2009.05.04 (Mon)
「インフルエンザA型(H1N1)」世界事情
『WHO』の日本語のサイトは、英語のサイトの情報を素早く反映していないので、2,3日遅れの情報が記載されている。このサイトの運営は、厚生労働省でやっていると思うんだけど、要らぬ偽情報ばかり流してないで、こういったサイトをいち早く更新することこそ、厚生労働省の役目だろうが。
英語の『WHO』のサイトより、海外の最新ニュースを和訳してお届けしよう。
2009年5月3日 -- 5月3日午前6時(GMT)までに、17カ国で公式にインフルエンザA型(H1N1)の787件の感染が報告された。
メキシコでは、19人死亡、506件の感染が確認された。過去48時間で感染件数が増えたのは、過去に採取されたウィルスのテストが行われているため。米国では、1人が死亡、160件の研究所が人に感染したことを確認したと政府が伝えている。
下記の国で死者は出ていないが、研究所が感染を確認した。( )内は感染者数。
オーストリア(1)、カナダ(85)、香港(1)、コスタリカ(1)、デンマーク(1)、フランス(2)、ドイツ(8)、アイルランド(1)、イスラエル(3)、イタリア(1)、オランダ(1)、ニュージーランド(4)、韓国(1)、スペイン(40)、スイス(1)、英国(15)
WHOは、一般客の旅行を制限したり、国境を閉鎖しないよう助言する。病人は、海外旅行を延期し、海外旅行後に感染が認められた人は、政府の指導により医師の指示を仰ぐことが求められる。
カナダの保健当局は2日、アルバータ州の養豚場で、豚がインフルエンザA型(H1N1)に感染したことを確認した。感染源は、メキシコから最近カナダに帰国し、インフルエンザに感染したような症状を見せていた農業労働者とみられる。その労働者は、メキシコで豚と接触があった。豚はすでに全頭が回復しており、人から豚に感染したウィルスが豚の体内で受け継がれる可能性はない。
また、よく調理された豚肉や豚肉製品からインフルエンザA型(H1N1)のウィルスが感染する危険性は全くない。
手を洗う際は、石鹸で丹念に洗い、もし、インフルエンザのような症状にかかったら、必ず医師の診察を受けること。

画像:「仲良しネコとミニブタ」より
一方、豚を食べないイスラム教徒が多く住むエジプトでは、政府がインフルエンザA型(H1N1)を理由に豚を一匹残らず処分しようとして、これに反発した養豚業者が治安部隊と衝突して負傷するという事件も起きている。
豚全頭処分のエジプト…業者が治安部隊と衝突、投石で抵抗
(読売新聞 - 05月04日 00:56)
【カイロ=福島利之】新型インフルエンザの感染予防策として、政府が飼育されている豚の全頭処分を決めたエジプトで3日、処分に反発する養豚業者と治安部隊が衝突し、国営テレビによると、12人が負傷した。
養豚業者が密集する首都カイロ西部マンシーヤ・ナセル地区では、政府の役人が豚を無理やり処分場に運ぼうとしたところ、業者が石を投げて抵抗。治安部隊がゴム弾を発砲した。
同国は豚肉を食べないイスラム教徒がほとんどだが、同地区は豚を飼育しているキリスト教一派のコプト教徒が住むスラム。ナハル・サミールさん(30)は「豚なしでどうやって生計を立てればいいのか。徹底的に戦う」とまくし立てた。
ここまでくると、インフルエンザA型(H1N1)が、エジプト政府によって、インフルエンザの感染を防ぐためというよりも、もともと豚嫌いなイスラム教徒が豚を飼育して生計を立てていたキリスト教徒を貶めるために利用されたって感が強いね。この争いが大きく発展しないことを願う。
カナダではこのところほとんどインフルエンザA型(H1N1)についてニュースで伝えることもないけれども、メキシコの隣国であるアメリカでさえ日本のようにむやみやたらに騒いでいない。冷泉彰彦氏がJMMのメルマガで「オバマと新インフルエンザ」と題し、米国での新インフルエンザの状況を詳しく伝えてくださっており、日本の対応については違和感を述べている。
【More・・・】
2009年5月2日発行━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
JMM [Japan Mail Media] No.529 Saturday Edition
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▼INDEX▼
■ 『from 911/USAレポート』第407回
「オバマと新インフルエンザ」
■ 冷泉彰彦 :作家(米国ニュージャージー州在住)
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■ 『from 911/USAレポート』第407回
