2011.04.07 (Thu)
ニューヨーク・タイムズ「米国が日本の原発に見る数々の脅威」
福島第一原発事故の方は、一難さって、また一難という危険な状態が続いている。今日は、国内外のメディアが、一斉に2号機のピットと呼ばれる施設から流出していた高い濃度の放射性物質に汚染された水が止まったことを報道していたが、発電所周辺で採取した海水からは、14万倍にあたる1cc当たり5600ベクレルのヨウ素131が検出されたという。前日は、基準の28万倍にあたる1cc当たり1万1000ベクレルのヨウ素131が検出されていて、この半分程度の濃度になったとはいえ、いまだに驚愕の高い濃度だ。
さらにニューヨークタイムズでは、福島第一で使用されているジェネラル・エレクトリック社(日本では、ゼネラル・エレクトリック社と表記される)製の原子炉に精通する原子炉エンジニアで、現在 Union of Concerned Scientists の原子力安全プロジェクトを指揮する デイヴィッド・A・ロックバウム(David A. Lochbaum) 氏が、ニューヨーク・タイムズによって独自に入手された米国原子力規制委員会による極秘の状況評価書類を基に福島第一原発の状況について厳しい見解を示している。
以下、『The Long Wait 果報は寝て待て。』 福島第一に数々の新たな脅威、とニューヨークタイムズ報じるより。
Posted by knagayama on 2011/04/06 Leave a comment (0)Go to comments
以下は、4月6日付のニューヨークタイムズ電子版記事、U.S. Sees Array of New Threats at Japan’s Nuclear Plant – NYTimes.com の全訳である。個人的な覚書として訳されたもので、その正確性を保証するものではない。もし何らかの誤訳や、改善すべき表現があれば、是非コメントを頂ければ幸いである。
06 April 2011, 13:36 (BST): 誤字を修正した。
日本の原発に数々の新たな脅威
日本における危機的状況に対応するために送られた米国政府所属のエンジニアたちは、福島原発は現在、恒久化しうる様々な新しい脅威に直面しており、そのうちのいくつかは発電所を安定させるための処置そのものの結果として増大する危険性がある、と警告している。米国原子力規制委員会によって準備された極秘の状況評価書類による。
3月26日付のこの書類に基づけば、これらの新しい脅威の中には、注入された放射性冷却水によって格納容器に高い圧力が加わり、今も続く東北地方太平洋沖地震の余震に対してより脆弱になってしまっていること、炉に注入された海水から発生する水素と酸素の放出によって格納容器内部での爆発の危険性があること、等が挙げられており、半ば融解した燃料棒と堆積した塩が炉心に注入されている冷却水を妨害している事態の詳細も記述されている。
ここ数日の間、作業員たちは核燃料の過熱を防ぐために取られた緊急対策の副作用とたたかうことを迫られている。放射性冷却水の漏れや、水につかって作業していた人員の被曝などがこれにあたる。この書類の存在を知る当局者とのインタビューからも、作業員の安全と炉の長期的安定性の復帰に対して冷却水が与える数々の障害を推し量ることができる。
この書類では将来における新たな爆発や余震による損害などについては触れられていないが、このいずれかが発生した場合、既に破損している炉のうち一つまたは複数の格納容器が破壊され、炉心からの重大な放射線の漏出が起こる可能性がある。冷却がうまくいかず、燃料の熱が冷やされないまま融け続ければ、長期にわたって融解状態が続く放射性物質が残されるかもしれない、と原子力の専門家の幾人かは指摘している。
ニューヨーク・タイムズによって入手された当該の書類は、日本政府高官によって既に提供された情報よりもヨリ詳細な技術的な現状把握が成されているが、それでも、日本政府によって米国人専門家に提供されたデータに多く依存しているようである。
ここでは、機能的な冷却システムが動作していない中で、冷却水を注入し続けることが果たして可能なのか、という疑問も投げかけられている。福島第一原発の安定状態を実現するためには、今後数ヶ月にわたって冷却を続けなければならないことが既に指摘されているが、燃料に対して水をかけ続けることが、原子力業界がようやく理解し始めた様々なリスクを発生させてしまうことに多くが気付き始めている。
また同書類によれば、炉の上に設定されている使用済み核燃料プールの一部が、爆発によって「最大で1マイル」上空まで飛散し、高濃度の放射性物質の一部が炉の間に横たわっており、おそらく作業員を保護するために撤去される必要があることも指摘している。初期の水素爆発のうちのいずれかで起こったであろうと見られる核物質の放出は、高濃度の放射性物質プールが、既に発表されている情報よりもはるかにダメージを受けている可能性があることを示唆している。
福島第一で使用されているゼネラル・エレクトリック社製の原子炉に精通する原子炉エンジニアで、現在 Union of Concerned Scientists の原子力安全プロジェクトを指揮する David A. Lochbaum は、書類で示唆された諸問題によって混沌としている状況の中では、対策の成功がさらに難しくなった、としている。
