省の政策そのものの問題を端的に示していると捉えることができます。
以上を踏まえるならば、安倍首相が、柳澤大臣を辞職させず擁護することは、少子化対策の改善への消極性を維持するということに他ならず、また世界の女性の人権運動の流れに逆行することに他なりません。以上の理由により、柳澤伯夫厚生労働大臣の速やかな辞職と、少子化対策の抜本的変更を強く求めるものです。
以上
後世に残るであろう破廉恥な石原の「ばばあ発言」とは何かをご存知のない方のために「石原ばばぁ発言に抗議を」に詳しく書いてあったので、ここに引用させていただくが、その前後の発言も是非忘れないでいて欲しい。
『これは、ぼくが言っているじゃなくて、松井孝典がいってるんだけど「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ」なんだそうだ。「女性が生殖能力を失っても生きているっていうのは、無駄で罪です」って男は、80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を産む力がない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きているって言うのは地球にとっては悪しき弊害って・・・。なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないはね。(笑い)まあ半分は 正鵠を得て、半分はブラックユーモアみたいなもんだけど、そう言う文明っていうのは、惑星をあっという間に消滅させてしまうんだよね。』
上の文の中で石原は、この発言を松井孝典 東京大学教授(惑星物理学、比較惑星学他)が言ったこととしているが、実際は、少し違うようだ。詳しくは、「石原ババア発言」と松井孝典氏の思想についてが参考になると思うが、松井教授は世界の人口増加について述べており、ババアではなく、おばあさんと呼んでいる。又、松井教授は女性は生殖機能を失っても、孫の面倒を見たりして役にたっているとおばあさんのことを決して邪魔者扱いにはしていない。それに比べ、松井教授の意見を歪めた石原のババア発言は、まるで、生殖機能を失った女性は人間として何の役にもたたないので早く死ねと言っているのだ。

↑雑談日記のSobaさんが急遽作って下さった「柳沢、お前の頭の中身はこれだろ」バナー
このように、柳沢厚生労働大臣以上にひどい発言をしているのが石原慎太郎都知事や森喜朗元総理だが、日本ではいまだにこういった古い考えの輩が現政権を握っているかと思うと失望を禁じ得ない。こういった発言は古い自民党のネオコン体質を表すものであり、男尊女卑、兵士の数を増やすための産めや増やせやの軍国主義の確立につながるものである。日本を軍国主義国家に戻さないためにも、安倍内閣が憲法改正を果たす前に政権交代を急がねばならない。柳沢厚労相を辞任させ、次期都知事選では公私混同ネオコン女性差別・人種差別主義者の石原を必ず落選させ、参院選では腐りきった自民党に長期に渡って君臨した森喜朗に是非引退してもらわねばならない。もちろん、安倍もAbEndするべし!
過去に書いた少子化対策に関する記事を読んでいただくとこの記事の内容がわかりやすいと思う。
ホワイト・カラー・エグゼンプションと少子化問題
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Tags : 柳沢発言 |
少子化問題にかかわり、柳沢氏の発言が波紋を呼び、国会そのものが紛糾してますが、自分は「世論の見解」とは自分は視座がまったく違います。
基本的に、少子化対策が政治的課題であることを当然だと思うことがまず理解できません。本義、人間的活動において本質的な自由である重要な人間の重要な生活問題に政治が深くかかわるべきなのでしょうか?
同時に、多くの人が見逃しているのが、少子化対策を施行してる国家は移民に関する政治決着を見ている国家です。日本は移民に関する問題では未だに議論が不十分ではないでしょうか?少子化対策も行い、移民を受け入れるという二面政策になることも危惧されます。(その必要性があるほど切迫するかもしれませんが)
もっとも深刻に危惧するのは、少子化対策で出生率が一時的に向上して、それまでの教育水準を維持できるのか?という問題です。長い低出生率の時代が続き、一部の世代の人口に偏った人口構成は必ず社会に歪みを作ります。そこまで考えて政治的な少子化対策が立案されているのでしょうか?そこまで考えて少子化対策を論じているでしょうか?
辛辣な分析ですが、少子化対策している国家はそもそも人口がもともと少ない国家が多く、恒常的に人口問題での対策を必要とされた国家です。しかし日本は人口1億を超えた大国です。そもそもそれらの国家と日本を比較の土壌に置くのが間違いではないでしょうか?
労働市場も構造的には決して新しい命を国内市場として迎えるだけの体力があるとは言い切れません。
少子化対策が当然だと思っている人にあえて諌言しますが、
本当にその必要性があるのか?
その視座はあくまでも経済問題だけに収斂したものではないか?という懐疑性をもっていてほしい・・と思います。
長文失礼しました
今使っているラップトップのibookで新しいバナーを保存しようとしたのですができませんでした。後ほど、PCからアクセスして新しいバナーに変えさせていただきますね。
金木犀さん、
菅さんの発言は、多少のユーモアもあるかと思いますが、データとしての客観的事実であり、そこには女性に対する差別意識はありません。
本当にその通りですね。菅直人氏の発言で傷ついた人は一人もいないと思います。別に問題にするほどの発言ではないでしょう。
そうだったのですか。では、石原は、松井教授の意見を曲解して松井さんのせいにして、自分の偏った考えを表明したってことですね。松井さんに対しても、とても失礼ですよね。
そうですね。石原は自分に都合のいいように松井教授の意見を変えて語ったと思われます。そして、本当は自分が言ったのに、他人の意見だと逃げているわけです。どこまで卑怯な奴なんでしょうか。
柳沢発言は、人間をモノにたとえたから、ここまで怒ってるんじゃなくて(もちろんその言葉のセンスも悪いけど)、その裏にある、(年金対策のために)女は子供を産んで何ぼ、子供を産まない女は役にたたないんだと思ってるその意識が、そこに見えちゃうから、いかがなものかと言ってるんですよね。
菅さんの発言は、多少のユーモアもあるかと思いますが、データとしての客観的事実であり、そこには女性に対する差別意識はありません。
その差が理解できなくて、単なる言葉狩りだと思ってる人たちは、もう少し、視野を広げて、耳でなく心で言葉を聞いてみたらどうでしょう。
経済的なことや、体の理由、その他いろいろな事情があって、欲しくても子供をつくれない人はいっぱいいます。その人たちのことを理解できずに、あのような発言をすることが、どれだけの人たちを傷つけてしまったか。
>松井教授は女性は生殖機能を失っても、孫の面倒を見たりして役にたっているとおばあさんのことを決して邪魔者扱いにはしていない
そうだったのですか。では、石原は、松井教授の意見を曲解して松井さんのせいにして、自分の偏った考えを表明したってことですね。松井さんに対しても、とても失礼ですよね。
http://soba.txt-nifty.com/zatudan/2007/02/post_0db3.html
でご紹介しています。こちらの方が自信作です。(笑)
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