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「オバマと新インフルエンザ」
新型インフルエンザに関しては、先週末から突然メキシコでの流行が明らかになり、NY市では私立高校での小規模な流行から数カ所への拡大も確認される中、オバマ大統領、ナポリターノ国土保安長官、セベリウス保健長官などは連日会見を行って事実関係の発表が続いています。29日に行われた「就任100日」の記者会見の中でも、オバマ大統領はこの問題は「一日単位で、いや一時間単位での情報提供を行う」と述べています。こうした対応を受けて、CNNがこの日に行った視聴者参加による「100日間の成績表」でも「オバマ政権の新型インフルエンザ対策」に関しては「B+」という高い評価がされています。
そのオバマ大統領に関しては、CNNでの支持率が69%、政策は不満だが大統領は好きという人まで入れると82%という数字もあり、大変な支持をキープしています。懸念された保健長官人事も、今回のインフル危機のおかげで前カンザス州知事のセベリウス女史という人事がスンナリ通りましたし、議会対策に関してもスペクター上院議員の共和党から民主党への鞍替えという事態を受けて大統領には非常に有利な展開となっています。
そんな中、5月中旬の母の日へ向けて売られているグリーティングカードの中に、面白いものを見つけました。カードの表紙にはオバマ大統領がエプロンをして料理をしている図柄があしらってあり「大統領を務めるってのは母親業に似てるんだよ」というセリフを大統領に言わせています。カードを開くと「ケンカを止めさせ、お金のやりくりをし、自分以外の人のありとあらゆる問題解決に力を尽くすのさ」とあるのです。これはアメリカ人の大好きな「政治ジョーク」の一種ではありますが、そこにはオバマ大統領への皮肉ではなく、逆に相当な信頼感が感じられるのです。暖かみがあり、そして実務的に人に尽くす、そうしたリーダー像は「良い意味で母性的」という感覚もそこにはあり、正にアメリカという国の「チェンジ」が感じられると言っても構わないでしょう。
29日の記者会見も好感を持って受け止められています。45分程度続いた後半の質疑応答部分は原稿なしのアドリブでしたが、その中で「大統領の権力は絶対ではありません。ボタンを押せばパッと変わるということはなく、むしろ大統領という存在もこの複雑な社会を織りなすタピストリーの一部だと感じています」であるとか「現在の国民の忍耐に関しては大統領として深く謙虚に受け止めています」というような「オバマ節」がちりばめられていました。妊娠中絶問題に関してなども「この問題にまとわりついた怒りの感情を解いてゆくことが最も重要」だとして「合法化法案」の採択には反対する立場を表明しています。
そうは言っても、新型インフルの問題は深刻であることには変わりません。では、今週の時点でのアメリカ社会の雰囲気はどうかというと、依然として平静です。感染者の出た学校は一部休校になっていますが、都市の機能も交通機関も、そして経済活動も平常のままです。株価に関しては、さすがに第一報の直後の月曜日(27日)にはインフル大流行の懸念から下げる局面もありましたが、その後はアメリカ経済全体への波及の可能性は薄いとして、市場は堅調です。というよりも、FRBの金利据え
置き、一部企業での決算の予想外の健闘などを受けて株価は上昇の勢いが出てきています。30日にはオバマ大統領自身が記者会見を行って「クライスラーへの破産法適用」が発表されましたが、このニュースも市場として、あるいはアメリカ社会としては織り込み済みという印象です。景気の先行きに明るさが出るまで引っぱったオバマ大統領の作戦が上手くいった、そんな評価も可能でしょう。
基本的に平静なアメリカですが、4月30日にはバイデン副大統領が「家族がこの時期に飛行機で旅行するとしたら」と問われて「密閉された空間に見ず知らずの人たちと押し込まれるのは」自分も含めて賛成しないというようなことを述べてしまい、しかも地下鉄に対しても懸念を示すようなことも言っていました。公共交通機関の平静な運行を重視しているNYのブルームバーク市長などからは抗議があったようです。政治的には「バイデン副大統領は失言癖があり、最初の100日間が過ぎたところで
気が緩んだのだろう」という見方が多く、決定的なダメージにはなってはいません。
アメリカが全国的にパニックになっていない原因としては報道体制があります。関連死者が150人を越えたとされて緊迫したメキシコシティーに、例えばCNNはサンジェイ・グプタ医師、NBCはケリー・サンダースなどといった有名キャスターが常駐して、現場の様子を刻一刻とレポートしていたということがあります。中でもグプタ医師は、オバマ政権から公衆衛生局長官(サージョン・ジェネラル)への就任を打診されながら、脳外科医として手術室の現場を離れたくないという理由から(ホンネとしては、医療保険制度をめぐる政争の渦中に行くのは気が進まなかったのでしょう)固辞したという経緯もあり、正にアメリカで最も信頼され愛されている「お医者さん」で、医師といえばインド系というトレンドを代表する人物でもあります。