「既に樹海を出たとは行かなくとも、少なくともその外れには辿り着いていると思っていたが」と Lochbaum 氏は言う。「この情報があると話は違う。状況はもっと悪いようだ。何かがうまくいかなければ、ヨリ大きな損害が与えられるかもしれない。」彼は当該書類の作成には関わっていない。
原子力規制委員会によって提示された解決策の中には、格納容器に対する不活性ガスである窒素の注入によって酸素と水素の反応を防ぐことや、冷却水に硼素を注入し続けることによって再臨界を防ぐことが含まれている。
それでも、再臨界が即座に起こる危険性があるとは考えられていないようである。電力研究所(Electric Power Research Institute)の原子力セクター副長官である Neil Wilmsthurst は、この書類の現状評価に関わっており、「再臨界が起こっていることを示唆するデータは一切見ていない」としている。
この書類は、日本政府及び東京電力を補助している当委員会の原子炉安全チームのために準備されたものである。それは日本及びアメリカの数々の組織から「手に入る最も新しいデータ」に依拠している、とされている。これらの組織の中には、日本原子力産業協会、米国エネルギー省、ゼネラル・エレクトリック社、電力研究所などが含まれている。
そこには福島第一原発の6つの原子炉それぞれの詳細な現状評価と、それに対して推奨される対策が含まれている。この現状評価をよく知る原子力専門家たちは、この書類が定期的にアップデートされているものの、総合的には、3月26日付の版が現在の思考を最もよく著している、としている。
それは1号機、2号機、そして3号機の損傷した炉心の状態に関する新しい詳細説明を含んでいる。冷却に利用された海水から発生する塩とこぼれ落ちた燃料が冷却水の配管をつまらせているため、1号機における水の流れは「ひどく制限されており、遮断されている可能性もある」。炉心の中では、「水位はゼロに近いと見られ」、その結果として、「燃料がどの程度冷却されているかを判断するのは非常に難しい」とされる。同様の問題は2号機と3号機にも見られるが、1号機と比べれば水の流れはよい、と書類は述べている。
塩の幾分かは冷却に利用されている水が海水から浄水へ変化したことで流されたかも知れない、と原子力の専門家は言う。
格納容器の内部における水位の上昇は燃料を浸して冷やすための一手段として説明されてきた。しかしこの書類では、「容器を水に浸す際、水圧が耐震性に及ぼす悪影響を考慮すべきだ」とされている。
水位が上昇すると、格納容器には膨大な水圧が加えられる。それが高ければ高いほど、大きな余震が襲った際に容器が崩れてしまう可能性もまた高まる。
ゼネラル・エレクトリック社の元原子炉設計者である Margaret Harding は、余震への警告として、「もしわたしが日本人なら、地震以降その構造的な統合性が調査されていない格納容器に対して何トンもの水を注入することには非常に警戒的になる」としている。
ほかにもこの書類では、高濃度の放射線が存在する環境における海水からの水素と酸素の放出によって発生する、鉄筋コンクリート製の格納容器内部の「有害な空気」についても注意を呼びかけている。
この災害の初期の段階で発生した水素爆発は、原子炉の建物をひどく損ない、格納容器に損害を与えた可能性があるものもある。この水素が発生したメカニズムには、核燃料の被覆が関与している。この書類では、これらの気体を容器から放出し、安定した窒素ガスで満たすことが肝要であるとされている。この機能は震災以降失われている。
炉心から出る放射線は水分子を2つに分割し、水素を発生させることができる、と原子力の専門家は言う。Wilmshurst 氏によれば、3・26書類後の計算によれば、生成された水素の量は少ないとされている。しかしノートルダム大学の物理学者である Jay A. LaVerne によれば、燃料棒の近くでは水素が発生している可能性があり、酸素と反応するかも知れない、という。「もしそうならば、燃料棒付近で爆発生の混合物が発生しているということになります」と LaVerne 氏はインタビューで発言した。
原子力エンジニアたちは、格納容器の外にある使用済み燃料棒プールが、溶融した炉心よりもさらに危険であるかも知れない、としてきた。これらのプールは原子炉の建物の上部に位置し、使用済みの核燃料を水に浸す役割を担っているが、その冷却システムは作動していない。
この事故の初期に起こった4号機の原子炉の燃料プールで発生した水素爆発が、多くの放射性物質を環境に放ったことを米国原子力規制委員会のレポートは示唆している。
専門家の危惧は、水素爆発によって屋根が破壊され、燃料プールの放射性物質が直接露出していることから来ている。一方、原子炉には頑丈な格納容器があり、炉心で燃料が溶融したとしても、放射線を外に漏出させない可能性がより高い。
多方面にわたる問題の複雑性を捉えて、「ジャグリングのプロでも、ボールが多すぎるとうまくいかないものです」と Lochbaum 氏は言った。「考慮すべきことが多すぎ、かつ、1つを間違えただけで、状況はぐんと悪くなるかも知れません」。
Henry Fountain contributed reporting from New York, and Matthew L. Wald from Washington.
【More・・・】
原文:U.S. Sees Array of New Threats at Japan’s Nuclear Plant
By JAMES GLANZ and WILLIAM J. BROAD
Published: April 5, 2011
