2009.11.01 (Sun)
オバマが軍国主義に?:軍人のためにホワイトハウスde「トリックorトリート」
米ホワイトハウスでもオバマ政権になってから初のハロウィーン・イベントがあり、2000人を超える*「トリック・オア・トリーター」たちが参加した。
*家を訪ねて「トリック オア トリート?(ごほうびくれなかったらいたずらしちゃうけどいい?)」と聞くことから、ハロウィーンの夜に各家を訪問する人たちのこと。

White House a special stop for treats
(Associated Press Photo / Manuel Balce Ceneta)
Associated Press / November 1, 2009
大訳:
ワシントンー米軍の家族を称える目的で昨晩ホワイトハウスでハロウィーンのイベントが開催された。
スーパーヒーロー、海賊、妖精、ガイコツなどに仮装した子供たちが親に連れられてメリーランド、ヴァージニア、ワシントンなどからオレンジ色にライトアップされたホワイトハウスにやってきて並んだ。
オバマ大統領は訪問者と笑ったり、話しかけたりしながら、30分ほど、セロファンに包まれたお菓子の袋を手渡した。その袋には、ホワイトハウスのシェフ、ビル・ヨーゼス特製のバタークッキーやナショナル・パーク基金レンジャー活動の本なども詰められていた。
お菓子の袋は6歳から14歳の子供用に用意されたもので、ワシントン在住のティエラ・トーマスちゃん(11歳)は、オバマからキャンディーを受け取った後、「大統領が私の手に触った。」と微笑んだ。
ミシェル・オバマは猫の耳をつけ、レオパードの柄のトップを着ていた。オバマは軽装で、コスチュームは着なかった。この日、コスチュームをつけなかった数少ない一人だった。オバマの広報担当秘書官であるロバート・ギブズでさえ、ダース・ヴェイダーのコスチュームを着けていた。
オバマの娘たちである8歳のサーシャちゃんと11歳のマリアちゃんにとっては最初のホワイトハウスでのハロウィーンだったが、ホワイトハウスは、二人がこの日どこでハロウィーンを楽しんでいたのか、どんなコスチュームを着たのかを伝えることを拒んだ。
オバマ大統領はハロウィーンでも軍人を称えるというポーズを忘れなかったようだが、冷泉彰彦によれば、MLBワールドシリーズ第一戦でも始球式のパフォーマンスでは、ブッシュ時代にも見られなかったような「軍国主義色」の演出がされていたという。
【More・・・】
■ 『from 911/USAレポート』第431回
「オバマはアフガンで軍国主義に豹変したのか?」
■ 冷泉彰彦 :作家(米国ニュージャージー州在住)
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■ 『from 911/USAレポート』第431回
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「オバマはアフガンで軍国主義に豹変したのか?」
10月28日のMLBワールドシリーズ第一戦に先立つこと数時間前のことです。ヤンキースの年間会員には一通のメールが送られてきました。「本日の第一戦を観戦する方は、開会式に大統領夫人、副大統領夫人が列席することもあり、セキュリティチェックが厳格化されるので、早めに球場へお越し下さい」というのがその内容でした。チケット購入の抽選に外れていた私には関係のないこととはいえ、ミシェル・オバマとバイデン夫人が登場するというのを知って「何とソフトタッチな演出なんだろう」と思ったのです。
けれども、その第一印象は完全に間違いでした。ミシェル夫人がフェニミズム系の「ノリ」で始球式のボールを投げると思ったら、そうではなく、大統領夫人、副大統領夫人が並ぶ中で、実際にボールを投げたのはイラク戦争で片手を失った帰還兵でした。今回のワールドシリーズ第一戦は、ブッシュ時代にも見られなかったような「軍国主義色」の演出がされていたのです。いつもは有名なミュージシャンが担当する国歌独唱も今回は軍の合唱団のソリストで、7回ウラの前に行われる「ゴッド・ブレス
・アメリカ」の独唱(これも本来の「私を球場へ連れて行って」の前にやるのは伝統に反すると思うのですが)も別の軍人でした。
オバマ大統領本人はどこへ行っていたのでしょう? 健保改革問題などで支持率が落ちている中、始球式のパフォーマンスに出てきては政敵からのブーイングが激しくなる、そんな計算から「奥さん達」を代理で出してきたのかと思ったらそうではないのです。大統領の方は、ここのところのアフガンの戦況悪化で犠牲になった兵士の柩が無言の帰還をする儀式に、非常に険しい表情で列席していたのでした。ちなみに、正副大統領夫人は始球式の前に、傷病兵の慰問も行っています。