そのグプタ医師が、連日のように「どうしてメキシコだけ劇症の事例が出るのか」を現地から仮説と事実を交えて刻々とレポートしたのは大変な説得力がありました。結果的に、当初の150人というのは、別の慢性疾患が主な死因であるものや、極端な栄養不足であったものなど、純粋に新ウィルスの毒性によって犠牲になったのではない数字が過半数であることが明らかになっていきましたが、そこにはグプタ医師の報道と、オバマ政権の対応の相乗効果があったと言うべきでしょう。
そんなわけで、基本的に平静なアメリカから、TVジャパンの国際放送などを通じて日本の報道に接すると、何とも異様な感じがします。最初にお断りしておきますが、私はいわゆる「水際作戦」(名前は麻薬対策のようで少々抵抗がありますが)といった検疫の体制については、反対はしません。日本は何と言っても人口密度の高い国であり、特に首都圏や、京阪神などの人口密集地でワクチンのない新型インフルエンザが流行してしまうと、他国とは比較にならない被害が出る可能性があるからです。ま
た高齢化が進んでいることから抵抗力の弱い人口が多いこと、より毒性の強いウィルスが出現する可能性のある鳥インフルエンザへの警戒を怠ってはならないこと、人種的な特性(恐らくは)によりタミフルによる十代の異常行動が(今回感染者が出た場合は投与を優先するにしても)無視できない、といった具体的な事実も否定できません。
そんな要素がある一方で、四方を海に囲まれていることから、空港と港湾の検疫である程度は国外からの感染を抑えることができるというのは、恵まれた条件に他なりません。仮に感染をゼロにはできないにしても、感染件数は少なければ少ないほど良いのであり、また感染時期が遅れればそれだけウィルスや症状に関する情報が集積された後に患者さんに接することにもなり、これも良い結果になるのではと思います。アメリカに住んでいて、仕事で年に何回か日本との往復をしている私のような人間には、機内検疫などというのは気が重い話には違いないのですが、やはり十分に理解をしなくてはならないと思うのです。
一方で、アメリカは開かれた移民社会であり、まして一国主義的な閉鎖性、独善性のために自他が傷ついた経験をオバマ大統領以下国を挙げて「治癒」させるプロセスにあります。ですから、メキシコとの航路停止、国境閉鎖などということは政治的にもできる雰囲気ではありません。それ以前の問題として、メキシコとの物資の交流を停止しては、アメリカ経済は行き詰まってしまいますし、合法的に両国間を行き来している通勤者などの流れもストップすることは、国境の治安維持などの点から見ても
慎重にならざるを得ないからです。ですが、日本の場合は条件に恵まれているのですから、検疫を行うというのは自然なのだと思います。
その日本での対応に関してですが、違和感が残る点もあります。成田の女性がどうとか、横浜の高校生、名古屋のビジネスマン・・・「疑い例」つまり感染者の出ているエリアからの帰国者で発熱していた人がいるというだけで、厚生労働大臣が午前一時半に会見してみたり、地方行政との連絡体制に関して叱責してみたり、結果的にどんどん「心配性」がエスカレートしている印象があります。これでは、新ウィルスが上陸する前に多くの人が疲労してしまって抵抗力が下がってしまうのではとも思います。例えば5月1日のNHK「ニュースウォッチ9」では田口五朗キャスターが「疑い例が出るたびに今後も大騒ぎをしなくてはならないのでしょうか・・・」とため息をついていましたが、偽らざるホンネだと思います。
何が問題なのでしょう。こうした現象が起きると、それを日本人の特質とか文化の問題に振って解説する人が出てきそうです。今回の場合は「ウィルス」とは「ケガレ」であり、「ソト」の世界から「ケガレ」を持ち込むことは共同体に対する重大犯罪になるとかいった「知った風な」解説です。ですが、私は違うと思います。日本政府は、いわゆる鳥インフルエンザといった強毒性の新型ウィルスの大流行への警戒態勢をここ数年間研究して準備していました。今回の問題は、この「強毒性のウィルスに対する警戒態勢」をそのまま「強毒性が否定されつつある」ブタH1N1に適用していることにあります。