New York Times, Asia Pacific
United States government engineers sent to help with the crisis in Japan are warning that the troubled nuclear plant there is facing a wide array of fresh threats that could persist indefinitely, and that in some cases are expected to increase as a result of the very measures being taken to keep the plant stable, according to a confidential assessment prepared by the Nuclear Regulatory Commission.
Among the new threats that were cited in the assessment, dated March 26, are the mounting stresses placed on the containment structures as they fill with radioactive cooling water, making them more vulnerable to rupture in one of the aftershocks rattling the site after the earthquake and tsunami of March 11. The document also cites the possibility of explosions inside the containment structures due to the release of hydrogen and oxygen from seawater pumped into the reactors, and offers new details on how semimolten fuel rods and salt buildup are impeding the flow of fresh water meant to cool the nuclear cores.
In recent days, workers have grappled with several side effects of the emergency measures taken to keep nuclear fuel at the plant from overheating, including leaks of radioactive water at the site and radiation burns to workers who step into the water. The assessment, as well as interviews with officials familiar with it, points to a new panoply of complex challenges that water creates for the safety of workers and the recovery and long-term stability of the reactors.
While the assessment does not speculate on the likelihood of new explosions or damage from an aftershock, either could lead to a breach of the containment structures in one or more of the crippled reactors, the last barriers that prevent a much more serious release of radiation from the nuclear core. If the fuel continues to heat and melt because of ineffective cooling, some nuclear experts say, that could also leave a radioactive mass that could stay molten for an extended period.
The document, which was obtained by The New York Times, provides a more detailed technical assessment than Japanese officials have provided of the conundrum facing the Japanese as they struggle to prevent more fuel from melting at the Fukushima Daiichi plant. But it appears to rely largely on data shared with American experts by the Japanese.