今回の大統領による「帰還の儀式」の際には、ブッシュ時代には御法度だった、戦没兵士の柩が「無言の帰還」をする光景について報道が「解禁」になっています。ブッシュの場合は戦死者が続出することで「厭戦気分」が蔓延することを恐れていたのだと思いますが、今回のオバマによる「解禁」に関しては「タリバンの攻撃で悲惨な死を遂げた」兵士達への同情心、とりわけ「この犠牲をムダにするな」という感情を「厳粛な戦時気分」として世論と共有しようという姿勢だと解釈することができます。
デラウェア州のドーバー空軍基地で深夜に行われた「帰還の儀式」は異様な光景でした。漆黒の闇の中、星条旗に包まれた柩が黙々と運ばれるのに対して、オバマ大統領は三人の兵士と共に足並みを揃えてゆっくりと行進して、柩を迎える位置に進んでいきました。闇の中で柩に敬礼する大統領の張り詰めた表情は、見慣れた「バラク・オバマ」とは異なっていました。それは、「反戦」大統領として戦死者を悼んでいるというような甘いものではなく、ある種の決意を秘めた表情のようでした。「戦時」の大統領として戦争を指導し、その結果としての犠牲に対して、敢然と責任を背負うという顔でした。
オバマの表情の変化は何を物語っているのでしょう? ブッシュ時代の「戦時」を思わせる軍国的な演出に走るとは、オバマ政権には一体何が起きているのでしょうか? 答えは簡単です。アフガンの戦況悪化に対して、世論に対して「臨時の戦時ムード」というメッセージを出しているのです。そのメッセージと共に、恐らくはもうすぐ「アフガン増派」の判断が下されるのだと思います。前線からは、敗色濃厚な戦線を立て直すには4万という兵力の要求が来ています。では、オバマ政権はその通り、
4万という大軍を送るのかというと、恐らくはそうではありません。もうすぐ発表があると思いますが、要求の数字には遥かに及ばない1万強という数字になる、報道からはそのような観測が流れています。
1万人強は送る、ということは、バイデン副大統領の主張する「タリバンとは手打ち」をして「反テロ戦争はアルカイダ監視作戦へ」という方向転換は当分は行わないということを意味します。ブッシュ政権以来のタリバンとの対決は当面は続けるのです。では、前線から要求のあった4万人の増派は行わないという判断はどこから来るのかというと、一つには大統領選の決選投票問題が、膠着状態に陥っているという、不透明な現地情勢があります。それ以前の問題として、4万送っても勝つ見込みはな
い、という判断もあるのかもしれません。
では、どうしてバイデン案には行かないのか、中途半端な数を増派する方向なのかというと、オバマ政権はこの「反タリバン戦争」を当分の間「抱え込む判断」をしつつあるからのようです。決定的だったのは今週の「西部アフガンにおけるヘリ撃墜事件」でした。映画にもなったソマリアの一件以来、アメリカの世論は「ヘリ撃墜」には神経質になっているのです。現地事情をよく知らずにヘリを飛ばして地対空砲火でやられるのが怖いという思いもありますが、それ以上に「ヘリをやられたからといって撤退するのはアメリカとしてはすべきでない」更に言えば「ヘリをやられたぐらいでは、絶対に引くな」という暗黙の合意が世論にはあるのです。
その世論に乗っかる中で、オバマ大統領は「アフガン戦争の継続」を決断しつつあると言って良いでしょう。けれども4万の増派はできない、恐らくは1万強という半端な増派という判断をしたのにはアフガンでの事情に加えて、内政面での問題があります。何よりも、健保改革以来の問題で支持率が低迷しているという点です。支持が低迷する中では「全面撤退」の判断は下せません。それは政治的には命取りになるからです。同時に「大増派」もできません。成果が出なければやはり政治責任になるか
らです。
そこで1万強を出すという中途半端な決断になるのですが、オバマの凄みというのは、決断が半端である一方で、今回の始球式と自身による戦没者の柩出迎えというパフォーマンスで「軍国トーン」に振った演出をしてしまうという点にあります。その結果として、アフガン戦争という「難しさ」を大統領も国民も背負った感じになる、そんな計算です。「柩」の公開と同じ心理作戦というわけです。バイデン夫人がやたらに始球式でクローズアップされていたのも、夫が全面撤兵論者であるから「こそ」バイデン夫人も、「軍国トーン」演出にはちゃんと参加している姿を見せたかったからです。そういえば、深夜の「柩の出迎え」儀式の行われたデラウェアは、バイデン副大統領の地元に他なりません。
そこには二重の計算があり、バイデン副大統領の撤兵論もまた「愛国心から」出たものだというメッセージを込めている一方で、状況が急変したらいつでも「バイデン妥協案」にスイッチすることもある、そんな微妙なバランス感覚も感じられるのです。ちなみに、野球に関してもオバマ流のバランス感覚が取られているようで、初日はそんなわけで軍事色が強かったのですが、第二試合の際には知的なR&Bの大スター、アリシア・キーズを呼んでミュージック・パフォーマンスがありました。第一試合との間で、硬軟のバランスを取ろうという計算だと思いますが、これもMLBとホワイトハウスが相談の上で演出を施していると見るべきでしょう。