例えば国内感染者が一人でも出た場合に周辺地域に「不要不急の外出を控えよ」とか「集会やスポーツ大会の自粛」というのは、現時点での毒性の状況に照らして、明らかに極端です。これは強毒性のウィルスに対する警戒態勢をそのまま適用するから起きるのだと思います。こんなことをやっていては、経済活動に支障が出ますし、それ以前の問題として今後「鳥インフルのヒトへの感染」といった強毒性の新型ウィルスが出現した際に「危機感がマヒする」危険、そしてそれ以上に「大変なことになるからと発表や受診をためらう」心理的なマイナス効果が出ないとも限りません。
カナダへの修学旅行後に高校生が疑われた学校では、結果が「シロ」だということが分かった瞬間に校長が安堵の余りに涙を流していましたが、まだ完治していないそのA型インフルエンザの患者である高校生に「ともかくお大事に」というメッセージを言うことなどもできず、心理的余裕をなくして涙を見せるというのは、その校長の資質うんぬんの問題以前に、社会がすでにこの問題で「疲れ果てている」つまり、情報と報道に振り回されているからだと言わざるを得ません。
この疲労感や行き過ぎた感情的な反応は取りも直さず脆弱性であり、それはより毒性の強いウィルスの出現時に深刻な問題をもたらす可能性があると思います。厚生労働省などが「この程度でしっかり危機感が生まれれば、強毒性ウィルスの流行の際は大丈夫」だと思っているとしたら誤りです。非科学的な「空気」の支配というのは、ムードが醒めてしまった時に虚脱感と安心感を生んでしまうからです。ちなみに、カナダは北国であるために春が遅く「季節性」のA型がまだ普通に流行していると考え
られます。メキシコからの新ウィルスの感性例も出ていますが、それ以前に「季節」が過ぎていないのです。
いずれにしても、日本では対応への「疲れ」が見えてきているようですが、ここで重要なのは、「今回は弱毒性だから柔軟に対応」などといういい加減な対応ではないと思います。新型ウィルスが出現した際に、どの毒性とワクチンの効果、抗インフル薬の耐性などを勘案して、国内対応を何段構えかにしておく、各地方自治体や学校、事業所などももっときめ細かく対応を決めておくべきということです。ウィルスが「弱毒性」だということが明らかになるにつれて、対応の度合いを同じフェーズ4でも70%にするとか50%にするというように緻密な組み立てをすべきだと思うのです。
各企業が海外出張を取りやめているというのも過剰に思います。例えば、アメリカでの自動車市場はここへ来てようやく信用収縮から抜け出す雰囲気が出てきたことと、クライスラーの「処理」が完了したことなどから好転の兆しが出てきています。そんな中、日系各社はハイブリッドの新世代モデルを市場投入し、徐々にマーケティングにも熱が入ってきました。そんな中、ディーラーさんを集めた説明会に日本側から設計者が来ない、重要な戦略会議に権限をもった日本の本社の人間がビデオ電話でしか
参加できない、その理由が「アンタの国は感染者を出しているから」ということでは「一緒に釜の飯を食ってビジネスの競争を戦っていく」姿勢に照らしてみたら、頭では理解されても感情的には違和感が残ると思います。
むしろ、マスクをはじめとする「インフル対策グッズ」に関しては日本は先進国なのですから、どんどん世界に輸出する、その際に「モノ」だけ送るのではなく使用法や衛生管理のノウハウなども教えてゆくことが必要だと思います。検査体制などもそうです。現在までの報道を総合しますと、日本入国者で明らかに発熱している場合や問診票に症状を記載した人間に対しては、「迅速診断キット」による簡易検査でA型インフルエンザに感染しているかどうかを調べ、A型と判定された(陽性)場合は、更に遺伝子の検査で季節性インフルエンザのA香港(H3N2)型であるかを調べるのだと言います。この「簡易検査」の所要時間は11分、A香港かを確認する検査が6時間程度だというのです。報道によれば、更にもっと迅速に検査ができる「キット」が国立感染症研究所で開発されたという報道もあります。実に素晴らしいことだと思います。
ですが、こうした検査体制や検査キットのノウハウは日本だけで独占していて良いのでしょうか? 例えばメキシコでは、現在は国民生活がストップして経済的には大変な苦境に立っていますが、仮に流行が一段落したとして、社会活動を再開するとしたら、その場合には人々が新型ウィルスに「感染していない」ことを確認しながら進めることになるのだと思います。今現在でもメキシコシティーなどの街で「簡易検査」サービスが行われていて、不安に駆られた人々が行列を作っている映像がありましたが、その検査自体がどれだけの精度があるのかというとかなり怪しいと思います。日本で高精度で迅速に結果の出る検査キットが大量に生産できるのであれば、まずメキシコに送ってあげれば過去のいかなるODAよりも感謝されるのではないかと思いますし、感染源での沈静化に貢献できれば世界全体でのリスクが下がると思うのですが、どうなのでしょう?