Among other problems, the document raises new questions about whether pouring water on nuclear fuel in the absence of functioning cooling systems can be sustained indefinitely. Experts have said the Japanese need to continue to keep the fuel cool for many months until the plant can be stabilized, but there is growing awareness that the risks of pumping water on the fuel present a whole new category of challenges that the nuclear industry is only beginning to comprehend.
The document also suggests that fragments or particles of nuclear fuel from spent fuel pools above the reactors were blown “up to one mile from the units,” and that pieces of highly radioactive material fell between two units and had to be “bulldozed over,” presumably to protect workers at the site. The ejection of nuclear material, which may have occurred during one of the earlier hydrogen explosions, may indicate more extensive damage to the extremely radioactive pools than previously disclosed.
David A. Lochbaum, a nuclear engineer who worked on the kinds of General Electric reactors used in Japan and now directs the nuclear safety project at the Union of Concerned Scientists, said that the welter of problems revealed in the document at three separate reactors made a successful outcome even more uncertain.
“I thought they were, not out of the woods, but at least at the edge of the woods,” said Mr. Lochbaum, who was not involved in preparing the document. “This paints a very different picture, and suggests that things are a lot worse. They could still have more damage in a big way if some of these things don’t work out for them.”
The steps recommended by the nuclear commission include injecting nitrogen, an inert gas, into the containment structures in an attempt to purge them of hydrogen and oxygen, which could combine to produce explosions. On Wednesday, the Tokyo Electric Power Company, which owns the plant, said it was preparing to take such a step and to inject nitrogen into one of the reactor containment vessels.
The document also recommends that engineers continue adding boron to cooling water to help prevent the cores from restarting the nuclear reaction, a process known as criticality.
Even so, the engineers who prepared the document do not believe that a resumption of criticality is an immediate likelihood, Neil Wilmshurst, vice president of the nuclear sector at the Electric Power Research Institute, said when contacted about the document. “I have seen no data to suggest that there is criticality ongoing,” said Mr. Wilmshurst, who was involved in the assessment.
The document was prepared for the commission’s Reactor Safety Team, which is assisting the Japanese government and the Tokyo Electric Power Company. It says it is based on the “most recent available data” from numerous Japanese and American organizations, including the electric power company, the Japan Atomic Industrial Forum, the United States Department of Energy, General Electric and the Electric Power Research Institute, an independent, nonprofit group.
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Henry Fountain contributed reporting from New York, and Matthew L. Wald from Washington.
A version of this article appeared in print on April 6, 2011, on page A1 of the New York edition.

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●国会開かんなら国会議員全員の個人資産没収して被災者へ公平に分配しろ
http://www.youtube.com/watch?v=b01yohRgfyc
六ヶ所村の再処理工場でも電源喪失、非常電源で冷却。
これだけ地震が多発してるのに、未だ原発は動き続けてる。
福島原発の放射能流出も止められないのに。
政府は直ちに止めるよう支持するべきだ。
日本国民の安全、世界への安全のために。
原発のウソはもう暴かれたのだから。
鳩山由紀夫前首相勉強会
http://www.youtube.com/watch?v=O0CRuajD6C8
上杉隆氏、政府の安心デマを鳩山前首相の前で語る。
必見です。
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最悪の事態を次善の制度構築に活用せよ・福島原発危機の教訓Ⓐ
無期限民主党員資格停止など憲法上国会議員にとって痛くも痒くもない紙切れ処分なのにそんなものが理由で国会も開かなかった国会議員にいまさら何ができるのか疑問だ。
国会を開かない国会議員は衆参両院とも全員首にして個人資産を没収換金して震災被災者へ義捐金として現金で公平に分配しろ。参議院は衆議院が開かれなければ存在意義が無いんだから連帯責任は当然である。
もちろん空き缶首相も国会議員だから首にして資産没収の第一順位対象だけどねw