更に翌日の30日の金曜日には、パキスタンを訪問しているヒラリー・クリントン国務長官が、パキスタンの政府高官に対して「あなた方はアルカイダの潜伏場所がどうして分からないのか」と激しい非難を浴びせたというニュースが駆けめぐりました。ヒラリー長官本人は「アメリカ人である以上、当然のことを言ったまで」とアッケラカンとした表情でインタビューに答えていましたが、いつもはクールなヒラリー長官がどうして感情的になったのか? 何をやっても演技に見える同長官のことだから、その背後に何か意図があるのでは? などと憶測を呼んでいます。
ただ、このヒラリー対パキスタン政府の問題は、私の見るところでは、オバマの「増派+軍国ムード」という演出に呼応したものと考えるのが正当なように思います。この政権は、イラク戦争への疑義を選挙戦の争点に掲げて当選しました。その際にアフガンとパキスタンの問題は「反テロ戦争の本論」だという言い方をして来ているのです。あくまで、その原点を大事にしながらアメリカの「強硬ポーズ」を維持する、それ以上でも以下でもないと解釈すべきでしょう。
いずれにしても、「中途半端な増派」という危険な賭けに出るとするならば、オバマ政権はこのアフガンの問題ではギリギリの舵取りを続けることになると思います。ある意味で「4万は出さない」ということは、米兵の犠牲も止まらないことを覚悟の上とも言えます。バラク・オバマという生まれながらの政治家は、そのような血塗られた道も歩ける人物なのです。デラウェアの闇の中で柩に敬礼する毅然とした姿もまた、この政治家の一面であり、核軍縮と平和賞というイメージだけで判断するのは危険です。
私はオバマが「ダークサイド」へ行ってしまったとは思いません。ですが、即時撤兵という判断は不可能な中で、この人なりの現実主義の延長で、「アフガン戦争の遂行」をブッシュ政権から継承する覚悟を決めつつあるのは事実でしょう。今後のオバマは、自身の決めたアフガン戦争遂行方針に従って、自国兵士のそして戦闘地域に関係する人々の生死の責任を担ってゆくのです。その意味では「悪」に堕ちたのではなくても、ある一線は越えたというのもまた事実でしょう。
日本の民主党政権との関連で言えば、どう考えても、タイミング的に「非軍事貢献」とか「自衛隊のPKO派遣」などという話を切り出す時期ではないように思うのです。「タリバンに荷担した前非を悔いた兵士には、職業訓練を」などというストーリーも、そもそも「非タリバン」の受け皿として据えたカルザイ政権が民心を得られない中では絵に描いた餅です。アフガンでは、オバマもヒラリーも流血の継続を決意しているのです。その決意からは静かに距離を置くのが正しいと思います。その場合は、アメリカそのものに距離を置くのではなく、バイデン案、すなわち「対タリバン戦争」ではなく国際的なテロ監視体制へ重点を移すことに理解を向けている、静かにそんなメッセージを送るのが最善のように思うのです。
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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大
学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わった
か』『「関係の空気」「場の空気」』『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』など
がある。最新刊『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)
( http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492532536/jmm05-22 )
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単純に,南北戦争で黒人差別に回ったかどうかの違いに過ぎません.もうちょっと,アメリカ史を真面目に勉強して下さい(笑)
それと,匿名での投稿は非常に卑怯ですよ.自分のブログでも作って,そちらでご自分の意見でも展開されては如何でしょうか(笑)
# これだから,バカは相手にしたくない.
民主党の方が戦争には積極的です。人権意識や正義感からくる場合が多いですし。それにネオコンとリアリストはイラクや中東へのスタンスもまったく異なるので、一律に扱わないほうが良いでしょう。
# カトリックの頃はおつきあいしてたけど,あまり盛んじゃなかった.クリスマスと同じで商戦に利用されてるだけですな.
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ネットゴキも街宣右翼も,所詮この程度の「低能」「無能」「生活保護の不正受給者」なんだな,という思いを深くしました.(^_^;)