北半球の日本はこれから高温多湿の夏に向かっていきます。インフルエンザの流行の条件はどんどん弱くなっていくと言って良いでしょう。逆にこれから冬へ向かう南半球では、例えば南アメリカやオセアニアなどで、感染の拡大が出てくる可能性があります。その場合にも、様々なノウハウを持つ日本はどんどん人材や情報を出して貢献することが求められているのであって、ひたすらに国単位で「隔離」政策を取りつづけるのが良いとは思えないのです。
結論から言えば、四方を海で囲まれている人口密集高齢化国として、検疫体制を敷くのは理解できます。ですが、強毒性の新型ウィルス対策を前提とした「危機管理」を今回のウィルスに適応するのは過剰反応だと思います。またヒトの「入り」に警戒するあまり、危機故に求められている国外での日本人の貢献活動にもストップがかかるというのも、適正な判断とは思えません。だからといって、このまま「なし崩し的に」弾力的な対応をするのではなく、弱毒性の新型の場合の対処方法をしっかり決め
てゆくこと、改めて強毒性の新型ウィルスへの備えを怠らないことが大事だと思います。
(付記)ちなみに、アメリカでは「マスク」と言うと「オペラ座の怪人」や「貴族の淫靡な仮面舞踏会」などに出てくる仮面のことだったり、野球のキャッチャーマスクなど顔のほとんどを覆うものを言います。日本で言うマスクのことは「サージカル・マスク」つまり(手術用の)外科マスクという言い方をします。そのサージカル・マスクですが、一般的に「感染者がウィルスを飛散させないためにする」という用途に限定されています。医学専門家の間でも「予防目的で」健康な人がマスクをするのは推奨されていません。文化的には「周囲の人を信頼していない」姿勢の現れと取られる危険もあります。ですから、連休中にアメリカを旅行されている方が、街中などでマスクをつけている場合には、警官などから「あなたは感染者なのか?」と聞かれる可能性があり、その際に「日本では防御目的でつけるのが一般的で、自分は健康だ」と言うことをしっかり説明できるようにしておいた方が良いと思います。でないと、感染を疑われたり深刻なトラブルになる可能性があります。アメリカは平静ですが、警戒心のないたるんだ雰囲気ではないからです。
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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大
学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わった
か』『「関係の空気」「場の空気」』『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』など
がある。最新刊『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)
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豚の処分のニュースとか、悲しくなりますね……。
そしてインフルエンザ・・・。
すべてにおいて地理的に貧しいところであり、世界経済にあまり影響のないところですよね?
なんか奇妙だなぁ。
今回もメキシコ人、またはメキシコ渡航者以外全く犠牲者が出ていない。
これも奇妙。
なんでも9.11のように陰謀で片づけるのは好きではありませんが、調べれば調べるほど奇異な感じがして気分が悪くなります。
北米型インフルエンザでもいいのではないでしょうか?
アメリカに気を使っているからですかね?
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自民党政治に異議・茨城県医師会+麻生と茨城県連との親密な関係
なんか猫とミニブタの写真には癒されますよね。
せっかく育てたのに、いきなり処分されてしまうなんてかわいそうですよね。